ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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3章 白いアレを求めて三千里

27話 策を練った男は溺れてアリ地獄

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 早朝、俺達は馬車でプリットを後にして、ロッカクを目指して出発した。

 そして、俺は御者席で手綱を握りながら、膝の上にスイをセットしている。

 えっ? 説明いる? まあ、待て、その前に説明しないといけない事が色々あるんだ。

 まず、俺は馬車を扱った経験などない。当然、スキル製造機様のお力があってこそだ。

 馬車を借りる段階で、誰も扱えないと分かった時、

「シーナが馬車って言うから、てっきり扱えるのかと思ってたよ」
「いえいえ、先輩は出来ますけど、その任を私達にお譲りくださろうと……申し訳ありません、お恥ずかしい話ですが私達には……」
「そうなのですか~? さすが先輩ですぅ~」
「でもでも、シーナ先輩だよ? 本当に考えてなかったとか有り得るよね?」

 俺は心の中で『マロン、大正解!』と叫べたらいいのにな~と心を遠くに運びそうになっていた。

 スイとキャウが目をキラキラさせて「間違いありません」と俺を見上げ、ターニャは真偽が分からないから困惑顔で「どうなの?」と聞いてくる。

 マロンは俺が出来ないと頭を下げる事に期待しているようだ。貸し馬車のおっちゃんに手の空いてる御者がいるか確認をしている。

 さあ、皆さん、正解はなんだい? 当然……

「あ、当たり前だろ? 出来るに決まってるさ。さすがスイとキャウは分かってるな」

 へぇーと感心するターニャに恥ずかしそうに照れるスイとキャウ、何故か舌打ちするマロン……てめぇは今度、スペシャルメニューの訓練を『ぷれぜんとふぉーゆぅ』だ!

 余裕たっぷり気取って笑顔で馬車に向かいながら、

 助けて、スキル製造機!!

 もうそれは困った事があれば家に逃げ帰り、青いネコに泣きつく日本一有名な小学生の如く叫ぶ。

 何度も応答を求めていると漸く反応した。

『何か御用でしょうか』
「なんかこう馬車を扱う、御者が出来る感じのスキルはないか!」
『……それがモノを頼む側の口の聞き方でしょうか?』

 こ、こいつ、弱ってる俺の足下を見る気か……確かに、今の状況ならマウント取れると思うところだろう。

 たかだか、能力の分際で、人間様を舐めんな!

「どうか、愚かなワタシクめにこの状況を打破出来るスキルをお与えください」

 ピコン

 御者

 そして俺は人としてのプライドを犠牲にして、愛する嫁と可愛い後輩達の信頼を勝ち取る事に成功したのであった。

 まあ、そんなこんながあって、プリットが見えなくなった辺りでスイが膝の上でお座りし始めた。

 待たせたな、世の可愛い妹が欲しいと叫ぶ野郎ども! 今、俺は感涙で前が見えなくなるかとハラハラしてるところだ!

 もっとイキリたいところだが、残念ながら俺もまだ予備軍だ……だから、俺はこれから正規軍、お兄ちゃんになる為に慎重にミッションを進める。

 スイがお座りしてきた理由は自分も御者が、出来るようになりたいという真面目なスイらしい行動から始まった。

 早速、手綱を手渡し、手綱を握る真っ白で小さいスイの手を覆うように手を置く。

 驚いたのか、思わず手綱を引こうとするのをやんわり止める。

「大丈夫、俺の動きに合わせて」
「は、はい」

 俺を見上げるスイは少し恥ずかしいのか、はにかみながら見上げてくる。

 そのまま、しばらく御者の指導をしているとだいぶ落ち着いてきたのか、なんとか操れるようになってきた。

 操れるのが嬉しいのか、興奮気味なスイを見て俺は微笑む。

 分かるなぁ~初めて自転車に乗れた時、目茶苦茶興奮したし、そういう意味じゃ、向こうの世界で一度は車を運転して見たかった。
 きっと、調子に乗ったんだろうな、と思いながら楽しそうにするスイの横顔を覗く。

 穏やかな風に舞う絹のようにサラサラとしたスイの白髪が俺の頬を擽る。

「スイの髪は綺麗だよな?」
「えっ、そうですか、お婆ちゃんみたいとか思ってません?」

 綺麗と言われて嬉しいのか自分の髪を撫でながらチラチラと見上げてくる。

 ふっふふ、スイも女の子。綺麗と言われて悪い気はしないはず!

「そんな事、思ってない。スイの赤い瞳と綺麗な白髪が映えて神秘的だよ。男の子にモテるだろ?」
「うふふ、先輩はお上手なんですから……えっと気になります?」

 横を向いて俺の胸に両手付いて、見上げてくるものだから慌てて手綱を掴むとスイを抱っこしてるみたいな体勢になる。

「そうだな……悪いムシに引っ掛からないといいなとは思うよ」
「分かりました! 今までは同じ人が告白してこられても丁重にお断りしてましたが、2度目はきっぱりと脈がないと分かる断り方をするようにしますわ」

 いや、そこまで心を鬼にしなくてええんよ? 同じ男としてスイにそう言われたらと思うと一緒に泣いてやりたくなるからね?

