ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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1章 異世界で生活を始める

幕間 その時、警備隊は

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 シーナが城門前で倒れてから数時間が経った日が沈んだ頃、警備室の仮眠室に2人の少女の姿があった。

 一人は金髪ショートの褐色の肌をしたビキニアーマーを着込む警備兵のパメラとおそらく犬系の簡素な皮の胸当てをした長い銀髪の獣人の少女がいた。

 獣人の少女はベッドで眠っており、パメラはその隣にある丸椅子に座って目を瞑りながら腕組みをしている。

 吹いている風が窓にぶつかり軋む音以外、静かな中、獣人の少女が寝がえりをうち「んんっ」と声を洩らすのを聞いたパメラが静かに瞳を開ける。

 薄らと目を開いた獣人の少女と瞳がバッチリ合った一瞬置かれてる状況が分からない為か茫然とした様子を見せたが一気に覚醒してベッドの上に立ち上がって腰に手を添える。

「お前の武器はここだ。それにここは安全だから落ち着け」
「……」

 机の上にあった長剣を持ち上げたパメラにそう言われてもすぐに警戒を解かずに辺りをチラチラ見て、パメラを見覚えがある人物だと分かってとりあえず腰を落ち着けた。

「確か、貴方は城門の警備をしている……」
「パメラだ。お前はここに昏倒して連れられてきた。記憶ははっきりしてるか? まずは種族と名前を言ってみろ」
「多少は混乱していますが、私は銀狼族のティテール」

 自分でも思い出そうとしているのか頭を抱える獣人のティテール。

 何やらブツブツ言っているが構わず、パメラが問う。

「気を失った理由を思いだせるか?」
「プリットを出て……ッ!! どうして私は無事なのでしょうか?」

 ティテールが逆に質問してくる事に眉間に皺を寄せて何かに耐えるようにするパメラは渋々と説明をしてくる。

「それを質問してるのはこちらなのだがな……まあいい、こちらが分かってる事は少ないがお前はこの街の冒険者シーナに担がれて帰ってきた。本来ならそのシーナからどういう状況だったか聞きたいがシーナも私達にお前を託すと気を失って聞けずじまいだ」
「そうか、おそらく私はゴブリンにやられて傷だらけになって……貴方が?」

 ティテールは自分の腕や腹など見える位置を確かめるが失血死を覚悟したほどの重症だったのに傷一つ見つからない事に不思議思ったがパメラには首を振られる。

「私ではない。おそらくシーナが何かしたんだろう。後で礼をしとけよ。傷こそなかったがお前に体に付着してた血の量からして重症だったのは伺えた。それを見ず知らずのお前に処置をしたという意味は分かるな?」
「……いずれ」
「その言葉違えるなよ?」

 焦燥を感じさせる表情で下唇を噛み締めるティテールを見て、パメラは自分でも理解出来ない不愉快さに戸惑う。
 パメラもティテールにも何らかの事情があっての事だろうとは分かる。普段であればしばらく放置して問題になれば介入すればいい、と割り切るだけである。
 しかし、今のパメラは自分を御するのも辛い程、衝動と戦っていた。

 パメラの脳裏に過る城門前にティテールを抱えて現れたシーナを見た瞬間、血の気が引いた。シャツは血に染まり、顔も血糊が付いている相手など職業柄、頻繁とは言わないがそれほど珍しくもない。
 だが、あの時、力なく倒れていくシーナを一番近くにいたパメラは抱き止め、いや、一歩も動く事が出来なかった。

 ただただ、パメラはあの時、怖かった。何が怖かったかはパメラは分からない。

 パメラにとってシーナは未知の存在だ。

 訓練後などで川で男もいるところで裸になっても特に何も感じない。ジロジロ見てくるヤツには報復はするが羞恥というレベルではない。

 だが、シーナは違う。

 抱き着かれれば顔だけなく胸も熱くなる。嫌だと強く思う、しかし、反面、女として見られているとホッともしていた。

 これがどういう感情なのかパメラは分からない。初めて会った時、「城門を閉めないでぇ」と叫びながら走り寄ってくるシーナを見て頭が空っぽになったように見つめた、その屈託のない笑顔を。

