軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

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第二十二章 アメリカ本土決戦

不朽の自由作戦

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 シャーマン大将のアメリカ第1艦隊はジュノーに撤退した。ここは元々アラスカ州の一部だった場所であるが、ソ連がアラスカを領有するにあたって切り離され、カナダ共和国に編入されていた。まあカナダというのはアメリカの傀儡であるから、実質的にアメリカ領と言ってもいい。

 ジュノーには多数の要塞砲や高射砲が配備されており、国連艦隊も迂闊に手を出すことはできない。ここに艦隊を置いておくことによって、国連艦隊は常に大規模な艦隊をアラスカに待機させておかねばならず、国連艦隊の自由を大幅に制約することができるのだ。現存艦隊主義というものである。

 とは言え要塞から出ることはできないので、ベーリング海峡の制海権は完全に国連軍のものとなった。ここで、国連軍最高司令官エルヴィン・ロンメル元帥は、再び全世界に向けて短い演説を行った。

『先の北太平洋における大規模な海戦は、国連海軍の勝利に終わりました。今や太平洋全域の制海権は国連軍のものです。つまり、ヨーロッパからシベリア鉄道とベーリング海峡を通って、無尽蔵の兵士と武器弾薬をアラスカまで輸送することが可能になりました。アメリカ大陸は今や、ヨーロッパと地続きになったと言っても過言ではありません。

 国際連盟加盟各国の総力を結集し、合わせて一千万を超える大軍が、国境を越えてカナダに攻め込む準備をしています。特に、ソ連軍を中核とする第一梯団二百万は、私の号令があり次第即座に進軍を開始する用意を整えています。

 本日より3日後、1956年5月4日を以て、国際連盟軍はカナダ及びアメリカへ進軍を開始すると、ここに通告します。私は各国と相談の上で、作戦を「不朽の自由」と名付けました。アメリカの侵略に晒される全ての国に自由を回復することが、我々の第一の目的だからです。

 ……全てのアメリカ人に告げます。

 かつて、200年前にジョージ・ワシントンが掲げた自由とは、他国を思うがままに侵略し、罪のない人々を虐殺し、ほしいままに略奪する自由なのでしょうか。もしそうであるのなら、私はアメリカ合衆国を地上から消し去らざるを得ません。しかし、そうでないのならば、あなた方にはできることがある筈です。

 アイゼンハワー首相並びに閣僚諸君に、改めて要求します。今ならまだ遅くありません。速やかに、降伏せよ。不朽の自由作戦が始まれば、アメリカ合衆国の運命は致命的な破滅のみです。先に申し上げた通り、私はアメリカ合衆国を歴史から永遠に抹消することに、何の躊躇いもありません。

 首相はもちろんのこと、全てのアメリカ人に、懸命な判断を下すよう期待します。今ならまだ最小限の犠牲で済みます。3日の猶予の内に、よく考えて欲しい』

 降伏を促すのはもちろんとして、一般のアメリカ人に蜂起を呼び掛けた印象的な演説であった。しかしアメリカ側の反応は相変わらず鈍かった。アイゼンハワー首相は徹底した情報統制を敷いてロンメル元帥の言葉が国民に届かないようにし、政府としても黙殺した。

「何が不朽の自由だ。ふざけた名前を付けやがって」

 アイゼンハワー首相は部下達にも憚らず悪態をついていた。

「首相閣下、作戦名などを一々気にするのは、指導者のあるべき姿ではありません」

 と、陸軍参謀総長マーシャル元帥は諌言する。

「そんなことは分かってる」
「失礼しました」
「だがワシントンを引き合いに出すのはどうなんだ。奴はヒトラーも恐れ慄く人種差別主義者だし、マトモな人間じゃないぞ」
「演説で重要なのは事実ではなく、聴衆が信じていることと考えていることですから」
「……もっともだ。ともかく、ロンメルが進軍を始めるのは3日後だったな?」
「はい。あれほど公に宣言をして、騙し討ちをするということはありますまい」
「だろうな」
「予定通りアイスバーグ作戦を発動してよろしいですか?」
「ああ。十年ぶり二度目の本土決戦だな」

 国連軍がアラスカ経由で攻め込んでくることなどとっくに想定済みである。アメリカ軍統合参謀本部は本土防衛作戦をアイスバーグ作戦と名付け、徹底的な図上演習と物理的な準備を行ってきた。

「まずはサンローラン線で何人殺せるか、だな」
「はい。ソ連軍に可能な限りの出血を強いて出鼻を挫くことこそ肝要です」

 およそ1,080kmに及ぶソ連とカナダの国境線は、サンローラン線と呼ばれる要塞群で完全に塞がれている。かつてフランスが建造したマジノ線のようなものであるが、要塞に一切の隙はない。ソ連軍がカナダに攻め込みたければ、まずはこの要塞を突破しなければならないのである。

 もちろん、サンローラン線でソ連軍を撃退しようとは思っていない。突破されることは前提とし、可能な限りソ連軍に損害を与えるのがこの要塞の目的である。

「最初に攻め込んでくるソ連軍の兵力は二百万らしいが、こちらの兵力は八十万。要塞があれば十分戦える筈だ……」

 アイゼンハワー首相は不安を隠しながら、ロンメル元帥が指定した進軍の日を待った。
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