軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

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第二十一章 北太平洋海戦

夜襲 砲撃戦

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 一方その頃。レキシントンのアメリカ海軍第1艦隊司令部は、控えめに言っても恐慌状態に陥っていた。

「ヘレナから入電! こちらも攻撃を受けています!!」
「シカゴ、撃沈されました!」
「おかしい……。我が軍は全方位から攻撃を受けているじゃないか……」

 大きな半円状に展開した第1艦隊であるが、前衛部隊のどこからも攻撃を受けているという報告が飛んでくるのである。

「し、しかし、日本軍にそれほどの戦力がある筈がありません!」
「ああ、そうだ。そんなことはあり得ない。だから、ほとんどが陽動であることは間違いない。僅かな戦力であちこちを襲撃して回って、あたかも我々が完全に包囲されているように見せ掛けているんだ」

 実際の所、ソ連海軍のクロンシュタットとセヴァストポリが第1艦隊の至る所に襲撃を行っては逃げ去ってを繰り返しているのだが、そんなことをシャーマン大将が知る由はない。

「恐らく、敵の本命、つまり我が軍の戦艦を攻撃しにきている部隊は1つか2つ程度だ。それがどこにいるのかを見極めなければならない」
「そのような報告は入っておりませんが……」
「ああ。どの部隊も攻撃を受けているとしか報告してこない。この真っ暗闇の中で敵の戦力を数えて報告しろというのが無理な話だが」

 武尊が麾下の部隊にギリギリまで攻撃を控えさせていた理由が、まさにこれなのである。敵が状況を把握するのを可能な限り遅らせるのだ。そしてそれは功を奏している。

「改めて全艦隊に、敵の戦力を正確に報告するよう通達しましょう」
「そうだな。言っておくだけ言っておこう」

 シャーマン大将は大した期待もせずに、その命令を下した。

 ○

 さて、敵艦隊に対し全力で攻撃を開始した那智達は、敵が事態を把握する前に突破口を開かねばならない。

 夜襲部隊と敵軍の距離は僅かに3km。軍艦にとってはすぐ目の前にいるようなものであり、ここまで来ると肉眼だけで敵を確認することができる。

『敵艦隊がすぐ目の前だねえ。狙いやすくて助かるよ』
「こ、こんなに近付くなんて、初めてだね……」

 足柄は楽しそうに次々と敵の軽巡洋艦などを仕留めているが、那智は初めての状況に少々気が動転していた。とは言え那智も那智で順調に敵艦を排除している。

 と、その時であった。全艦に武尊からの通信が入った。

『これより我らは、敵部隊に突入する! 者共、心して掛かれ!!』
「と、突入? それって私達自身で突入するってこと?」
『いいね! 楽しそうじゃん!』
「そんなの私達の仕事じゃないと思うんだけどなあ……」

 どうやら100年以上前の海戦のように敵の戦列に突入させられるらしい。

『全艦、我に続け!!』

 武尊は夜襲部隊の先頭で、敵の複縦陣に文字通り突入した。敵の駆逐艦の横腹に突撃してこれを真っ二つに捻じ切り、敵陣のど真ん中に飛び込んだのである。

「おかしいと思うんだけど……もうどうにでもなれ!」
『姉さんも楽しくなってきた?』
「そんな訳ないでしょ!」

 那智・足柄・羽黒は、流石に敵艦に体当たりこそしなかったが、敵の複縦陣に飛び込んだ。周囲は敵だらけであるが、同時に敵の陣形は破綻した。敵と味方が入り乱れ、すぐそこに敵艦の影が見える。

「ひ、ひぃ、敵が近い……」

 敵も味方も訓練したことのない状況に置かれて混乱しているが、そこで武尊が更なる命令を飛ばしてきた。

『全艦、このまま敵陣を突破し、後方の主力艦に雷撃を行え! 我はここに残り、敵の注意を引く! ここからは各個の判断で行動せよ!!』

 武尊は敵陣のど真ん中に陣取り、周辺の敵を31cm主砲9門と15cm副砲6門で薙ぎ払う。敵の巡洋艦は目の前の巨大な脅威である武尊に攻撃を集中させるが、重巡洋艦で武尊の相手をすることは不可能であった。

 とは言え、流石に魚雷を撃たれればタダでは済まないだろう。大巡洋艦の防御力は戦艦と比べれば著しく劣るのに、魚雷を喰らえば戦艦も簡単に沈んでしまうのだから。

「だ、大丈夫なのかな、武尊さん……」
『武尊の護衛には伊吹と鞍馬がついているようです。問題ないでしょう』
「そ、そうだよね! よかったあ。流石に一隻で艦隊の相手するのは無理だよね」

 武尊の側面は最新の重巡洋艦伊吹と鞍馬が守っている。まあ守っているというよりは、敵の隊列を乱して雷撃の射線を塞いでいると言った方が正しいが。

 雷撃するには当然ながら、自艦から敵艦までの一直線が完全に空いていないといけない。だが混乱の渦中にあり、かつ伊吹と鞍馬に混乱を拡大させられている敵軍に、そんなことは不可能である。下手に魚雷を放てばまず味方に当たるだろう。

『姉さん、私達は敵の戦艦ぶっ潰すのが仕事だよ!』
「うん、そうだね。敵の戦艦がどこにいるのか分かんないけど……」
『姉様、峯風さんから報告です。北北西6kmに戦艦を見ゆ、と』
「急いで向かわないと! 行くよ、足柄ちゃん、羽黒ちゃん!」

 どうやら駆逐艦と戦艦が接敵してしまったらしい。昼間なら肉眼で見える距離なのだが、那智には確認できなかった。帝国海軍も帝国海軍でなかなかの混乱具合である。
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