 初依頼だと言って出て行った後もパメラはずっとシーナは今頃、何をしてるのだろう? 怪我してないだろうかと気付けば考えて、何度も振り被るという事を何度もしていた。

 そんなシーナのあの有様を見せられてからずっと不安と苛立ちを感じていた。そう、ティテールが眠っている間も……それでもパメラは分からない、この感情の名を。

 そのうえ、礼を尽くせと言ったパメラの言葉に奥歯にモノが挟まった返事をすればこうなるのは必然であった。

 パメラはティテールの胸倉を締めて持ち上げる。

「言えっ! 何があった!」
「ご、ゴブリンに……」

 パメラが聞き出した内容はティテールが森の中、人が寄りつかない場所にゴブリンの集落があり、単独でゴブリンキングを狩ろうとしたが失敗してゴブリンに追われたと告げる。

「わ、私を追ってきたゴブリンの数を最後に確認出来た時は30匹を超えていた……」
「な、なんだとシーナはその数を相手に戦ったのか!?」

 確かにゴブリンは最弱の存在であるが一般冒険者が一人であれば3匹までなら撤退を考えて戦い、4匹以上なら迷わず逃げろというのが常識であった。

 パメラは腕に自信があるが5匹以上を相手に出来る気がしない。まして、シーナはティテールを守りながら戦ったのだからその異常ぶりが分かる。

 キッとティテールを睨みつけるパメラが詰問する。

「その集落はどこだ!」
「言えない、ごほ、あれは私の獲物だ」
「何を馬鹿な事を言っている! もう個人の問題だけじゃないんだぞ!」

 突き飛ばすようにベッドに放るとティテールは解放されて咳き込む。

 それを横目に部屋から出て扉を閉め、傍に控えていた部下の警備兵に告げる。

「あの獣人、何をしでかすか分からん。今回の事が済むまで軟禁しておけ、決して出してはいけない。どうしても出す時は最低2人で当たるように」
「はっ!」

 パメラは部下に見送られ、隊長であるザンギエフの下へと急いだ。



 事情を説明されたザンギエフは迷いもなく、最低限の警備兵を残して森に調査に出る事を決めた。

 半日で準備を終え、次の日の早朝にザンギエフ、そしてパメラ達、警備兵は出発した。

 森へ進みながらパメラはザンギエフに問う。

「良いのですか? 冒険者ギルドに報せを出さなくて?」
「パメラから受けた報告からその獣人の女性、ティテールと言ったか? どこまで本当の事を言ってるか分からん。まずはその女性が気を失い、兄ちゃんが戦った痕跡を見てからにしよう。そこで証言が一致すれば報告に行かせるつもりだ」

 本当は自白させたいところであるが獣人は大抵、一度、口を閉ざすと簡単に割らない。ティテールが言ってる事が本当であれば、口を割らせた時には全てが手遅れという事態も考えられたから諦めているようだ。

「1人、追うだけで30匹を出せるぐらいの集落というと中規模の集落を予測される。そうだとすると本格的に時間はもうないかもしれない」

 パメラはなるほど、とザンギエフの考えに同調した。誤情報に踊らされたら取り返しが付かない。

 パメラが納得したらしいと分かると少し歩みを速める。

「班を二つに別ける。もう一つは頼んだぞ?」
「はい」

 パメラ達は二手に別れて森を探索を始めた。



 それから数時間後、陽が落ちて暗くなり始めた頃、パメラの下にザンギエフの班が大量のゴブリンの死体を発見したと連絡が来て、集合する為に連絡役について向かった。

 到着してその場にある光景に驚きが隠せなかった。

 ティテールの話ではゴブリンは30匹ぐらい。しかし、その場に倒れている数は30匹ではきかない、ざっと50匹はいるように見えた。

 合流した事に気付いたザンギエフは驚いて固まるパメラの隣にやってくる。

「これは予想以上に待ったなしのようだ」
「はい……しかし、これをシーナ一人で?」
「信じられねぇーがそれ以外なさそうだな」

 そう言うとザンギエフは近くにいた若い警備兵に指示を出す。

「ここのゴブリンの討伐部位、右耳だったか? を全部切って冒険者ギルドに提出して森にゴブリンの大集落がある可能性あり、と報せてこい。そして見つけ次第、報せを出すからいつでも動けるようにしろと」

 ザンギエフの指示を受けてすぐに行動に移る若い警備兵を横目に質問する。

「耳など放置してさっさと報告に行かせた方が良かったのでは?」
「急ぎたい気持ちは俺にもある。だが、この現状を知らない者達にこれ以上に分かりやすい証拠はないだろう?」

 確かにそう伝えた所で信じない者もいるだろう。信じたとしてもその緊急性は現場の者より劣る。しかし、それがごまかしの効かないモノを突き付けられたらケツに火が点く。

 人というのは出来ればウソであって欲しい事は信用しようとしないし、気合いを入れているつもりで全然、入ってない事も多い。

 だから、あの耳は劇薬になりうる。

 パメラから視線を外したザンギエフは指示を出す。

「ここには最低人数を残して先に進みゴブリンの集落を捜す。剥ぎ取った後のゴブリンは焼却するように」
「「「はっ!」」」

 それに頷いたザンギエフは森の奥へと先頭切って歩き始めた。

 

 森の中を彷徨った一晩過ごした早朝、遂にゴブリンの集落を発見した。

「こりゃ、マジで笑えない状態だな……」

 ザンギエフの呟きに否定の言葉はなく、イヤイヤながらも頷くパメラ。

 シーナが50匹以上、倒して目減りしてるはずのゴブリン達だがその数の6倍はいるように見える。これはあくまで見える範囲の話である。

 これは一刻の猶予もないと判断したすぐに伝令を出す。

「冒険者をここに案内してこい、大至急だ!」

 その場にいる一番の足を持つ者に指示を出したザンギエフはその場に残る者達に言う。

「ギリギリまでゴブリン達の様子、構成はどう、そこにいるのボス級はキングかクィーン……ジェネラルなら有難いんだがな……いつ氾濫があるか分からない。感づかれないように情報収集にあたれ」

 氾濫、それは集落に収まりきらなくと起こる。新しい集落をつくる為に一部のゴブリンが食糧を求めて人里に下りてくる事が多い出来事。

 散開してパメラ達は情報収集にあたり、パメラは少し小高い場所から身を隠しながら集落の様子を伺っていた。

 しかし、こういう緊張を強いる状況では疲れからか注意が散漫になる事がある。

 それはパメラも例外ではなかったようで、気付けば違う事に思考を奪われていた。

 もうそろそろシーナは目を覚ましているだろうか?

 目を覚ましたシーナが駆け付けてくれるだろうか?

 などと目の前の事に集中出来ずに思考を鈍らせていた。

 そんな注意散漫になっていたが為、パメラは気付かなかった。

 パメラの背後に忍び寄るその存在に……
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