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第二十二章 アメリカ本土決戦
コチノス湾上陸作戦Ⅱ
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「うーん。特に反応ないわね。本当にアメリカ軍はいるの?」
「彼らのどんな大砲でも、戦艦には届かない。動く理由はないだろう」
アメリカ軍は地下壕に野戦砲などを隠していると思われるが、射程で戦艦の主砲に敵う筈がない。アメリカ軍にできることなどないのだから、黙って隠れているに決まっているのだ。
「それもそうね。もう一度レーニンに偵察させてみるわ」
レーニンの水上機が再び飛び立ち、戦果の確認を行う。
『敵の地下壕と思わしきコンクリートの建造物が幾らか露出しているのであります』
「破壊されてる?」
『破壊されているものも幾らか。しかし健在のものが大多数のようであります』
「46cm徹甲弾でも壊れないのね……」
「鉄筋コンクリートなんて幾らでも厚くできるんだ。装甲については地上の要塞の方が有利だろう」
「面倒ね」
分厚い鉄筋コンクリートで防護された地下壕は、海からの砲撃だけで破壊することは不可能であった。グラーフ・ローンの51cm砲ならば可能かもしれないが、それを待っている暇はない。
「どうする、瑞鶴?」
「46cm砲以上の貫徹力を持った武器はないし、準備砲撃はこれで終わりにするわ。第二段作戦を開始する。妙高、準備はいいかしら?」
『もちろんです! いつでも出撃できます!』
「じゃあ、後のことはよろしく」
瑞鶴の命令を受け、妙高・高雄・愛宕は戦列を離れ、砂浜へ急速に接近する。
○
作戦の第二段は、重巡洋艦を砂浜に可能な限り近寄せて、上陸部隊を援護するというものであった。三隻の重巡洋艦は既に海岸から5kmにまで近付いている。
『妙高! 敵が撃ってきました!』
「回避行動は取らなくていいよ。多分、大丈夫な筈だから」
砲弾が何発か飛んでくるが、敵の砲台は巧妙に隠されていて精確な位置を掴むことはできなかった。様子見と言わんばかりに数発の砲弾が飛来し、その一つが愛宕の右舷後方に命中して爆炎が艦の半分ほどを覆い隠した。
『愛宕! 大丈夫ですか!?』
『問題ないわ、お姉ちゃん。ちょっとくすぐったい程度、損傷は無視できるわ。重巡洋艦相手に榴弾を使うなんて馬鹿じゃないかしら』
『榴弾でしたか……』
所詮は陸軍の大砲である。上陸を阻止する為の部隊が徹甲弾を保有している訳がないのである。重巡洋艦の装甲はそれほど厚くないが、榴弾如きに貫かれることはない。妙高達は数発の砲撃を受けたが、ほとんど無傷であった。
そして三隻は、海岸線から僅かに200mの地点に単縦陣で並んだ。
「では、錨を下ろしてください。ここに陣取ります!」
『承知しました』
『大胆なことを思いつくわねえ』
三隻の重巡洋艦は砂浜のすぐ手前に錨を下ろして艦体を固定した。アメリカ軍は砲撃しても無駄だと諦めたのか、いつの間にか戦場は静まり返っていた。妙高は瑞鶴に艦体の固定が完了したと報告した。
○
「――お疲れ、妙高。じゃあ第三段作戦に移るわ。あきつ丸、準備はいいわね?」
『当たり前だ』
「よろしく」
あきつ丸と姉妹艦の熊野丸・ときつ丸の艦尾が開き、次々と大発動艇が海面に投入される。機関銃弾くらいなら防げる装甲と9ノットという小型舟艇にしては高い速力を誇り、およそ70名の兵員や戦車を乗せることが可能である。これがおよそ90隻、兵士を満載して出陣の用意を整えている。
『んじゃ、大発全隻、発進』
