ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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4章 求められる英雄、欲しない英雄

54話 男は王国軍の数ある答えの1つに気付く

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 ワイバーンの住処へと飛ぶ俺は探査を使っていたが、まだ探査外でワイバーンの反応が捉えられない。

 結構、離れた位置までいっちゃったな……王国軍、戦力はグダグダだけど逃げ足はイイモノ持ってましたな。

 思わず、失笑してしまった俺に気付いたターニャが話しかけてくる。

「どうしたの、変な事でも?」
「変と言うか、おかしいかな? 王国軍の逃走が凄くてだいぶ離れてしまったからな」
「プッ、不謹慎だとは思うが、あの纏まりのない逃走だったのに確かに良く逃げ切れたと思うな」

 俺があえて、伏せ気味で伝えたがパメラには伏せた部分、クモの子を散らすような逃走風景を指摘して笑ってしまったのをターニャに「パメラ、性格悪いんだ? ウチも笑っちゃうけど」とニカと笑う。

 まあ、ぶっちゃけ、助けるのは間に合ったんだから多少は笑いのネタになって貰ってもバチは当たらないだろう。

 とはいえ、あそこまで弱い王国軍では違う意味で心配になってくるんだが……

 それを王国はまったく自覚がなかったのだろうか? そこまで頭が弱い奴等の集団だったら隣国に襲ってくださいと言わんばかりだと……待てよ? もしかして俺が相手を舐め過ぎてるのか?

 もし、上層部にはそれなりにまともな頭に血が巡った者がいたとしよう。

 その想定が正しいのなら隣国に牽制は入れ続けられるだけの交渉力があるだろう。だが、このお粗末な王国軍の有様はどうだ、ワイバーン1匹すら対等に戦えてない。

 しかし、あの指揮官らしき男のセリフからワイバーンの素材が欲しがってる素振りは本物だろうし、情報屋からの言葉からもそれが伺える。

 ワイバーンの主の宝玉……これが欲しいらしいが、それを取れたら儲け物ぐらいで兵力をあえて疲弊させるだろうか……

 何やら嫌な予感が止まらず、俺は口の中が渇くのを感じて息を飲む。

 ワイバーンの主がついでだったら?

 そうなると根底から覆る。

 それだったら消耗しても良い兵力、通常より弱かったあの軍隊でも良かったんだろう。

 しかも、王国軍として動いているのにも関わらず、こそこそ動いているのも解せない。

 ワイバーンの住処を襲う王国のメリットって何なんだ?

 などと考えていると探査に多数のワイバーンの反応を捉える。

 考えるのは後だな。

「ターニャ、パメラ、ワイバーンをそろそろ視認出来るぞ、大丈夫か?」
「いいよぉ!」
「ああ」

 ターニャは仮面を浮かせて良い笑顔でウィンクしてみせるし、パメラは口許に微笑を浮かべて頷く。

 すると、2人が口許以外隠してた仮面を外すのを見て俺は少し慌てる。

「ちょ、ちょっと身バレを防ぐ為に付けてるのにどうして外すの?」
「もう王国軍もいない。付けてる意味があるのか?」
「そそ、シーナもそんな似合わないの外しちゃいなよ」

 サラッと言われた俺は軽くへこむ。

 ちょっとだけ、ほんまにちょっとだけやで? かっこええかな~って思ってたんだけど……

 渋々、俺は口許も隠れている仮面を外して貰い、3人の仮面をポシェットに仕舞う。

「あ、シーナ! ワイバーンの住処が見えたよ」
「だな、心の準備はいいか?」

 小脇に抱えるターニャとパメラに顔を交互に向けながら問うとちょっと雰囲気がおかしい2人の姿があった。

 ターニャはちょっと指を突き合わせながらモジモジしているし、パメラは頬をコリコリと掻いていた。

「どうした? 問題ありか?」
「あるというか、なんといいますか?」
「いや、なかなか骨が折れる大仕事だな、と思ってな……」

 ワイバーンの住処を目当たりして怖くなったとか?

 それだったら俺単独でやってみせる! 2人に怖い思いをさせやしないから心配するなと言ってやろう!

 と言ってやろうとする前に2人が口を開く。

「そ、その『いってらっしゃいのチュー』的な?」
「うんむ『お仕事の前のキス』があっても良いのではと……」

 薄らと頬を染めた2人が唇を差し出すようにして瞳を瞑る。

 俺は迷いも見せずにチュとバードキスをしていく。

 えっ、躊躇なしだって? いる、躊躇?

 嫁である2人からのご褒美タイムをスル―するとか有り得ないからね?

 キスされた2人は口許をムニムニさせながら、両頬を手で押さえて御満悦な様子だ。

 まあ、ここのところ、マロン達の目があってこういう事を控えていたからな。

「ウチの気合い充填!」
「いつでもいける!」
「よし、2人は倒す事は考えなくていい。逃がさないように気を付けたらいいから」

 俺の言葉に頷く2人。

 ターニャは俺の手から離れて空を駆けていき、パメラは「シーナ、私を思いっきり投げてくれ」と言われたのでワイバーン目掛けて投げる。

 ワイバーンに特攻する2人を眺めて俺は頬をだらしなく緩めていた。

 嫁にあんな可愛い事されて、あんな事を言われたら旦那冥利だ……

 さあて、嫁ちゃん達にカッコイイところを見せる為に頑張るかね!

