ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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5章 表舞台へ、静かに階段を上る

63話 少女の考えを聞いた英雄見習の男の胸に火が灯る

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 脱衣場で真っ裸になった俺は湯船に近づき、かけ湯をすると足からゆっくりと入った。

「たっはぁ~」

 うむ、我ながらオッサン臭いな……

 入った瞬間の鼻から抜けるような溜息の仕方に地味にダメージを受ける俺は頭の上にタオルを載せて、肩まで湯に浸かる。

 湯気が立ち昇る先、天井を見上げる俺は体を弛緩させながらボンヤリと考え始めた。

 ティテールの件に首を突っ込むと決めた以上、白黒が付くまで対応するのは決まっているが問題はどこまでという事だ。

 どこまで介入して、どこまで表立つ行動をするかという線引きに悩んでいた。

 ティテールの行動はだいたいは読める。俺が手渡した資料を下で行動して事実を知った場合、最終目的をどこに据えるかはということである。

 ただ、暴走しないかが問題だが、そこで俺が言った「取り返しがつかなくなる」という言葉を思い出してくれれば、最悪の事態は避けられるし、まず間違いなくティテールは俺が思うように勘違いして引いてくれるだろう。

 俺は情報屋に伝えられたティテールと弟のザスの話を思い返す。弟のザスとティテールは幼い内に両親を亡くして肩を寄せ合うように生きてきた。
 元々、銀狼族というのは家族を大事にする種族らしいが、この2人はそれを超え、ある意味、半身のように自分の事より相手の為に生きる事が当然のように固い絆を感じさせていたそうだ。

 それでも幼い内はまともに生活が出来ずにそれを見かねたチロ達が親代わり、近い親戚のような形で生活の援助をしてくれたので2人は職にありつけるまで成長をする事が出来た。

 自立出来るようになり、姉であるティテールは世界を回りたいという弟のザスの夢の実現の準備が上手くいくように願い、手伝った。

 また、弟のザスも姉であるティテールに人並の幸せを手にして優しい家庭を持って欲しいと願い、自分の事を疎かにして弟のザスの夢に手を貸そうとする姉、ティテールに「そろそろ弟離れしろよ?」と少し寂しさを感じつつも言っていたようだ。

 そんな、ちょっと不器用な姉弟の幸せな時は終わりを迎えた。

 弟のザスが生命力がダダ漏れするという奇病に罹ってしまったのだ。

 銀狼族の男だけが罹る事があり、それは変身能力があり、大きな狼になる事が出来る体質が原因だ。

 生命力を使って変身する能力があり、能力値が10倍になるが、1時間使うと10年寿命を削ると言われてるそうだ。

 ティテールは、治せるはずだと奔走したようだ。だが、それは徒労に終わり、それも頑張った割にあっさりと情報が手に入る。

 本来なら銀狼族であれば常識とも言える病気であったが、それを伝える両親が幼い内に他界してたせいでその常識を知らなかったティテールは愕然としたそうだ。

 罹ったが最後、治癒された者が皆無の不治の病である事を知ってしまう。

 それでもティテールは諦めなかった。諦めずに捜し回り、そして辿りついたのがフェレチオ子爵が囁いた有りもしない、存在しない『賢者の石』であった。

 当の本人であるフェレチオ子爵は『賢者の石』が存在するとは実はまったく信じてないし、作ろうともしていない。

 なのに、何故、ティテールに『賢者の石』を囁きかけ、内に引きいれたか……

 女であるティテールを欲した訳でもなく、仮初ではあるが高い忠誠心、戦闘力はオマケで本命はこれからティテールはその目で確かめに行くはずだ。

「はぁ……スケベ貴族とかでという話ならティテールの意識調査をした段階で対応は簡単だったんだろうけどな」

 湯船のお湯を両手で掬って顔をパシャとかけつつ溜息を零す。

 既にティテールにとっては最悪の事態で取り返しが付かないのだから、これ以上、マイナスに傾く事は俺がさせたくない。

 その為に俺はどこまで関わるか……正確に言うなら『名もなき英雄』としてどこまで関わるかである。

 既に一個人で介入しましたでは片付かない所まで来ている。

 何故なら、フェレチオ子爵が最低の人物である事はこの街プリットでは知らぬ者がいないほどであるが一個人である冒険者Dランクの俺が「数々の悪行、許しませんぞ!」とか言って殴り込むのはどう考えてもおかしいし、下手をするとプリットの住人にフェレチオ子爵と同類と見られかねない。

