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第二十八章 海上補給線
ソ連の奇策
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一九五七年九月十日、フロリダ海峡。
フロリダ海峡には月虹とアメリカ連邦海軍主力艦隊が配置されている。とは言っても、CA海軍は民間団体に過ぎない月虹より貧弱なのだが。
CA海軍太平洋艦隊に所属していた艦艇は、全て大西洋艦隊に配属を変更された。現在の指揮系統としては、大西洋艦隊司令長官のケネディ中将がハイチ周辺の最前線の部隊を率い、それ以外の空母や通商破壊部隊などを海軍軍令部長のシャーマン大将が率いるといった具合である。
戦艦が大体USAに行ってしまったので、シャーマン大将の旗艦は国連海軍と戦った時と同じく空母レキシントンであった。レキシントンとサラトガは純アメリカ製の船魄としてはまだ使える方であるが、エンタープライズとは比べ物にならない。
彼女達を中心とするCA海軍の空母機動部隊は、ハイチの米ソ連合艦隊への襲撃を終えたばかりであった。
「敵に弾薬をたくさん使わせることができた。作戦は成功と言っていいのかな?」
レキシントンがシャーマン大将に尋ねる。
「ああ、成功と言っていい。消耗戦ならば、我々が有利だ……」
米ソ連合艦隊にこちらの艦載機を落とさせて砲弾を消耗させるというのが、CA海軍に取れる唯一の作戦である。船魄達に犠牲を強いるやり方をシャーマン大将はあまり好まなかったが、やむを得ないというものである。
「別に艦載機を落とされるのはいいけど、月虹の休憩時間みたいに扱われるのは甚だ不本意なんだが」
「まあ……そうだな……」
「何だい、その微妙な反応は?」
「客観的な事実として、君達と月虹の船魄の能力は隔絶している。君達を消耗戦に使うことは、仕方ないんだ⋯⋯」
「ああ、分かってはいるんだけど」
月虹の空母達を消耗させる訳にはいかない。エンタープライズの艦載機は補充が利くが、瑞鶴とグラーフ・ツェッペリンはそうもいかない。敵にぶつけて消耗させるのは、必然的にレキシントン達の艦載機になってしまうのだ。
「やはり、瑞鶴に利用されるのが気に食わないのか?」
「自分でも子供っぽいとは思うんだが、その通りだよ」
「その気持ちは私も分かるさ」
今のレキシントンは再建造されたものであり、元のレキシントンは翔鶴に沈められた。そしてその時のレキシントンの艦長はシャーマン大将であった。瑞鶴は翔鶴ではないが、見た目はほぼ同じである。レキシントンは瑞鶴にぼんやりとした不快感を持ち続けている。
「こんなことで集中力を落とす訳にはいかないんだけどね」
「軍艦が心を持った代償ということだろう……。とは言え、私としては君がそれなりの感情を持っていると分かって嬉しいよ」
「そうなのかい? 軍人は無感情な方がいいと思うけど」
「確かに感情に流される軍人など論外だが、全く感情がない軍人とは一緒に戦いたくはないな」
「そういうものなのか。よく分からないね」
「そのうち分かるようになるだろう」
さて、シャーマン大将が作戦の総括や今後の計画などを立てていると、エンタープライズからシャーマン大将に連絡が入った。
『こんにちは、シャーマン大将閣下。敵が動き出しましたよ』
「敵から先手を打ってきたのか? 状況ん詳しく教えてくれ」
『詳しくと言いましても、まだ動き出したらばかりなのですから、何とも言えませんよ』
米ソ連合艦隊がポルトープランスから出港し始めたというのが、エンタープライズからの報告であった。敵がどこに向かうつもりなのか、どれほどの艦隊を出そうとしているのかは、暫く様子を見ないと分からない。
エンタープライズから電話越しに話を聞くより、偵察をしている者から直接聞いた方がよいと判断し、シャーマン大将はレキシントンに偵察を命じた。エンタープライズから偵察の任を引き継ぎ、レキシントンは敵の様子を伝える。
「敵の戦力は、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦三隻、キエフ級空母二隻と、その護衛艦と言ったところだ」
「つまりソ連海軍じゃないか」
米ソ連合艦隊が動いたのではなく、ソ連艦隊だけが動いたのである。
「そうだね。ソ連軍がほとんど皆出動している」
「どこに向かっているんだ?」
「北に向かう様子はないね」
「ふむ……。グラーフ・ローンと衝突する可能性がある南方に、ハワイ級戦艦なしで赴くなど自殺行為だが」
どうやらソ連艦隊はCA海軍が海上封鎖を行っているケイマン海峡かジャマイカ海峡に向かっているらしい。
「諦めて逃げ帰っているんじゃないかな?」
「こんな土壇場で敗走するなど、ソ連軍の名誉に関わると思うのだが……」
「ロシア人に名誉なんてないてないよ」
「辛辣だな。しかしこれは民族性の問題ではない。国家の威信に関わる話だ。連中の動きは、あまりにも急だ……」
