軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

文字の大きさ
136 / 766
第七章 アメリカ本土空襲

航空戦

しおりを挟む
『おい瑞鶴、敵が追ってきたぞ!』
「分かってるわよ! とっとと反転しなさい!」
『我に命令するな』

 やはりアメリカの艦上機相手にも、最高速度では負けている。逃げるという選択肢は基本的に存在しないのである。故に瑞鶴とツェッペリンは全ての艦載機を以て航空戦を開始した。アメリカ第2艦隊と月虹の総力を上げた航空戦である。

「さて……勝てるか……」
『何を不安がっておるのだ』
「そりゃあこの戦力差だからね」
『それも覚悟の上でここに来たのであろうが』
「確かに、あんたの方が正論言うなんて珍しいわね」
『何だと?』

 アメリカ側はおよそ350機、こちらは150機。しかも敵の内150はエンタープライズの艦載機である。

「さあ来い! 一機残らず叩き落としてやるわ!」
『エンタープライズだか何だか知らぬが、航空戦で我に勝てる訳がないのだ!』

 両軍はついに激突した。開幕早々、両軍の機関砲がたちまち火を噴き、アメリカ側は20機、瑞鶴は3機、ツェッペリンは2機を落とされる。月虹側が失ったのはいずれも鈍重な攻撃機であった。

「クソッ。魚雷がもったいないわね」
『魚雷など気にしている場合か?』
「私達ロクな補給も見込めないのよ? 物資は節約しなさいよ」
『そういうのはお前が考えろ。我は知らん』

 圧倒的な数の差がありながらも、戦況は月虹優位に進んだ。どうやらエンタープライズは味方が邪魔で好きに動き回れないようである。

「これなら行けるか……」
『多少の損害は出るが、勝てるであろう』

 だが、その時であった。突然200機ほどの艦上機が戦場を四方八方に離脱していく。

「何? こいつら逃げてくのか?」
『いいや、違う。我らを直接狙うつもりだ!』
「なるほどねえ……」

 正面で艦載機を拘束している間に月虹本隊を狙おうという作戦らしい。しかも正面に残っているのはエンタープライズ機のようで、瑞鶴もツェッペリンも手を離すことができない。

「妙高、高雄! 敵が来るわよ。覚悟決めなさい」
『は、はい!』
『誰も傷付けさせはいたしません!』

 敵機が襲来する。妙高と高雄は高角砲と主砲で応戦を開始した。友軍機はいないので寧ろ自由に撃ちまくれて、重巡としては楽である。とは言え数は非常に多く、とても全てを捌ききることはできない。

『妙高、左に魚雷です!』 
『ありがとう!』
 スクリューを全速力で回し、投下された魚雷をギリギリで回避する。敵の攻撃を完封することは不可能であり、爆撃や雷撃を回避しながら対空戦闘をするしかないのだ。
『高雄! 後方上から爆撃機!!』
『クッ……回避しきれない……!』

 高雄の後部砲塔に爆弾が命中し、爆炎が艦の半分ほどを覆い尽くした。

『高雄ッ!!』
『だ、大丈夫です、妙高。この程度の攻撃で、わたくしの装甲は抜かれません!』
『よ、よかった……』

 爆弾は砲塔に命中したが、砲塔はそもそも最も装甲の厚い場所の一つである。高雄の損傷は機銃が数丁破壊された程度であった。

 かくして懸命の対空砲火で30機ばかりを落とすが、敵の勢いは全く衰えない。

「ちょっとマズいわね……このままじゃ、こちらが押し負けるかも……おっと」

 瑞鶴は自信に攻撃を仕掛けようとする雷撃機を発見し、魚雷を軽く回避した。しかしこのままではいつ魚雷を喰らっても、或いは飛行甲板に爆弾を落とされてもおかしくはない。

『うぐっ、ああっ!?』
「ツェッペリン!?」

 ツェッペリンの素っ頓狂な呻き声が通信機越しに響く。嫌な予感がして彼女の方を見ると、飛行甲板に大穴を開けられ煙が立ち昇っていた。

『ツェッペリンさん!! 大丈夫ですか!?』

 真っ先に声をかけたのは妙高。

『あ、案ずるな……既に艦載機は全て出しておる。影響はない』
『で、ですが、煙が……』 
『艦内の燃料に、少々引火した。だが火の手は既に食い止めておる』
『そ、それなら、いいですが……』
『妙高、お前は自分のことの集中しろ!』
『は、はい……!』

 アメリカ軍機の能力は大したことはないが、流石に数が多い。月虹はじわじわと追い詰められている。

「こうなったら……またあの手を使おうかしら」 
『何をする気だ?』
「特攻よ特攻。エンタープライズにね」
『……頼めるか?』
「ええ、もちろん」

 今でも第2艦隊の監視を続けている偵察機。それに特攻をさせて戦局を一気に打開しようというのが瑞鶴の作戦であった。

「最悪な作戦だけどね……!」

 瑞鶴は祥雲を真っ逆さまに、エンタープライズの艦橋に向けて落下させた。超音速に達した祥雲は船魄を木っ端微塵にする筈であったが――

「落とされた!? 馬鹿なッ!」
『失敗か?』
「ええ、そうよ。失敗したわ」

 祥雲はエンタープライズの高角砲に迎撃されてしまった。艦載機だけでなく本体の防空も全く侮れない奴である。と、その時であった。

『瑞鶴さん! 南西に新たな艦隊を確認しました!! 10隻以上の規模です!』
「は? まさかこれ以上の増援……?」
『そ、その通りかと……』
「クソッ。諦め時みたいね」

 現状維持がやっとなのに増援など来られたら、どうやっても勝てない。瑞鶴は諦めることを決めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...