大発動艇が砂浜に向けて一斉に進み始めた。大発動艇の操縦は全て船魄側に任されており、何らかの異常が起こらない限り兵士達はただ乗っているだけである。
「妙高、目眩しの砲撃を始めてちょうだい」
『了解です!』
妙高達は砲撃を開始した。砲撃には三式弾を使用する。装甲目標への貫徹力は皆無だが、派手な爆炎はいい目くらましになるだろう。アメリカ軍は大発に照準を定めることも困難であった。
『まもなく重巡を通る抜ける』
「ここからはあなたに任せるわ」
『元より俺に海軍の援護など必要ない』
「あっそう」
重巡洋艦の間を抜けて、ついに大発動艇が敵と相対する。この時点で地上まで僅か200mである。アメリカ軍はここぞとばかりに機銃などで攻撃してくるが、大発動艇の装甲や積載する戦車が兵員を守る。
「まったく、どこから撃ってきてるのかしら」
「塹壕の中に隠れている敵を遠くから発見することは困難だろうね」
「これも面倒ね」
『問題はない。敵は俺が皆殺しにする』
あきつ丸最大の特長、全通飛行甲板が役立つ時がついに来た。あきつ丸からヘリコプターが飛び立ち、アメリカ軍がいるであろう辺りに殺到する。
すると、機体の下部に無理やり取り付けてある28連装ロケット砲が一気に火を噴いた。数百のロケット砲弾が落着し、地上を火の海にする。使い終えたロケット砲を廃棄すると、20mm機関砲で地上への掃射が始まった。人間を乗せることを想定していないが故に、武器弾薬の搭載量は潤沢である。
かくしてアメリカ軍を黙らせている間に、大発動艇は砂浜に乗り上げて、戦車と共に陸軍の精鋭が上陸を開始した。戦車は旧式だが軽量の一式中戦車である。現代の戦車戦にはまるで対応できないが、歩兵の援護と対歩兵戦闘には十分だ。
アメリカ兵が塹壕や地下壕から頭を出すと即座にあきつ丸のヘリコプターに粉砕される。アメリカ軍は圧倒的な火力に制圧され、国連軍はコチノス湾に橋頭堡を築くことに成功した。
「彼らのどんな大砲でも、戦艦には届かない。動く理由はないだろう」
アメリカ軍は地下壕に野戦砲などを隠していると思われるが、射程で戦艦の主砲に敵う筈がない。アメリカ軍にできることなどないのだから、黙って隠れているに決まっているのだ。
「それもそうね。もう一度レーニンに偵察させてみるわ」
レーニンの水上機が再び飛び立ち、戦果の確認を行う。
『敵の地下壕と思わしきコンクリートの建造物が幾らか露出しているのであります』
「破壊されてる?」
『破壊されているものも幾らか。しかし健在のものが大多数のようであります』
「46cm徹甲弾でも壊れないのね……」
「鉄筋コンクリートなんて幾らでも厚くできるんだ。装甲については地上の要塞の方が有利だろう」
「面倒ね」
分厚い鉄筋コンクリートで防護された地下壕は、海からの砲撃だけで破壊することは不可能であった。グラーフ・ローンの51cm砲ならば可能かもしれないが、それを待っている暇はない。
「どうする、瑞鶴?」
「46cm砲以上の貫徹力を持った武器はないし、準備砲撃はこれで終わりにするわ。第二段作戦を開始する。妙高、準備はいいかしら?」
『もちろんです! いつでも出撃できます!』
「じゃあ、後のことはよろしく」
瑞鶴の命令を受け、妙高・高雄・愛宕は戦列を離れ、砂浜へ急速に接近する。
○
作戦の第二段は、重巡洋艦を砂浜に可能な限り近寄せて、上陸部隊を援護するというものであった。三隻の重巡洋艦は既に海岸から5kmにまで近付いている。
『妙高! 敵が撃ってきました!』
「回避行動は取らなくていいよ。多分、大丈夫な筈だから」