 フェレチオ子爵にとっても「どこぞのどなた?」でまともに対応しないだろうし、情報屋の話が正しいならティテールから俺が『名もなき英雄』の可能性を伝えられてないらしいから余計に門前払いだ。

 だからといって力ずくというのは本当に同類扱い確定である。

 だいたい、俺はどこぞの黄門様じゃないしな。

 それらの全てクリアさせるのが俺が『名もなき英雄』である事を公表する事だ。

 ゴブリン神、ワイバーン襲撃などで『名もなき英雄』のプリットの住人の信頼は絶大で、フェレチオ子爵にとっても目の上のタンコブであり、宝玉を持っている相手という事で無視できない。

 だが、俺はそれを隠してしまった。

 確かに事情は色々あったが、隠してしまった後ろめたさ、そして今更感で表に出辛いし、正直なところ周りも対応に困るだろう。

 そして、俺は青髪の眼鏡をかけた少女、トリルヴィの言葉を思い出す。

「これ以上は名もなき英雄様、ご本人に問われない限り、お答えする気はありません。王国は名もなき英雄様を血眼になって捜すでしょう」

 あのセリフは今なら自分が『名もなき英雄』であると口にするチャンスですよ、と俺に告げていた可能性に漸く気付かされる。

 しかし、あそこで告げていたら俺は国を相手に戦う事を公言した事になるだろうし、内容的にはトリルヴィは俺の味方になりそうな感じはするが、俺は言葉にはされてない含みを感じさせる内容が……と思っていると脱衣場から人の気配を感じて振り返った。

「お、お前等……」
「えへへっ、きちゃった♪」

 振り返った先に居たのはマロン達5人であった。

 しかも、真っ裸で前を隠す気もないらしく、本当に男らしいと言わんばかりに堂々と参上した。

 固まる俺を無視して駆け寄ってきたスイとキャウが湯船に浸かってる俺を引きずり出そうとし出す。

「さあさあ、先輩のお背中をお流ししますわ」
「ええ、ええ~、済んでても関係なくお流ししますねぇ~」
「おおぉーい! 待てぇぇ!」

 勿論、力ずくで抵抗も出来るが足場の悪いこの場所でして2人を怪我させる事を恐れて結局引きずり出される。

 こいつら、もう12歳だろ? さすがに恥じらいがあってしかるべきだろ!

 隣のスイを見ると真っ白なシミ一つない肌はとても綺麗でスベスベであるのが腕に抱き着かれるようにされているので伝わる。

 しかし、まだ凹凸はそこまではっきりとしておらず、俺は深い溜息を零す。

 これはギリ、耐えられるな……だがっ!

 反対側の柔らかく、そしてしっとりした者を押し付けてくるキャウ、そしてその背後にいるエルを同時に見てしまい、俺は涙を流す。

 べ、弁護士を呼んで欲しい……

 俺が目を向けた先には瑞々しいグレープフルーツが4つあり、内、2つは俺の二の腕に押し付けられている。

 こ、これはあかん……

 ん? なんか視線が集まってるような……

 左右にいるスイとキャウの視線が俺の股間に向かっている事に気付き、慌てて両手で隠そうとすると自分達の体を重りにするようにぶら下がるようにして阻止してくる。

 ……俺、まさに試されてないか?

 らめぇ、マイサン、今、おっきしちゃラメェェ!