 俺もワイバーンの住処に特攻した。



 GYAAAAAA

「うっとうしい!」

 ワイバーンの横っ面を盾で叩きつけて地面へと吹き飛ばす。地面に叩きつけられる前に土魔法で土柱を生みだして串刺しにする。

 倒したワイバーンを片っ端からポシェットに仕舞いながら辺りを見渡す。

 うーん、粗方倒したはずだけど、主はどこだ?

 探査で分かってる範囲では上空でターニャとパメラにフルボッコにされているワイバーンで最後だ。

 うむ、ちょっとワイバーンが憐れになるな。

 嵐のような攻撃が止み、自然落下してくるワイバーンは絶命しちゃってるようだ。

 心で南無と唱えて、叩きつけられる前にポシェットに収納しちゃう。

 ターニャ達も空中から降りて、俺の下にやってくる。

「やったねっ!」

 そういって興奮気味なターニャが笑みを弾けさせて首に腕を回して抱き着いてくるのを俺は抱き締め返す。

 辺りをキョロキョロしながら近づいてくるパメラが眉を顰めた。

「素材は全部回収してるようだが……主はいたのか?」
「いや、多分いなかったと思う。探査にも引っ掛からないし、主の存在がデマじゃない限り、な」
「そうだね、特別強いとか大きいのはウチも見てない」

 マジでどういう事だ?

 確かにターニャが言うようなワイバーンは見かけなかったし、ポシェットの内訳を見ても宝玉は存在しない。

 もしかして、探査に引っかからない特殊な力があったりするのか?

 俺は2人を呼んで言う。

「とりあえず目視確認で辺りを捜索しよう」

 2人は俺の言葉に頷いてくれると俺達は散って捜索を開始した。

 捜し始めて30分ぐらい経ったぐらいにターニャが俺達を呼ぶ。

 その声に反応した俺はターニャがいる位置に探査による反応のを確認しながら駆け寄る。

 到着すると2人は揃っており、どうやら俺が一番遠くにいたようだ。

 到着した俺にターニャが前方を指差す。

 指を差された位置を見ると煙が上がっているのが見える。

 狼煙かなんかな?

 ん、待てよ……なんかおかしくないか、距離感が……

 答えが出る前に俺の背筋に冷たい感覚が走る。

「あんな遠い所から見える煙って相当な火事が起きてるんじゃ!」
「なぁ、シーナ。たまたまの大火事なのかもしれない……だが、いないと思って捜してたワイバーンの主が存在したとして、ワイバーンの主はどこに行った?」
「し、しまった、そういう事かっ!!」

 俺は慌てて、2人を小脇に抱えようとするが辞退される。

「ウチ達は自分の足で追いかける」
「私達の事は良いから私達の街を!」

 そう、煙が上がってる位置にはプリットがある。

 俺は頷くと空に飛び上がり、全力で飛ぶ。

 風魔法で更に一気にブーストをかけて更に速度を上げる。

 ち、きしょうっ! また俺は同じ失敗をしたのか!

 スキルのレベルを上げたとしても使いこなしてないと意味がないと分かってたつもりだったのに……

 おそらく俺の探知範囲に入る前にワイバーンの主は飛びだっていたのだろう。

 なのに、探査に引っかからないから、反応しないのか、存在しないと思い込んだ。

 ワイバーンがプリットに襲いかかるかもしれないという事は事前から分かっていたのに、それを俺は見逃した。

 つまり、王国軍がちょっかいをかけた後、すぐぐらいに動いてたのかもしれない。

 本当に王国軍、要らん事しかしないな!

 アイツ等は何をしたいんだ! ちょっかいを掻けたらプリットを襲われるって分かって……

 そこまで考えた時、バラバラだった糸が繋がった気がした。

 も、もしだ……王国が馬鹿じゃないとして、キレる存在がいたとしたらだ。

 ワイバーンの主なんか目じゃない獅子身中を探そうとしてたとしたら?

「私が国から調査を命じられたのは、英雄捜し……ゴブリン神を屠った人を捜しております」

 トリルヴィが俺と会った時にこう言ってた。

 どうして、作戦行動が近いこの時に、この命令を出した?

 いや、トリルヴィが求めた事なのだろう事は疑わない。だが、そんなのは王国には関係なく、命令を下した。

 そこには作戦行動を邪魔、トリルヴィという人員を失ってもよいという開き直りが出来るだけの価値があったはずだ。

 当然、プリットも襲われる事も分かってたはず……前回のプリットの壊滅の危機、ゴブリン神の時のように。

 そう、同じような状況が生まれる。

「つまり、つまりっ!!」

 強い風圧に耐える俺は奥歯を強く噛み締める。

「狙いは俺かっ!!」

 表に出てこないゴブリン神を単独撃破した英雄、俺を引きずり出す罠の可能性を感じて俺は怒りで身を震わせた。
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