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プロローグ: 因習村の狐神2
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仁は父が購入した別宅に一人住んでいるらしい。
商社を営む彼の父は、拠点の日本に彼を置いて、妻と異国を飛び回っているそうだ。
俺は仁に誘われるがまま別宅へと向かう事にした。
部屋の調度品は綺麗にまとまり、優美さよりも実用性を重視した、まさに学者らしい無機質な部屋であった。
応接室に促され、高級そうなカップとソーサーで茶を出された。
錆色だが不思議な香りで、英国でよく飲まれているとの事だった。
「改めて自己紹介するが、俺は池内宗太郎と言って、武家出身の元軍人だ。見ての通り、左目が見えねぇ。一応体力や腕力には自信があるんだが……」
「そのあたりは問題ありません。事前調査済みです」
あの阿久津が俺の情報を渡していないはずないもんな。
俺は出された茶をすする。
何だ、意外と美味いじゃないか。
「外だから詳しく聞けなかったけどよ、なんだってあんな依頼引き受けたんだ?見たところ金に困っているようでもないし」
「阿久津さんに紹介いただいた通り、私は民俗学を主に研究しています。最近では近代化で昔の風習が薄れ行きつつありますから、その保全活動が主です。それとは別に、あの村の狐神について前から気になっていたのですが、個人的な興味に国家予算を使う訳にはいきませんし、一人で調べる事ができるほど裕福ではありませんから、研究室に協力依頼が来た時は正に渡りに船でした」
先程見せられた絵巻も、かなり苦労をして手に入れたそうだ。門外不出の村を調べるには個人ではどうにもならない事も多いのだろう。
「なる程、そりゃおかしな条件でも手を挙げる訳だ。それで、どこまで村について分かったんだ?」
すると、仁が不思議そうな顔をした。
「あなたは私が見初めた、村とは関係のない出自の夫という設定ですので、詳しい情報は必要がないのではないでしょうか?」
この男は嫌味ではなく、本気で何のために?と思っているらしかった。
「アンタ、学者先生のくせに文武両道という言葉を知らないのか?俺は当てずっぽうに攻め込むタチじゃねえんだよ。しっかり戦略を立てて相手の弱点を見据えて挑みたいんだ。不安要素を事前に潰さねえと、勝てるものも勝てない。戦いというものは力が全てではないんだ」
「なるほど、納得できる回答です。不確定要素も多いのですが、わかる範囲で共有させていただきます」
先ほど阿久津からも説明があった通り、あの村の若者に兵役の通達が送られた。
すると、3日後に母親から彼を含む5人の15歳~20歳の若者が忽然と姿を消したと警察へ通報があった。
「随分と早いな」
「はい。準備もなく、人目につかないように村を出る必要がありますよね。それに、彼らはあの村内で婚姻しているため親族の殆どはあの村に居るので、外への手引きが難しい。それなのに、彼らが近隣の宿に泊まったという形跡もないそうです」
警察は、近隣の村や集落に聞き込みをしたが、だれも知らないという。
すると村の長老が、お狐様が助けてくださったのだ。と騒ぎ始めたのだそうだ。
昔、あの村は疫病や災害により飢饉が発生し、一時期は半分以上の村人が亡くなったというのだ。
そんな時現れたのが、狐神である。
「あの神は少し変わっていまして、最初は悪戯をする悪い神様だと言われていたそうです」
狐神は、元は子どもを連れ去ってしまう悪い神だった。だが水害が発生した時、連れ去られた子ども達は災害から守られ、全員無事だったというのだ。
「村人達は、神に感謝し共生の方法を模索したそうです」
「都合のいい話だな」
そこからはさっき見た絵巻の通り、狐神が村の再生に尽力していた。
「これは、狐神様が身籠る為のまぐわいの義です」
大きな焚き火の前で男と絡み合い、その周りには複数の目が向けられていた。
「村全員で見てんのか?悪趣味な」
しかし、身籠った狐神は村を去ってしまった。
「神様はどこ行っちまったんだ?」
「それが分からないのです。この結末、違和感があると思いませんか?私は本当の結末は歴史に葬り去られたのではないかと考えているんです」
「村中に行為の監視されちゃあ、誰だって逃げたくもなるってもんだ」
「では、何故身籠った後に逃げたのでしょうか」
商社を営む彼の父は、拠点の日本に彼を置いて、妻と異国を飛び回っているそうだ。
俺は仁に誘われるがまま別宅へと向かう事にした。
部屋の調度品は綺麗にまとまり、優美さよりも実用性を重視した、まさに学者らしい無機質な部屋であった。
応接室に促され、高級そうなカップとソーサーで茶を出された。
錆色だが不思議な香りで、英国でよく飲まれているとの事だった。
「改めて自己紹介するが、俺は池内宗太郎と言って、武家出身の元軍人だ。見ての通り、左目が見えねぇ。一応体力や腕力には自信があるんだが……」
「そのあたりは問題ありません。事前調査済みです」
あの阿久津が俺の情報を渡していないはずないもんな。
俺は出された茶をすする。
何だ、意外と美味いじゃないか。
「外だから詳しく聞けなかったけどよ、なんだってあんな依頼引き受けたんだ?見たところ金に困っているようでもないし」
「阿久津さんに紹介いただいた通り、私は民俗学を主に研究しています。最近では近代化で昔の風習が薄れ行きつつありますから、その保全活動が主です。それとは別に、あの村の狐神について前から気になっていたのですが、個人的な興味に国家予算を使う訳にはいきませんし、一人で調べる事ができるほど裕福ではありませんから、研究室に協力依頼が来た時は正に渡りに船でした」
先程見せられた絵巻も、かなり苦労をして手に入れたそうだ。門外不出の村を調べるには個人ではどうにもならない事も多いのだろう。
「なる程、そりゃおかしな条件でも手を挙げる訳だ。それで、どこまで村について分かったんだ?」
すると、仁が不思議そうな顔をした。
「あなたは私が見初めた、村とは関係のない出自の夫という設定ですので、詳しい情報は必要がないのではないでしょうか?」
この男は嫌味ではなく、本気で何のために?と思っているらしかった。
「アンタ、学者先生のくせに文武両道という言葉を知らないのか?俺は当てずっぽうに攻め込むタチじゃねえんだよ。しっかり戦略を立てて相手の弱点を見据えて挑みたいんだ。不安要素を事前に潰さねえと、勝てるものも勝てない。戦いというものは力が全てではないんだ」
「なるほど、納得できる回答です。不確定要素も多いのですが、わかる範囲で共有させていただきます」
先ほど阿久津からも説明があった通り、あの村の若者に兵役の通達が送られた。
すると、3日後に母親から彼を含む5人の15歳~20歳の若者が忽然と姿を消したと警察へ通報があった。
「随分と早いな」
「はい。準備もなく、人目につかないように村を出る必要がありますよね。それに、彼らはあの村内で婚姻しているため親族の殆どはあの村に居るので、外への手引きが難しい。それなのに、彼らが近隣の宿に泊まったという形跡もないそうです」
警察は、近隣の村や集落に聞き込みをしたが、だれも知らないという。
すると村の長老が、お狐様が助けてくださったのだ。と騒ぎ始めたのだそうだ。
昔、あの村は疫病や災害により飢饉が発生し、一時期は半分以上の村人が亡くなったというのだ。
そんな時現れたのが、狐神である。
「あの神は少し変わっていまして、最初は悪戯をする悪い神様だと言われていたそうです」
狐神は、元は子どもを連れ去ってしまう悪い神だった。だが水害が発生した時、連れ去られた子ども達は災害から守られ、全員無事だったというのだ。
「村人達は、神に感謝し共生の方法を模索したそうです」
「都合のいい話だな」
そこからはさっき見た絵巻の通り、狐神が村の再生に尽力していた。
「これは、狐神様が身籠る為のまぐわいの義です」
大きな焚き火の前で男と絡み合い、その周りには複数の目が向けられていた。
「村全員で見てんのか?悪趣味な」
しかし、身籠った狐神は村を去ってしまった。
「神様はどこ行っちまったんだ?」
「それが分からないのです。この結末、違和感があると思いませんか?私は本当の結末は歴史に葬り去られたのではないかと考えているんです」
「村中に行為の監視されちゃあ、誰だって逃げたくもなるってもんだ」
「では、何故身籠った後に逃げたのでしょうか」
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