「敵は半分未満になったのだから、全力で攻撃すればいいんじゃないかな?」
ハワイ級がいなければソ連艦隊も大したものではない。今攻撃すれば、大損害を与えられることは間違いないのだ。
フロリダ海峡には月虹とアメリカ連邦海軍主力艦隊が配置されている。とは言っても、CA海軍は民間団体に過ぎない月虹より貧弱なのだが。
CA海軍太平洋艦隊に所属していた艦艇は、全て大西洋艦隊に配属を変更された。現在の指揮系統としては、大西洋艦隊司令長官のケネディ中将がハイチ周辺の最前線の部隊を率い、それ以外の空母や通商破壊部隊などを海軍軍令部長のシャーマン大将が率いるといった具合である。
戦艦が大体USAに行ってしまったので、シャーマン大将の旗艦は国連海軍と戦った時と同じく空母レキシントンであった。レキシントンとサラトガは純アメリカ製の船魄としてはまだ使える方であるが、エンタープライズとは比べ物にならない。
彼女達を中心とするCA海軍の空母機動部隊は、ハイチの米ソ連合艦隊への襲撃を終えたばかりであった。
「敵に弾薬をたくさん使わせることができた。作戦は成功と言っていいのかな?」
レキシントンがシャーマン大将に尋ねる。
「ああ、成功と言っていい。消耗戦ならば、我々が有利だ……」
米ソ連合艦隊にこちらの艦載機を落とさせて砲弾を消耗させるというのが、CA海軍に取れる唯一の作戦である。船魄達に犠牲を強いるやり方をシャーマン大将はあまり好まなかったが、やむを得ないというものである。
「別に艦載機を落とされるのはいいけど、月虹の休憩時間みたいに扱われるのは甚だ不本意なんだが」
「まあ……そうだな……」
「何だい、その微妙な反応は?」
「客観的な事実として、君達と月虹の船魄の能力は隔絶している。君達を消耗戦に使うことは、仕方ないんだ⋯⋯」
「ああ、分かってはいるんだけど」
月虹の空母達を消耗させる訳にはいかない。エンタープライズの艦載機は補充が利くが、瑞鶴とグラーフ・ツェッペリンはそうもいかない。敵にぶつけて消耗させるのは、必然的にレキシントン達の艦載機になってしまうのだ。
「やはり、瑞鶴に利用されるのが気に食わないのか?」
「自分でも子供っぽいとは思うんだが、その通りだよ」
「その気持ちは私も分かるさ」
今のレキシントンは再建造されたものであり、元のレキシントンは翔鶴に沈められた。そしてその時のレキシントンの艦長はシャーマン大将であった。瑞鶴は翔鶴ではないが、見た目はほぼ同じである。レキシントンは瑞鶴にぼんやりとした不快感を持ち続けている。
「こんなことで集中力を落とす訳にはいかないんだけどね」
「軍艦が心を持った代償ということだろう……。とは言え、私としては君がそれなりの感情を持っていると分かって嬉しいよ」
「そうなのかい? 軍人は無感情な方がいいと思うけど」
「確かに感情に流される軍人など論外だが、全く感情がない軍人とは一緒に戦いたくはないな」
「そういうものなのか。よく分からないね」
「そのうち分かるようになるだろう」
さて、シャーマン大将が作戦の総括や今後の計画などを立てていると、エンタープライズからシャーマン大将に連絡が入った。
『こんにちは、シャーマン大将閣下。敵が動き出しましたよ』
「敵から先手を打ってきたのか? 状況ん詳しく教えてくれ」
『詳しくと言いましても、まだ動き出したらばかりなのですから、何とも言えませんよ』
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エンタープライズから電話越しに話を聞くより、偵察をしている者から直接聞いた方がよいと判断し、シャーマン大将はレキシントンに偵察を命じた。エンタープライズから偵察の任を引き継ぎ、レキシントンは敵の様子を伝える。
「敵の戦力は、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦三隻、キエフ級空母二隻と、その護衛艦と言ったところだ」
「つまりソ連海軍じゃないか」
米ソ連合艦隊が動いたのではなく、ソ連艦隊だけが動いたのである。
「そうだね。ソ連軍がほとんど皆出動している」
「どこに向かっているんだ?」
「北に向かう様子はないね」
「ふむ……。グラーフ・ローンと衝突する可能性がある南方に、ハワイ級戦艦なしで赴くなど自殺行為だが」
どうやらソ連艦隊はCA海軍が海上封鎖を行っているケイマン海峡かジャマイカ海峡に向かっているらしい。
「諦めて逃げ帰っているんじゃないかな?」
「こんな土壇場で敗走するなど、ソ連軍の名誉に関わると思うのだが……」
「ロシア人に名誉なんてないてないよ」
「辛辣だな。しかしこれは民族性の問題ではない。国家の威信に関わる話だ。連中の動きは、あまりにも急だ……」
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