ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

５章 表舞台へ、静かに階段を上る

幕間 王宮の一室で月明かりに照らされる

　薄暗い室内で動くモノが見える。

　それは長い腰に届く美しい黒髪を揺らしつつ、白い肌が月明かりに照らされながら上下に動く。

　耳を凝らすとピチャやクチャと水音が聞こえてくる。

　どうやら２人いるらしく男の上に跨った女のようだ。

　黒髪を揺らす女はとても整った顔をしているが切れ長の目がそう感じさせるのか畏怖を感じさせる。良く言えばクールビューティだ。

「はっ、あ、ああん、とても素敵ですカクキ殿下ぁ～」

　薄らと頬を紅潮させた女が腰をくねらせながらも上下運動を止めずに目の前で寝そべている男、第二王子であるカクキに語りかける。

　豊かの乳房が揺れるのを見ながら下卑た笑みを浮かべたカクキが告げる。

「オヤジより俺様の方がいいだろ？」
「殿下、今は言わないでぇ……あんっ」

　女が答えるのと同時に腰を突き上げるカクキ。

　突き上げられた女が一瞬硬直し、弛緩するとカクキの胸へと倒れていき身を預ける。

　だが、カクキがそのまま腰を突きあげ始めるのに合わせて再び身を起こす女は翻弄されるように身を小刻みに揺らす。

「さあ、俺様がいいと言え、シャルテ！」
「ああっ、殿下、殿下ぁ～」

　白い肌に浮かぶ汗、そして先程よりも激しく揺れる黒髪。

　女、シャルテが声を上げる。

　嬌声と水音が夜の帳に吸い込まれていく。



　それからしばらく時間が経過し、ベッドで眠る２人だったがシャルテだけが身を起こし裸体にシーツを纏いベッドから降りる。

　ベッドから降りたシャルテはベッドで眠るカクキを一瞥し、失笑を見せるとすぐに興味を失ったかのように窓に顔を向ける。

　ベランダに続く窓に近づきゆっくりと開け放つ。

「男って単純。女を支配してると思って満足してるのだから」

　シャルテは親子揃って同じ事を言っている事を思い出しクスッと小馬鹿にしたように笑う。

　開け放たれた窓からベランダに出るシャルテは闇夜に浮かぶ月を眺めながら呟く。

「やっと『名もなき英雄』を引きずり出す事に成功したわね」

　シャルテはワイバーン事件、先に起こったフェレチオ子爵の暴動の裏で全て紐を引いていた。

　全ては『名もなき英雄』であるシーナを引きずり出す為の策略であった。

　正直、無駄に大掛かりな事をしていた事はシャルテ自身も気付いていたがシーナに関する情報がまったくない。いや、正確に言うなら情報を集めれば集める程シーナという人物に到着しなかったのである。

　それに苦虫を噛まされ続けたシャルテはシーナがこちらが想定するよりキレ者なのかと想定していた。
　しかし、残念な話であるが、シーナはキレ者ではないしはっきりというならお馬鹿さんである。

　それなのに翻弄し続けたのはプリットの情報屋、それを取り巻く者達がシーナにも理解出来ない理由で恩を感じた情報操作の賜物であった。

　なのでシャルテがはっきりと分かっているのはプリットにいるというのが濃厚だという事実のみでこんなやり口でいぶり出すしかなかった訳だ。

　シーナが持つゴブリン神の宝玉を手にする為に。

「英雄と持て囃されて踊るバカだったら楽だったのでしょうけどね」

　そうだったら一度ぐらい自分が可愛がってあげたのにと妖艶な笑みを浮かべて唇に指をなぞらせる。

　巷で語られるように無欲な英雄とシャルテも勘違いしていた。本当は目立つのが嫌というただの小市民でただのスケベな男である事を知らない。

「どうしても必要なゴブリン神の宝玉を隠蔽するなんて……有り得ないと思うけどその理由も感づいている？」

　繰り返しになるが繰り返そう。

　シーナはお馬鹿さんでキレ者ではない。

　シャルテは月を睨むようにして忌々しげに呟く。

「他のモノは代用がきくけどゴブリン神、いえ、神の名を冠する宝玉は外せない」

　神の名を冠する宝玉は１つしか存在しない。

　モンスターのキングを超える存在に生まれる可能性があり、今回はたまたまゴブリンだっただけでオークだったりスライムの可能性だってあったのだ。

　しかも一度存在すると他が生まれず、倒しても数百年は生まれない。

　先程まで忌々しげに見てた月にうって変わって笑みを浮かべるシャルテ。

「でも引きずり出す事は成功した。さあ来なさい『名もなき英雄』よ。王都は貴方にとってアウェー。王都の国民は私の手足、下僕。貴方が多少出来る男だとしてもこの数の暴力に飲み込まれるのを高みの見物をしてあげるわ」

　両手を広げ、羽織っていたシーツが落ちる。

「この唯一絶対神シズクの使徒である巫女シャルテの下へ」

　見事な肢体を晒し月光浴するようにして笑みを、いや、巫女とは思えない冷笑を浮かべるシャルテは月明かりに目を細めた。