425 / 766
第二十一章 北太平洋海戦
夜襲 雷撃戦
しおりを挟む
「妙高の妹達って言うのに、何をしてるんだ……」
那智達は一向に来る気配がなく、峯風は焦っていた。
『ふふ。何を焦ってるのさ、妹よ』
「焦るに決まってるだろ。時間をかければ確実に敵の増援が来る。戦艦が他に現れたら私達は一瞬で壊滅するぞ」
『まあねー。そんなとこよりさ、峯風はまだ妙高に対する情みたいなのは残ってるんだね』
「残っていて悪いか? ……行方不明になっているだけで、沈んだ訳じゃない」
もちろん妙高が帝国海軍を裏切って反抗し続けているとは言えないので、公的には妙高や高雄は行方不明ということになっている。
『へー、そう。行方不明ねえ』
「何か言いたいことでも?」
『何でもないよ。まあ私達もそろそろ、敵に一撃加えるとしようか』
「作戦でもあるのか?」
『敵の軽巡洋艦を魚雷で沈めよう。護衛のない戦艦なんてどうとでもなるよ』
「巡洋艦相手にせっかくの魚雷を使ってもいいのか?」
魚雷の本数は非常に限られている。重巡洋艦がいれば砲撃で容易に沈められる軽巡洋艦相手に消費してしまうのは勿体ないと、一般には考えられる。
『私達以外にも魚雷を持ってる艦はたくさんいるし、何とかなるよ』
「……そういうことにしておこう。だが相手は軽巡洋艦だ。近付くのは危険じゃないか?」
駆逐艦にとっては戦艦より軽巡洋艦の方が危険である。戦艦の鈍重な主砲など簡単に回避できるが、軽巡洋艦の軽快な主砲を回避し切るのは難しい。巡洋艦の主砲は元より駆逐艦を沈めるのが主目的であるから、当然のことではあるが。
『島風型駆逐艦が敵の大砲に怯える必要なんでないよ』
「他の二人は吹雪型だろうが」
『うーん、まあ、何とかなるよ、きっと。じゃあ皆で突撃しよう』
「どうなっても知らないからな……」
不安しかないが、峯風は島風の提案に乗ることにした。水雷戦隊旗艦の阿賀野も島風に許可を出したので、作戦はすぐに実行される。敵の駆逐艦は既に軽巡洋艦が大方沈めているので、軽巡洋艦までの道を遮るものはない。
峯風と島風、それに吹雪型の吹雪と白雪は全速力を出して、一気に敵との距離を詰める。魚雷の射程自体は50kmあるのだが、現実的に命中を期待したいのなら遠くとも10kmくらいに近寄らなければならない。
『敵まで500mくらいにまで近寄ろうか。そうすれば絶対に当たるよ』
「敵の砲撃を躱せるか?」
『何とかなるよ。皆歴戦の駆逐艦だしね。多分』
「……まあいい」
敵の戦艦は2隻いて、その右と左を軽巡洋艦が2隻ずつで守っている。まずは敵艦から見て右側から接近することにした。
吹雪型の最高速度に合わせるので島風型の性能を十分に発揮することはできなかったが、吹雪型も決して遅いという訳ではない。近代化改装を経て最大戦速は39ノットに達している。
クリーブランド級軽巡洋艦は12門の主砲を活かして大量の砲弾を撃ち込んで来るが、ジグザグ走行で回避する。峯風は装甲が損傷するほどの至近弾を何度か受けたが、直撃は何とか免れた。
「距離500を切ったぞ!」
『うん。じゃあ皆、いい感じに2隻狙って、魚雷全門斉射!』
魚雷発射管に装填してある魚雷を全て発射した。島風型が15門、吹雪型が9門装備しているので、合計48本の魚雷が一斉に放たれる。
発射し終えると、駆逐隊はすぐさま敵から距離を取った。魚雷の再装填は自動化されているが5分は掛かる。標的にした軽巡洋艦のことは気にせず、峯風達は戦艦の反対側に回り込む。
『さーて、当たるかな』
「あれだけ撃てば当たるだろう」
『――うん、当たったね。綺麗な花火だ』