 しかし、にこにこと上機嫌なスイを見て、俺は心でほくそ笑む。

 これはイケるだろっ! ワイは男になったるでぇ!

「なぁ、スイ、お願いがあるんだけどいいかな?」
「はいっ! 先輩のお願いなら何でも!」

 ごくりんこ! キタコレ!

 遂になるぞ、なってやるぅ!

「お兄ちゃんとよん……」
「お断りしますわ♪」

 迷いもなく断られた俺は笑顔で話しかけた格好のまま号泣を始める。

 何でもって言ったやん! いいやん、お兄ちゃんと呼んでくれよぉ!

「シーナも懲りないわよね?」

 後ろから呆れた様子のターニャが後ろから身を乗り出す。

 無防備に乗り出してきてるので襟元に隙間が出来て覗く胸の谷間が目の前にあった。

 有難う、ターニャ、お前は良く出来た嫁だよ……

 俺の傷心を癒してくる嫁、ターニャに感謝の念を送る。

 そんな俺を見て呆れてた顔をしてたが、しょうがないな、と眉尻を下げて微笑みつつ話しかけてくる。

「昨日も聞こうかと思ってたんだけど、どうして、わざわざ配達の依頼を受けたの?」
「ああ、スピアさんの依頼だったからというのもあるけど、その時にちょっと小耳に挟んだ情報が気になったから見に行きたいと思ったんだ」
「何を見に行かれるのですか?」

 ターニャとスイに覗きこまれた俺は頷くとあの日、冒険者ギルドでスピアに聞かされた話をした。

 ロッカクの港に最近、遠い異国から珍しい穀物が流れてきたそうだ。

 それを運んできた者から聞いた話では水の中で育てるという変わった作物で一房に沢山の小さな白い実を実らせるらしい。

 しかし、食べ方まで伝えずに運んできた者達が帰ってしまい、思考錯誤して調理したが焼いても固くて美味しくない。煮ればベチャクチャで見た目が悪いなどと最悪の評判のようだ。

「売りに来た人は珍しいと思ってる人に売ったでしょうに……抜けてますわね」
「まったくその通りだよね。ウチとしてはそんなハズレ食品をどうしてシーナが、気になってるかが興味があるのよね」
「うん、それは、聞いてる限りでは俺の生まれ育った所で、ターニャ達にとってパンと同じ物でコメと呼ばれる主食かもしれないんだ」

 ターニャとスイが顔を見合わせて、首を傾げる。

「シーナの生まれたところは不味いモノを好んで食べてたの?」
「いやいや、そんな事はないよ。俺が思ってるコメであれば、調理法が間違ってるんだ……まあ、見てみるまではなんとも言えないんだけどね」

 肩を竦める俺を見て、確かにその通りだと思ったらしいターニャとスイは頷いてくる。

 そして、ターニャが手をパンパンと叩く。

「そろそろ、スイ、シーナの膝から降りる。はしたないよ」
「はい、ターニャお姉様」

 離れて後ろの荷台に移動するのを見送りながら、隣に居るターニャに質問する。

「どうやったら、お姉様と呼んで貰えたんだ?」
「ん~、人徳じゃない?」

 びっくりする俺に悪戯っ子のように笑みを浮かべてウィンクするターニャ。

 可愛いじゃねぇか! でも、あれ? それだと俺は人して駄目だからって事にならないか……?

 スイと同じように引っ込んだターニャに声をかけるのを諦めて前を向く。

 それはともかく、コメだったらいいな……確かにターニャの作るご飯は美味しいけど、それとはまた別の話だしな。

 まだ見ぬロッカクの街に思いを馳せていると俺が座る左右に人が滑り込むように入って座る。

 左右から俺の腕に抱き着かれて見るとマロンとキャウであった。

 そう言えば、君達、話にも絡まずに静かにしてたよね?

 俺を見上げてくる2人が言い放ってくる。

「日に~何度も男の方からお声をかけられる事があるんですが~」
「いいか、シーナ先輩、アタシはモテるんだぜ?」

 えっと、なにが言いたいんだろう? と思っているとマロンが「スイだけじゃないんだ」と言ってきたので何となく察した。

「そうだな、2人も可愛いからな」

 そういうと満足そうに抱きついている腕に力を込める2人。

 これでお勤めは完了かと思えば、キラキラした瞳で見上げられ、お代わりを催促される。

 それからしばらく褒めさせられ続けられる。

 御者をしてるのが暇じゃないのは良かったが、ある意味、苦行を強いられたのは間違いなかった。

 そして、ターニャがそろそろお昼にする、と声をかけられた時、俺の瞳に映るターニャはマジ天使だった。
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