 湯の滴以外の何かがダラダラと体を伝う俺を呆れた顔をしたスイ程ではないが白い肌を惜しみもせず晒すエルフのレティアが話しかける。

「何をジタバタしてるの? 馬鹿なの?」
「いや、バカなのはお前等だろ? 恥じらいを覚えたらどうだ」
「隠さないといけないものはないので」

 そう言って普段はポニーテールにしてる金髪を掻き上げるレティアの隣にやってきたマロンもお団子頭を崩してピンクの長い髪、想像してたより長い事を知らされる。

 マロンとレティアを見て俺は癒される。

 確かに普段と違い、髪を下ろした2人は少しは大人っぽくなったようにも見えるが……まっ平らな胸とちっちゃいお尻が俺を冷静にしてくれた。

「そのままの君達でいてくれ」
「なんか馬鹿にされてる気がする」

 最高の笑みで伝えたがどうやらレティアはご不満のようだ。

 しかし、不満だったのはレティアだけでなく、マイサンの動向を確認していたスイとキャウもそうだったようでふくれっ面になって洗い場へと連れ出され、椅子に座らされる。

「先輩、お背中お流ししますねぇ~」

 そうキャウが言うと5人総出で俺を洗い始める。

 キャウは背中、スイは右腕、レティアが左腕、エルが頭を洗い、マロンが正面にやってきたので胸を洗うのかと思えば何故か顔を洗いだした。

 タオルで擦るように洗って貰っていたがマロンが石鹸で俺の顔を洗いだし、目が開けてられなくなったと同時に背中と右腕に柔らかい感触が伝わる。

 っ!!!

 こ、これはまさかオパーイを擦りつけてないか!?

 位置的にやってるのはスイとキャウ……ここのところ行動が大胆になってきたからやりかねない2人だ。

 あかん、目を瞑ってるから余計に……このままじゃ、息子がおっきしちゃうぅ!

 逃げるに逃げられない俺が窮地に陥ってると何度となく俺の耳を擽った例のアレが聞こえる。

 ピコン

 ……ま、待ってたでぇ、相棒ぅ!


 勃起制御


 スキルポイントが10必要だったけど……これでお兄ちゃんの面子は守られる!



 それからしばらくして不貞腐れたスイとキャウは鼻の下まで湯船に浸かり、エルとレティアはお風呂を堪能していた。

 俺はマロンに頭を洗って欲しいとリクエストされて嘆息をしながら洗っていた。

 ワシャワシャとしているのに気持ち良さそうにするマロンを見てて、ふと思った。

 この5人のうち、レティアが良い勝負するが『名もなき英雄』に強い憧れを持つマロンについ聞いてしまいたくなった。

 表舞台に出てこない事をマロンはどう思っているのかと……

 今、思った事をそのままマロンに伝えてみるとマロンは腕組みして首を傾げながら答えてくれた。

「別に出てくる必要ないんじゃない?」
「どうしてだ? 誰かと分かればもっと救われるモノ、命があるかもしれないんだぞ?」
「そうだろうけどさ、でも、出てくる、出てこないを決めるのは『名もなき英雄』様であってアタシ達じゃない。『名もなき英雄』様は便利な道具じゃないもん」

 本当はアタシも『名もなき英雄』様に会いたいんだけどね、と恥ずかしそうに歯を見せる笑みを見せるマロンを見て衝撃を受ける。

 確かに利用されるという思いはあった。でも、その言葉だけではしっくりとはきていなかった。

 そんな俺に伝えてくれたマロンの『道具』という言葉に俺は「ああ、それか……」と口の中で呟く。

 道具、モノ扱いされるのが嫌で俺は『面倒』という言葉で片付けて逃げていたとしっかりと自覚した。

 お馬鹿だと思っていたマロンに核心を突かれた俺は苦笑しか出来ない。

 でも、俺が気付いてなかった問題に解答できたマロンに今回、思っていた事を聞いてみる。

「ずっと表舞台に出てこなかった『名もなき英雄』が名乗りを今更上げたらどう思う?」
「別に良いと思う。さっき言ったように決めるのは『名もなき英雄』様であると思うし、それが名誉の為、金の為でもそれは自由」
「そっか」
「……でもね? アタシは今までのように賢くない、不器用な生き方をする『名もなき英雄』様で居て欲しい」

