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第二十二章 アメリカ本土決戦
コチノス湾上陸作戦
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一九五六年五月十一日、キューバ国首都ハバナ、キューバ遠征軍司令部。
「敵艦隊は、ひたすらに北上を続けています。キューバ政府の支配地域など眼中にないようです」
「奴ら、何を考えているんだ……」
アメリカ軍のすぐ後方に上陸し補給線を切断して挟撃するというのが、一般的な戦術であろう。だが国連海軍はキューバ共和国の支配地域などまるで無視して北上し続けていた。
クラーク大将はそこで、キューバの地図に目を移した。国連艦隊の針路をそのまま延長して線を引いてみると、キューバのある場所にちょうど当たった。
「これは……」
「ピッグス湾だな」
ピッグス湾とはコチノス湾の英語名である。
「ま、まさか、前線を無視してこんな後方に上陸を?」
「ここなら上陸しやすいし、何より我々が目と鼻の先にいる。司令部を吹き飛ばせば全て終わるという目論見だろうな」
「何と……」
「敵の目標をコチノス湾と断定する。すぐに集められるだけの部隊を集めろ」
「しかし、こんなところに大した部隊は集められないかと……」
「ハバナの守備隊を回せ。どうせ敵はハバナを攻撃してこない」
「はっ!」
クラーク大将は何とか国連艦隊に先手を打つことに成功したが、それもほんの24時間程度のものである。主力部隊のほとんどは最前線かその周囲の海岸の防備に回っており、コチノス湾に回すことができたのは2万人程度であった。
○
一九五六年五月十二日、アメリカ合衆国フロリダ州メイポート補給基地。
国連艦隊がコチノス湾への上陸作戦を将に敢行しようとしているその日、メイポート補給基地をに200機ほどの航空機が襲来した。
「――何だと? エンタープライズ、今すぐ迎撃しろ」
報告を受けたマッカーサー元帥はすぐさまエンタープライズに命令する。
「言われるまでもありませんよ。直ちに発艦を始めます」
エンタープライズはすぐさま艦上戦闘機を発艦させて迎撃の準備に入る。周囲の空母からも同様に艦上戦闘機が発艦するが、それを操っているのはエンタープライズである。
「おやおや、瑞鶴の艦載機ではありませんか。私と遊びに来てくれたんでしょうか」
「そんな訳ないだろ。上陸作戦を邪魔されるのを、先手を打って防いだってところだろうな」
「なるほど。それは困りましたね」
「ああ。航空支援なしに上陸を撃退するのは不可能だ。何とかできるか?」
「キューバに幾ら艦載機を送り込んでも、私自身が死んでは全部ガラクタになってしまいます」
「ここの守備に徹するしかないか……。してやられたな」
本体をやられたら艦載機も全部無力化されるという船魄化空母の根本的な弱点を突かれた形だ。エンタープライズは自身の防衛に全力を注がざるを得ず、コチノス湾に手を出すことはできなかった。瑞鶴の狙い通りである。
○
瑞鶴率いる国連艦隊は、コチノス湾の30km沿岸に布陣した。瑞鶴とグラーフ・ツェッペリンと鳳翔はフロリダ半島でエンタープライズと交戦しており、空に敵機の姿はない。瑞鶴は予定通りエンタープライズと戯れながらこちらの指揮も執る。
『こちらレーニン。上空から見る限り、コチノス湾に敵の設備は確認できないのであります』
「了解。ありがとう」
『この程度の任務なら、幾らでも任せてもらいたいのであります!』
レーニンの観測機がコチノス湾周辺の偵察を行っている。二箇所で航空機を飛ばすと流石に疲れるので、瑞鶴は戦闘開始前の偵察を戦艦や巡洋艦の水上機に任せることにしていた。
「どう思う、ゲバラ?」
『敵は森の中に陣地を隠しているんだろう。地下壕を上から見つけるのは無理だ』
「まあ、そうでしょうね。じゃあ敵がいそうな範囲は全部吹き飛ばすとしましょうか」
『構わない。クーバの自然が破壊されるのは痛ましいが、人間の命には代えられない』
「分かった。大和、レーニン、エリザベス、ウォースパイト、比叡、霧島、砲撃の用意を」
海岸から25kmほど離れた地点に、六隻の戦艦は複縦陣で並んだ。大和とレーニンが後方で、残りの艦が前面に並ぶ。特にユニオンジャックを派手に掲げたクイーン・エリザベス級二隻の存在は、アメリカ軍の士気を下げるのに役に立つだろう。
「エリザベス、相手は人間だろうけど、問題ないかしら?」
『無論です。アメリカ合衆国は大英帝国最大の負の遺産。本来なら我らが終止符を打つべきものです。アメリカ人を殺すこと程度、何の躊躇もありません。ウォースパイトも同じ気持ちです』
「あ、そう……。レーニンはどう?」
『現場の兵士は無産階級でしょうが、革命も起こさずブルジョワ政府に盲従している以上は、犯罪に加担しているも同じであります!』
「ああ、そう……。うん、まあ、皆大丈夫そうね。全艦、撃ち方始め!」
瑞鶴の号令で、大和とレーニンの46cm砲18門、その他主砲32門が砲撃を開始した。特に46cm砲の威力は凄まじく、命中する度に小さいキノコ雲が上がった。海岸から5kmまでの山林は砲弾によって徹底的に焼き払われ、或いは爆砕された。地面は原型がなくなるまで掘り返され、地下壕の鉄筋コンクリートが露出していた。