砲弾が何発か飛んでくるが、敵の砲台は巧妙に隠されていて精確な位置を掴むことはできなかった。様子見と言わんばかりに数発の砲弾が飛来し、その一つが愛宕の右舷後方に命中して爆炎が艦の半分ほどを覆い隠した。
『愛宕! 大丈夫ですか!?』
『問題ないわ、お姉ちゃん。ちょっとくすぐったい程度、損傷は無視できるわ。重巡洋艦相手に榴弾を使うなんて馬鹿じゃないかしら』
『榴弾でしたか……』
所詮は陸軍の大砲である。上陸を阻止する為の部隊が徹甲弾を保有している訳がないのである。重巡洋艦の装甲はそれほど厚くないが、榴弾如きに貫かれることはない。妙高達は数発の砲撃を受けたが、ほとんど無傷であった。
そして三隻は、海岸線から僅かに200mの地点に単縦陣で並んだ。
「では、錨を下ろしてください。ここに陣取ります!」
『承知しました』
『大胆なことを思いつくわねえ』
三隻の重巡洋艦は砂浜のすぐ手前に錨を下ろして艦体を固定した。アメリカ軍は砲撃しても無駄だと諦めたのか、いつの間にか戦場は静まり返っていた。妙高は瑞鶴に艦体の固定が完了したと報告した。
○
「――お疲れ、妙高。じゃあ第三段作戦に移るわ。あきつ丸、準備はいいわね?」
『当たり前だ』
「よろしく」
あきつ丸と姉妹艦の熊野丸・ときつ丸の艦尾が開き、次々と大発動艇が海面に投入される。機関銃弾くらいなら防げる装甲と9ノットという小型舟艇にしては高い速力を誇り、およそ70名の兵員や戦車を乗せることが可能である。これがおよそ90隻、兵士を満載して出陣の用意を整えている。
『んじゃ、大発全隻、発進』
大発動艇が砂浜に向けて一斉に進み始めた。大発動艇の操縦は全て船魄側に任されており、何らかの異常が起こらない限り兵士達はただ乗っているだけである。
「妙高、目眩しの砲撃を始めてちょうだい」
『了解です!』
妙高達は砲撃を開始した。砲撃には三式弾を使用する。装甲目標への貫徹力は皆無だが、派手な爆炎はいい目くらましになるだろう。アメリカ軍は大発に照準を定めることも困難であった。
『まもなく重巡を通る抜ける』
「ここからはあなたに任せるわ」
『元より俺に海軍の援護など必要ない』
「あっそう」
重巡洋艦の間を抜けて、ついに大発動艇が敵と相対する。この時点で地上まで僅か200mである。アメリカ軍はここぞとばかりに機銃などで攻撃してくるが、大発動艇の装甲や積載する戦車が兵員を守る。
「まったく、どこから撃ってきてるのかしら」
「塹壕の中に隠れている敵を遠くから発見することは困難だろうね」
「これも面倒ね」
『問題はない。敵は俺が皆殺しにする』
あきつ丸最大の特長、全通飛行甲板が役立つ時がついに来た。あきつ丸からヘリコプターが飛び立ち、アメリカ軍がいるであろう辺りに殺到する。
すると、機体の下部に無理やり取り付けてある28連装ロケット砲が一気に火を噴いた。数百のロケット砲弾が落着し、地上を火の海にする。使い終えたロケット砲を廃棄すると、20mm機関砲で地上への掃射が始まった。人間を乗せることを想定していないが故に、武器弾薬の搭載量は潤沢である。
かくしてアメリカ軍を黙らせている間に、大発動艇は砂浜に乗り上げて、戦車と共に陸軍の精鋭が上陸を開始した。戦車は旧式だが軽量の一式中戦車である。現代の戦車戦にはまるで対応できないが、歩兵の援護と対歩兵戦闘には十分だ。
アメリカ兵が塹壕や地下壕から頭を出すと即座にあきつ丸のヘリコプターに粉砕される。アメリカ軍は圧倒的な火力に制圧され、国連軍はコチノス湾に橋頭堡を築くことに成功した。
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