数秒で酸素魚雷は目標に到達した。軽巡洋艦は大爆発を起こしてキノコ雲を上げていた。2つのキノコ雲は戦艦の艦橋よりも高く、まず間違いなく爆沈だろう。
『みんなー、魚雷の再装填は済んだー?』
島風が遊びに誘うかのように聞くと、全員が準備完了と答えた。
『じゃ、行こうか。絶対に当てないとダメだよ』
魚雷は2回斉射を行う分しか積んでいないので、もう一度斉射をすれば使い切ってしまう。外してはならないのは確かだ。
島風の号令を受け、駆逐隊は再び敵に向かって突撃を始めた。が、今回は運悪く、島風にクリーブランド級の主砲が1発当たってしまう。島風の艦尾から爆炎が吹き上がった。
『うわ、痛いなー、撃たれるのって』
「おい大丈夫か、姉さん?」
『平気平気。後ろの方にちょっと穴が開いただけだよ』
「平気じゃないだろ、それは」
『主砲がちょっと使えなくなっても問題ないでしょ』
「まあ、それはそうかもしれんが……」
島風は全く気にすることなく作戦を続行した。もう少し当たり所が悪かったら魚雷に誘爆して木っ端微塵になっていたところなのだが。
「敵までの距離、ちょうどいいぞ」
『そうだね。全艦、残りの魚雷全部発射ー。そして離脱!』
魚雷を全部撃ち終えて身軽になったところで全速力で離脱。残りのクリーブランド級も真っ二つになりながら爆沈していくところが確認できた。これで戦艦2隻を守る艦はなくなったが、魚雷も使い切ってしまった。
那智達は一向に来る気配がなく、峯風は焦っていた。
『ふふ。何を焦ってるのさ、妹よ』
「焦るに決まってるだろ。時間をかければ確実に敵の増援が来る。戦艦が他に現れたら私達は一瞬で壊滅するぞ」
『まあねー。そんなとこよりさ、峯風はまだ妙高に対する情みたいなのは残ってるんだね』
「残っていて悪いか? ……行方不明になっているだけで、沈んだ訳じゃない」
もちろん妙高が帝国海軍を裏切って反抗し続けているとは言えないので、公的には妙高や高雄は行方不明ということになっている。
『へー、そう。行方不明ねえ』
「何か言いたいことでも?」
『何でもないよ。まあ私達もそろそろ、敵に一撃加えるとしようか』
「作戦でもあるのか?」
『敵の軽巡洋艦を魚雷で沈めよう。護衛のない戦艦なんてどうとでもなるよ』
「巡洋艦相手にせっかくの魚雷を使ってもいいのか?」
魚雷の本数は非常に限られている。重巡洋艦がいれば砲撃で容易に沈められる軽巡洋艦相手に消費してしまうのは勿体ないと、一般には考えられる。
『私達以外にも魚雷を持ってる艦はたくさんいるし、何とかなるよ』
「……そういうことにしておこう。だが相手は軽巡洋艦だ。近付くのは危険じゃないか?」
駆逐艦にとっては戦艦より軽巡洋艦の方が危険である。戦艦の鈍重な主砲など簡単に回避できるが、軽巡洋艦の軽快な主砲を回避し切るのは難しい。巡洋艦の主砲は元より駆逐艦を沈めるのが主目的であるから、当然のことではあるが。
『島風型駆逐艦が敵の大砲に怯える必要なんでないよ』
「他の二人は吹雪型だろうが」
『うーん、まあ、何とかなるよ、きっと。じゃあ皆で突撃しよう』
「どうなっても知らないからな……」
不安しかないが、峯風は島風の提案に乗ることにした。水雷戦隊旗艦の阿賀野も島風に許可を出したので、作戦はすぐに実行される。敵の駆逐艦は既に軽巡洋艦が大方沈めているので、軽巡洋艦までの道を遮るものはない。
峯風と島風、それに吹雪型の吹雪と白雪は全速力を出して、一気に敵との距離を詰める。魚雷の射程自体は50kmあるのだが、現実的に命中を期待したいのなら遠くとも10kmくらいに近寄らなければならない。