「敵艦隊は、ひたすらに北上を続けています。キューバ政府の支配地域など眼中にないようです」
「奴ら、何を考えているんだ……」
アメリカ軍のすぐ後方に上陸し補給線を切断して挟撃するというのが、一般的な戦術であろう。だが国連海軍はキューバ共和国の支配地域などまるで無視して北上し続けていた。
クラーク大将はそこで、キューバの地図に目を移した。国連艦隊の針路をそのまま延長して線を引いてみると、キューバのある場所にちょうど当たった。
「これは……」
「ピッグス湾だな」
ピッグス湾とはコチノス湾の英語名である。
「ま、まさか、前線を無視してこんな後方に上陸を?」
「ここなら上陸しやすいし、何より我々が目と鼻の先にいる。司令部を吹き飛ばせば全て終わるという目論見だろうな」
「何と……」
「敵の目標をコチノス湾と断定する。すぐに集められるだけの部隊を集めろ」
「しかし、こんなところに大した部隊は集められないかと……」
「ハバナの守備隊を回せ。どうせ敵はハバナを攻撃してこない」
「はっ!」
クラーク大将は何とか国連艦隊に先手を打つことに成功したが、それもほんの24時間程度のものである。主力部隊のほとんどは最前線かその周囲の海岸の防備に回っており、コチノス湾に回すことができたのは2万人程度であった。
○
一九五六年五月十二日、アメリカ合衆国フロリダ州メイポート補給基地。
国連艦隊がコチノス湾への上陸作戦を将に敢行しようとしているその日、メイポート補給基地をに200機ほどの航空機が襲来した。
「――何だと? エンタープライズ、今すぐ迎撃しろ」
報告を受けたマッカーサー元帥はすぐさまエンタープライズに命令する。
「言われるまでもありませんよ。直ちに発艦を始めます」
エンタープライズはすぐさま艦上戦闘機を発艦させて迎撃の準備に入る。周囲の空母からも同様に艦上戦闘機が発艦するが、それを操っているのはエンタープライズである。
「おやおや、瑞鶴の艦載機ではありませんか。私と遊びに来てくれたんでしょうか」
「そんな訳ないだろ。上陸作戦を邪魔されるのを、先手を打って防いだってところだろうな」
「なるほど。それは困りましたね」
「ああ。航空支援なしに上陸を撃退するのは不可能だ。何とかできるか?」
「キューバに幾ら艦載機を送り込んでも、私自身が死んでは全部ガラクタになってしまいます」
「ここの守備に徹するしかないか……。してやられたな」
本体をやられたら艦載機も全部無力化されるという船魄化空母の根本的な弱点を突かれた形だ。エンタープライズは自身の防衛に全力を注がざるを得ず、コチノス湾に手を出すことはできなかった。瑞鶴の狙い通りである。
○
瑞鶴率いる国連艦隊は、コチノス湾の30km沿岸に布陣した。瑞鶴とグラーフ・ツェッペリンと鳳翔はフロリダ半島でエンタープライズと交戦しており、空に敵機の姿はない。瑞鶴は予定通りエンタープライズと戯れながらこちらの指揮も執る。
『こちらレーニン。上空から見る限り、コチノス湾に敵の設備は確認できないのであります』
「了解。ありがとう」
『この程度の任務なら、幾らでも任せてもらいたいのであります!』
レーニンの観測機がコチノス湾周辺の偵察を行っている。二箇所で航空機を飛ばすと流石に疲れるので、瑞鶴は戦闘開始前の偵察を戦艦や巡洋艦の水上機に任せることにしていた。
「どう思う、ゲバラ?」
『敵は森の中に陣地を隠しているんだろう。地下壕を上から見つけるのは無理だ』
「まあ、そうでしょうね。じゃあ敵がいそうな範囲は全部吹き飛ばすとしましょうか」
『構わない。クーバの自然が破壊されるのは痛ましいが、人間の命には代えられない』
「分かった。大和、レーニン、エリザベス、ウォースパイト、比叡、霧島、砲撃の用意を」
海岸から25kmほど離れた地点に、六隻の戦艦は複縦陣で並んだ。大和とレーニンが後方で、残りの艦が前面に並ぶ。特にユニオンジャックを派手に掲げたクイーン・エリザベス級二隻の存在は、アメリカ軍の士気を下げるのに役に立つだろう。
「エリザベス、相手は人間だろうけど、問題ないかしら?」
『無論です。アメリカ合衆国は大英帝国最大の負の遺産。本来なら我らが終止符を打つべきものです。アメリカ人を殺すこと程度、何の躊躇もありません。ウォースパイトも同じ気持ちです』
「あ、そう……。レーニンはどう?」
『現場の兵士は無産階級でしょうが、革命も起こさずブルジョワ政府に盲従している以上は、犯罪に加担しているも同じであります!』
「ああ、そう……。うん、まあ、皆大丈夫そうね。全艦、撃ち方始め!」
瑞鶴の号令で、大和とレーニンの46cm砲18門、その他主砲32門が砲撃を開始した。特に46cm砲の威力は凄まじく、命中する度に小さいキノコ雲が上がった。海岸から5kmまでの山林は砲弾によって徹底的に焼き払われ、或いは爆砕された。地面は原型がなくなるまで掘り返され、地下壕の鉄筋コンクリートが露出していた。
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