アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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3日目

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 アキラは、朝早く目を覚ました。寝袋のおかげで快適に眠れたようだ。

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 初心者応援キット その3

 アキラは川に行き、冷たい水で顔を洗った。初夏の朝の冷気が眠気を吹き飛ばす。

 この時期、昼間は暑いが、夜は冷え込む。川の水も日中は温まり、泳ぐにはちょうど良さそうだ。

 敷布に座り、パンをかじりながら干し肉を少し食べ、倉庫から初心者応援キットを取り出して確認する。

 マント 1着、ロープ 1本、チーズ 1ホール、ワイン 1本

 アキラはニヤリと笑ったが、その瞬間ラピスの声が響いた。

「サボっちゃダメですよ!」 

 彼の「朝から一杯やりたい」という願いはすぐに打ち砕かれた。

「洗濯して、スライムでも倒すか!」わざと声を張り上げ、活動を開始すると、ラピスは思わず笑った。

 大木の枝にロープを結び洗濯物を干した後、川へ飛び込みスライムを探す。

 討伐数が順調に増え、5匹目を倒したところで、レベルアップの通知が来た。

 アキラ レベル3
 HP: 20/20
MP: 6/6
Exp: 25/47
保護時間: 12日
G: 125

 ステータス詳細を確認するため、画面を開いた。
STR: 3 → 5
AGI: 4 → 6
INT: 7 → 9
END: 4 → 6
LUK: 49 → 51
CHA: 7 → 9

 レベルアップでステータスが向上したが、運だけが異常に高いことにアキラは気づき、首をかしげた。

「ラピちゃん、運が異常に高いんだけど?」

「そうですね、運が良いのは良いことです」

「いや、そういう意味じゃなくて……」

「もしかすると、誰かからのギフトかもしれませんね」

「神様とか?」

「それはないかと。でも、生き残るには運が一番大切かもしれませんね」ラピスは少し寂しげに言い、話題を変えた。

「ジョブ(冒険者)は、レベル4から選べますから、レベルが4になったらすぐに決めましょう。」

 画面にも「ジョブはレベル4から選択可能」と表示されている。
 
 川遊びにも飽き、キャンプ地をそのままにして午後は川上へ歩くことにした。

「魔物の位置がわかる!」レベル3になり、マップ機能が強化されて魔物の位置が表示されるようになった。

 野原にはスライムのほかに、ツノの生えたウサギ型の魔物「ホーンドバニー」がいた。

 反撃を受けないよう後ろから近づき、一撃で倒す必要がある。一撃で倒せないと、すぐに俊足で逃げてしまうのだ。

 ホーンドバニーは動きが速く、的を絞るのが難しい。結果、2匹しか倒せなかった。他に倒したのはスライム5匹だけ。午後を通しての成果はこれに尽きた。

 意地になってさらに1匹倒したが、暗くなり始めたため、諦めてベースキャンプへ帰ることにした。朝食以来、何も食べてことに気がついたのはその時だった。

「あのウサギ、速かったね」アキラがラピスに話しかける。

「そうですね。3匹も倒すなんて、すごいですよ」ラピスは本心からそう言った。

 別名「逃亡兎」や「嫌がらせの兎」とも呼ばれるウサギだ。セーフティタイムで先制攻撃しても、低レベルでは捕まえるのが難しい。誰がこんな設定を考えたのか。

「……まぁ、いいけど」アキラは沈む太陽を眺めながら、川べりをゆっくり歩く。川面からの風が金髪を揺らした。もう魔物を倒す気はないらしい。

「でも、僕たち以外誰もいないね」

「そうですね。少し寂しいですか?」

「いや、そんなことはないよ」アキラは短く答えたが、その声に少しの躊躇が感じられた。

「今日は酒でも飲んで寝ることにするよ」

「それがいいですね」ラピスは、アキラが寂しがり屋であることを知っていたが、それを口に出さないのが彼の流儀だった。



「さてと」アキラはベースキャンプに戻り、昨日と同じように焚き火を起こした。

 焚き火の爆ぜる音と暖かな光が、彼の心を穏やかにしてくれる。

 リュックと倉庫から材料を取り出し、簡単な料理の準備を始める。チーズを切り分け、使う分だけを取り出した。

 パンを真ん中から切り、炙った干し肉を挟み、たっぷりの溶けたチーズを乗せる。

「グリルドミートチーズサンド、完成!」アキラは満足げに宣言した。

 ワインを片手に、そのサンドイッチを美味しそうに頬張りながら、双月の空を見上げてにっこりと笑う。「月見で一杯」と呟いた。

 気づけば、ワインのボトルは空っぽになっていた。焚き火の前で、心地よい静けさに包まれながら、アキラはゆっくりとくつろいでいた。

 やがて眠ってしまったアキラは、夜中に寒さで目を覚まし、テントの中のシュラフに潜り込んだ。

※※
 
 ラピスはその様子を眺めながら、ワインとチーズを楽しんでいた。普段はあまりお酒を飲まないため、すぐに酔いが回ってしまう。

 アキラが贈り物を喜んでくれたことが、彼女にはとても嬉しかった。胸の奥がじんわりと熱くなる。

 アキラと初めて出会ったのは、彼女がまだ高校生で、彼が20歳を過ぎた頃だった。それでも、彼がお酒を飲む場面はほとんど見たことがない。

 同人サークルの結成会、クリスマス会、誕生日会、ゲーム完成の打ち上げなど、みんなで集まる飲み会でも、彼は乾杯の一杯だけであまりお酒を口にしなかった。

「まったく、もう……」ラピスは、木にもたれて無防備に眠っている小柄な金髪の少年を見て、つい呟いた。

 その姿はアキラとは全く異なるが、どこかに彼を感じる。起こそうか一瞬迷ったが、そのままにしておくことにした。

「それより、明日の準備をしないと」自分に言い聞かせるように、彼女は小さく呟いた。
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