『敵まで500mくらいにまで近寄ろうか。そうすれば絶対に当たるよ』
「敵の砲撃を躱せるか?」
『何とかなるよ。皆歴戦の駆逐艦だしね。多分』
「……まあいい」
敵の戦艦は2隻いて、その右と左を軽巡洋艦が2隻ずつで守っている。まずは敵艦から見て右側から接近することにした。
吹雪型の最高速度に合わせるので島風型の性能を十分に発揮することはできなかったが、吹雪型も決して遅いという訳ではない。近代化改装を経て最大戦速は39ノットに達している。
クリーブランド級軽巡洋艦は12門の主砲を活かして大量の砲弾を撃ち込んで来るが、ジグザグ走行で回避する。峯風は装甲が損傷するほどの至近弾を何度か受けたが、直撃は何とか免れた。
「距離500を切ったぞ!」
『うん。じゃあ皆、いい感じに2隻狙って、魚雷全門斉射!』
魚雷発射管に装填してある魚雷を全て発射した。島風型が15門、吹雪型が9門装備しているので、合計48本の魚雷が一斉に放たれる。
発射し終えると、駆逐隊はすぐさま敵から距離を取った。魚雷の再装填は自動化されているが5分は掛かる。標的にした軽巡洋艦のことは気にせず、峯風達は戦艦の反対側に回り込む。
『さーて、当たるかな』
「あれだけ撃てば当たるだろう」
『――うん、当たったね。綺麗な花火だ』
数秒で酸素魚雷は目標に到達した。軽巡洋艦は大爆発を起こしてキノコ雲を上げていた。2つのキノコ雲は戦艦の艦橋よりも高く、まず間違いなく爆沈だろう。
『みんなー、魚雷の再装填は済んだー?』
島風が遊びに誘うかのように聞くと、全員が準備完了と答えた。
『じゃ、行こうか。絶対に当てないとダメだよ』
魚雷は2回斉射を行う分しか積んでいないので、もう一度斉射をすれば使い切ってしまう。外してはならないのは確かだ。
島風の号令を受け、駆逐隊は再び敵に向かって突撃を始めた。が、今回は運悪く、島風にクリーブランド級の主砲が1発当たってしまう。島風の艦尾から爆炎が吹き上がった。
『うわ、痛いなー、撃たれるのって』
「おい大丈夫か、姉さん?」
『平気平気。後ろの方にちょっと穴が開いただけだよ』
「平気じゃないだろ、それは」
『主砲がちょっと使えなくなっても問題ないでしょ』
「まあ、それはそうかもしれんが……」
島風は全く気にすることなく作戦を続行した。もう少し当たり所が悪かったら魚雷に誘爆して木っ端微塵になっていたところなのだが。
「敵までの距離、ちょうどいいぞ」
『そうだね。全艦、残りの魚雷全部発射ー。そして離脱!』
魚雷を全部撃ち終えて身軽になったところで全速力で離脱。残りのクリーブランド級も真っ二つになりながら爆沈していくところが確認できた。これで戦艦2隻を守る艦はなくなったが、魚雷も使い切ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
防空戦艦大和 太平洋の嵐で舞え
みにみ
歴史・時代
航空主兵論と巨砲主義が対立する1938年。史上最大の46cm主砲と多数の対空火器を併せ持つ戦艦「大和」が建造された。矛盾を抱える艦は、開戦後の航空機による脅威に直面。その真価を問われる時が来る。
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
電子の帝国
Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか
明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる