ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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3章 白いアレを求めて三千里

28話 男は先輩らしい事をしてみました

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 河原を見つけて俺達はそこで昼食を取り、後片付けをしている時に対岸に4匹のゴブリンが現れる。

 それを見て、マロンは「チャーンス!」と騒いで短剣を抜くが、頭にチョップを入れて動きを止める。

「やると思ったけど、ブレないよな?」
「シーナ先輩もブレないよね? たまにはブレてくれていいだよ? それにあのゴブリン、こっちに来るって」

 そちらに目を向けるとこちらに来ようとしてるのが目に入る。

 川があると言っても、所詮、俺の膝まで浸からない程度の深さ、泳げなくても渡れるよな。

 渡ってくるゴブリンを見つつ、ターニャが「どうするの?」と聞いてくるが俺は振り返り、期待に爛々と目を輝かし、頭にあるお団子が揺れているマロン……

 あれ? 俺、疲れてるのかな?

 それと嫌だな~という声が漏れそうな不安顔したスイとキャウの姿があった。

 ん~、これは意識改革のチャンスでもあるかな? 正直、前回のは半分失敗した。

 スイとキャウは俺が許可しない限り、戦いたくないとマロンを止めるのに積極的になっただけで、少しトラウマも刻んでしまった。
 まあ、マロンはとりあえず勝てるという良く分からない自信を覚えたというマイナスだらけだ。

 その両方をクリアさせる方法を思い付いたので試してみることにする。

「ターニャ、悪いんだけど3匹、頼めるか?」
「いいけど、1匹はその子等にさせるの?」

 頷くとマロンは喜び、スイとキャウは項垂れる。

 俺は近寄ってくるゴブリンに威圧でたたら踏ませて、川で尻モチを付かせ、後ろにいる両極端な反応をする3人を見て苦笑いを浮かべた。

 まあ、今の3人だったらそれが普通の反応だろうな。

 俺は本当に嫌そうなスイとキャウの肩に手を置く。

「今回は俺が盾役で参加する。そんな嫌そうな顔してると可愛い顔が台無しになるぞ?」
「本当ですか~頑張れそうな気がしてきました」
「……先輩は本当に時々、不意打ちするから……」

 キャウは安心したように俺を見上げてユルい笑顔を向けて跳ねる。跳ねると黒髪が光に反射して天使の輪が生まれ、けしからん胸も弾む。

 スイもブツブツ何かを言ってたが、小声で聞きとれなかった。

 聞き返そうかと思ったが、ゴブリンが川から上がってきたので断念する。

「さあ、始めるぞ」
「は――い!」

 元気良く挨拶したのは、当然のようにお団子娘だけだが、スイもキャウも頷き、武器を身構える。

 俺は前進してゴブリンを押さえに行く。

 攻撃に参加したら一刀で終わるので、剣は鞘から抜かずにバックラーだけで対応する。

 ゴブリンの錆びた剣を受け止めたり、流したり、時にはゴブリンの顔に押し付けてたりして自由に動かさない。

 そんなゴブリンにマロンは積極的に攻撃を加えて行くが浅い傷しか入れる事が出来ない。非力だというのもあるが、効果的なタイミングで斬り込めてないのが一番大きい。

 スイも魔法を唱えたいが俺を避けた射線を取るのに苦労してるようだし、キャウは杖を抱えて右往左往していた。

 このままジリ貧でやっても勝てるだろうけど、3人の意識を変える事は出来ないな。

 マロンの無駄に好戦的な考え方、スイとキャウの引け腰などのマイナス要素を払拭させる為にそろそろ動こう。

「マロン、ゴブリンの背後に回れ」
「えっ、うん」

 そう言うと遠回りに旋回するようにして回り込むマロンを見ながら、背後にいるキャウに指示を出す。

「杖をしっかり構えて、いつでも跳び出せるように準備、出来るなキャウ」
「はい~頑張りますぅ」

 マロンがゴブリンの背後に回るのを見て「やれっ!」と指示を出すと突っ込んでくる。

 突っ込んでくるマロンに気付いたゴブリンの顔を、バックラーで鼻を潰す程度の力で叩き込む。

 たたら踏むゴブリンを見ながら、スイに準備をさせる。

「スイ、魔法の準備をいつでも撃てるように集中だ」
「はい!」

 集中を始めたスイと同じ時して、マロンが短剣2本持ちで斬り込み、ゴブリンの背中に大きな×を作る。

 血が噴き出し、痛みから絶叫するマロンに向き合うゴブリンを見て、待機させてたキャウを呼ぶ。

「今だ、飛び込んで杖でぶっ飛ばせ」
「はい~、せぇーの~」

 声は呑気だがフルスイングしてゴブリンの背中、マロンが斬りつけた場所に叩きつける。

 当たったからいいが、今度から目を瞑るなと指導しよう。

 追い打ちを食らったゴブリンが地面に転がり暴れる。それを見たマロンが飛び出そうとするが掌を向けて止まれと指示を出し、背後にいるスイに告げる。

「スイ、魔法でトドメだ」
「はい、アイスアロー!」

 魔法で生成された氷柱が飛び出し、吸い込まれるようにゴブリンの胸に刺さると短い悲鳴を上げ、そして、力尽きて動かなくなる。

 動かなくなったゴブリンを見つめる3人は、キョトンとして目をパチパチさせながら動かない。

 まあ、なんとなく分かる。多分、ゴブリンをこうも簡単に倒せた事が信じられないのだろう。

 なにせ、前回、あの酷い泥仕合で勝ったと胸が張れない辛勝した3人だから。

 さあ、勝鬨だぞ?

「勝ったぞぉぉぉ!!」

 そう叫んだ俺の声にビックリした3人が俺を凝視してくる。その返礼に口の端を上げ、自信ありげに笑ってやると強張った表情に変化が生まれる。

「やったぁぁぁ――――!! アタシ、完全勝利!」

 マロンはその場で跳ね上がり、声を上げて騒ぎ、スイは真っ白な手が赤くなるほど強く拳を作り、胸に当てるようにして震えがくる体を押さえ付けようとする。

 そして、俺の前にいたキャウは背中から倒れるのを受け止めてやる。

「先輩、私達、強くなったんですね~」
「あはは、残念ながら出会った頃と大差はないんだよ」

 俺の言葉に驚く3人を見て、もうちょっと言い方があったかな? と思うが言ってしまったので続ける。

「俺は何度も言ってると思うがお前達3人には盾役がいる」

 言ってたよな? と言うと3人は頷く。

 3人の顔を見渡しながら感想を聞く事にした。

「どうだった? 攻撃らしい事はしてない俺という盾役がいてやり易かっただろ?」
「はい、こんなに違いがあるんですね……」
「前はもっと焦ってしまいましたが~、今日は落ち着けたと思います~」
「アタシは、思いっきり良く踏みこめたかな」

 ふぅ、これで少なくとも盾役の必要性が伝わったかな?

 それにスイとキャウのトラウマも少しは軽くなってるといいが……

 などと思ってると急に拗ねた顔をしたマロンが俺の傍に来て見上げる。

 腰の後ろで両手を組んでクネクネとして見上げる様子は可愛らしいが子供だった。

「盾役がいるのは分かったけど、どうしてトドメを刺そうとするのを止められたのかな?」

 マロンがそういうとスイもキャウも解答待ちするように見つめてくる。

「これは3人ともに言っときたい。冒険者というのは危険を冒す者であるんだ」

 分かるよな? と告げると3人は頷くがマロンの目は泳いでいるのできっと分かってない。

 苦笑しながら肩を竦める俺はマロンのデコを指で突っつきながら言う。

「分からない事は恥じゃない。流す事が恥なんだ。そうだな……今、倒したゴブリンを10匹倒したら銅貨50枚だ。そこでドラゴン退治を銅貨50枚でしてくれと言われたどうする?」
「そんな馬鹿な話はないよね? 割りが合わないよ!」
「マロンの言う通りだ。ドラゴンと戦うリスクを考えたらやってられないよな。選ぶなら当然、ゴブリンだ」

 マロンは何を当然の事をと言いたげに鼻を鳴らすが、スイとキャウには意味が通じているようだ。

「それでさっきの話に戻るのだが、冒険者は危険を冒す者であるから危険と向き合い、リスクを考えて無事に生きて帰る事を考えないといけない。それを踏まえてマロンが、トドメを刺しに行こうとしたらどんなリスクがあった?」
「うーん、地面で暴れてたから取っ組み合いになったかもしれないし、振り回してる手で強打、剣などが刺さってたかも」

 頬を掻きながら乾いた笑いを洩らすマロンの様子から理解してくれたらしい事が伝わる。

 スイに目を向けると小さく手を上げて、質問をする許可を取るようにしてたので頷く。

「先輩はそういう形になるように指示されてたのですか?」
「まあね、パワーゲームが出来る相手なら要らないかもしれないが、基本、戦いとは自分の得意にハメられるか、どうかだよ」

 俺の言葉、先程の戦いから自分達に勝ち筋、先がある事を知り、3人が興奮気味に見つめ合うのを見て笑みが浮かぶ。

 大人でも子供でも出来なかった事、知らなかった事を出来る、知った時の達成感を感じるものだ。

 俺達でも充分、多感だが、マロン達はその比じゃないだろう。

 その場で会議でも開きそうな勢いの3人に向かって手を叩いて注目を集める。

「気持ちは分かるがそれは馬車に乗ってから好きなだけ、な? さあ、中途半端になってる片付けを済ませて出発だ」
「「「は――い!!」」」

 いつも以上に素直な3人がテキパキと片付け始めるのを眺めているとターニャがやってくる。

「面倒を押し付けてごめんな?」
「ううん、ゴブリンぐらいウチにとって面倒とかないから」

 ススッと来て俺の腕に両手を絡ませて、肩に頭を乗せてくる。

 そして、俺の頬にチュッとキスをしてきた。

「格好良かった、優しい先輩……先生みたいだった。ウチ、惚れ直しちゃった」
「いや~、ターニャに言われると照れるな」

 そういってターニャを抱き寄せようとするとスルりと避けられて距離を取られる。

 え、え、なんでっ!?

 戸惑う俺が見つめるターニャの視線の向ける先を追うと目が据わらせたマロン達が河原の石を拾い上げていた。

 ちょ、ちょっと待って片付けを指示したはずだけど、石拾いになってるの、どちて?

 いくらか拾うと石を握り締めて、投げる動作に入ろうするのを俺はイヤイヤと首を横に振る。

「「「先輩のえっち!!」」」
「えええっ! マジで投げるの!?」

 石を投げつけてくる3人から逃げ始める。

 そう、これは投擲の訓練だ。

 終了時間は3人が疲れるか、気が済むまで続けられる。

 ロッカクに着くのは、いつになるんだろうとホロリと涙を流しながら俺は逃亡を続けた。
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