 少し寂しそうに俯くマロンは「自由だけど、そんな理由で出てきたらアタシの中の『名もなき英雄』様は死んじゃうから」と告げるマロンを見て胸を締め付けられる。

 勿論、そんな理由で出てこようとは思った事もない。しかし、追い詰められるように格好悪い形で名乗りを上げるべきかと悩んだのは間違いはない。

 だが、マロンのように『名もなき英雄』に思いを寄せる者達には、ヒーローであり続ける為に情けない行動は取れないと強く自分に戒める。

 そう考え込む俺を振り返り覗き込むマロンが話しかけてくる。

「でも、アタシは自分の考えを『名もなき英雄』様に押し付けたいと思わない」
「そうか? 意外と『名もなき英雄』様は自分で決め切れない情けない奴かもしれないぞ?」
「アタシはそう思わない」

 俺を覗きこんでくるマロンの瞳は無垢でとても澄んでいた。

「『名もなき英雄』様はきっと、誰かの苦しみ、誰かの悲しみ、涙を流し、膝を折った人の前に現れる。自分の為には出てこない」
「会った事もないのに言い切れるのか?」
「だって、誰となく、誰にも強制されずに『英雄』と呼ばれる人はそういう人だから。言わされる『英雄』は道具だもん」

 マロンの言葉を聞いた俺は我慢出来ずに笑い始める。

 笑い始めた俺を見たマロンが馬鹿にされたと思ったようで文句を言おうと食い下がるが俺は頭からお湯をぶっかけて妨害する。

 ぷんすこ! と叫びそうな真っ赤な顔で頬を膨らませるマロンの頭を更に濯ぐ為にお湯をかけながら優しく髪を洗う。

 ありがとうな、マロン。なんとなく俺が進むべき先が見えた気がする。

 教わるより、教える側に立った時、学ぶ事が多いって話は本当だったんだな、と俺は無意識に口許を緩ませて笑みを浮かべた。


 一緒に帰ろうと言うのを断ってマロン達と風呂場の前で別れて、散歩するように歩くと気付くとルイーダさんの家の近くを通りかかると家の前でルイーダさんが立っていた。

 俺がルイーダさんの存在に気付くと優しげな笑みを浮かべたルイーダさんが俺に近寄り、掻き抱くようにして俺の顔を胸の谷間に埋めさせる。

「ちょ、ちょ」

 俺は慌てて優しくルイーダさんの背中をポンポンと叩いて放してと合図を送るが更に抱き締められる。

 困った俺だが、しばらくその体勢のままでいるとルイーダさんに囁かれた。

「貴方がどんな答えを出そうが、私、私達が傍にいる事は忘れないでくださいね?」

 そう言うとルイーダさんは俺を解放して、頬に優しくキスをすると「おやすみなさい」と告げて家へと入っていった。

 俺は色んな意味、恥ずかしさがメインの溜息を零す。

「俺って色んな人に心配され過ぎ、情けないな……」

 自嘲する笑みを浮かべる俺は家路へと足を向ける。

 帰り道、ルイーダさんに気付かれ、心配されたという事はと頬を掻きながら家に帰ると俺を優しい笑みで出迎えるターニャとパメラ。

 寝室に連れられるといつもとは違うゆっくりとした落ち着いた雰囲気で服を脱がされると2人に抱き着かれ、ベッドに寝かされる。

 2人から挟むように頬にキスをされると俺を抱き枕にするようにして「おやすみ」と寝始める。

 はっはは、いくら鈍感でも分かる。

 いつもなら押し倒すようにして始まるのに、何もせずに人肌を感じられるようにして寝る。

 明らかに俺を労わる2人の気持ちが強く伝わった。

 寝息を立てる2人に挟まれながら天井を見上げる俺は途中になっていた考え事を再開する。

 あの時、トリルヴィが含ませた言葉……

『男だったら覚悟を決めなさい』

 俺にはそう解釈出来た。

「覚悟か……」



 それから2日後、情報屋から伝言を預かったという人物から「話があるから来てくれ」という聞かされて俺は情報屋の下へと向かった。
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