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プロローグ:仮初夫婦
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「さて、宗太郎さんは男性同士の睦み合う方法をご存知ですか?」
この男、話題の出し方が毎度毎度唐突すぎやしないか。
「知るわけがないだろう。俺は女の相手しかした事がないんだから」
「後ろの孔を使います」
仁はポケットから禍々しい形状の棒のようなものを取り出した。
「何でそんなもん持ち歩いてんだ!」
まさか、さっき話していた時も持ってたってのか?常に持ち歩いてないよな……?
仁は何やら細々と描かれた用紙を机に並べる。男児がしゃがみ込み、尻に手を当てている。
「かの有名な信長公も小姓と衆道の関係にあったとされています」
「はぁ」
唐突に信長公の話になり、俺は突っ込むのを諦めた。
「女体とは異なり、ここは本来受け入れる場所ではありません。小姓達は張形を使用して、拡張するという涙ぐましい努力を行っていたのです。全ては尊敬する主君の為。そして、それが一種の文化的慣例として認められていたのも非常に興味深い」
「なるほど」
「子を成せる行為ではないのに、それがかえって倒錯的で実に魅力を感じますね。それなのに狐隠村は男性型な神である上に、本来の狐らしい五穀豊穣ではなく子孫繁栄として祀られているんです。それは神として職務を全うできているのでしょうか。邪神でもないんですよ?とても特異で興味が尽きません」
「そうかい」
「日本だけではなく、世界中に男根を模した巨像を崇拝する地域があり、その多くが子宝にまつわる……」
「ちょっと待った」
仁はハッとした顔をして、申し訳なさそうに謝意を述べた。
「すみません、つい夢中になってしまって」
「アンタ、変わり者だと言われるだろう。学者っつうのはみんなこんな感じなのか?」
「私は……確かに普通とは違うと言われますが、結果を残せば問題ないと自負しています」
「おまえさん、誰かと飯を食う時もこうなのか?」
「食事は静かに取るものですよ」
俺は絶句し、何も言えなくなってしまった。
「本題に入ります。我々は夫婦ですから、衆道に限りなく近い行為をしなければなりません」
仁は奥から恋人同士の仲睦まじい様子を描いた絵を持ち出した。
「まずはここから始めましょう。夫婦であれば、この程度の接触は日常的であるはずです。さあ、私の手を握り、指を絡めてください」
たった手を握るだけ?そう思ったが、あまりに仁が真剣な様子なので何も言えないでいた。
宗太郎がゴツゴツした手で握り返すと、仁の体が一瞬ビクンと強ばる。
「……手の温度が、予想より高いですね。豆も硬くなって……」
仁の耳が後ろまで赤くなっている。
「おい、そんな調子で大丈夫なのか?」
「問題ありません。オールクリアです」
***
にぎにぎと指を絡ませ、少しずつ雑談を始めた。
「ところで、もう剣術はされていないのですか?」
「阿久津から聞いたのか?ああ、やはり目をやっちまうとな。それに、厳しい厳しい親父様の事を思い出してどうもいけねぇ」
仁が少し残念そうな顔をした。
「私は武道なんてからっきしですから、出来る方を尊敬します」
「俺だって、何かに集中する好奇心みたいなもんは凄いなと思ったぜ?」
「武士も学者も、向いている方向が違うだけで、どちらも根気の使い方は一緒だと思っています。現にあなたも私も、目的を成し遂げる為に労力を苦としません。一つの事に集中する様は、非常に近しいと感じます。我々は似た者同士だと思いませんか?」
「似ているかはさておき、分からんでもないな」
俺は既に、仁の学者としての集中力は認めていた。
そう言えば、俺も稽古に集中するあまり、夜中までやっているもんだから、教える側がぶっ倒れちまうと親父にも怒られたっけ。
「私達、上手くやれる気がします。これからよろしくお願いしますね、宗太郎さん」
この男、話題の出し方が毎度毎度唐突すぎやしないか。
「知るわけがないだろう。俺は女の相手しかした事がないんだから」
「後ろの孔を使います」
仁はポケットから禍々しい形状の棒のようなものを取り出した。
「何でそんなもん持ち歩いてんだ!」
まさか、さっき話していた時も持ってたってのか?常に持ち歩いてないよな……?
仁は何やら細々と描かれた用紙を机に並べる。男児がしゃがみ込み、尻に手を当てている。
「かの有名な信長公も小姓と衆道の関係にあったとされています」
「はぁ」
唐突に信長公の話になり、俺は突っ込むのを諦めた。
「女体とは異なり、ここは本来受け入れる場所ではありません。小姓達は張形を使用して、拡張するという涙ぐましい努力を行っていたのです。全ては尊敬する主君の為。そして、それが一種の文化的慣例として認められていたのも非常に興味深い」
「なるほど」
「子を成せる行為ではないのに、それがかえって倒錯的で実に魅力を感じますね。それなのに狐隠村は男性型な神である上に、本来の狐らしい五穀豊穣ではなく子孫繁栄として祀られているんです。それは神として職務を全うできているのでしょうか。邪神でもないんですよ?とても特異で興味が尽きません」
「そうかい」
「日本だけではなく、世界中に男根を模した巨像を崇拝する地域があり、その多くが子宝にまつわる……」
「ちょっと待った」
仁はハッとした顔をして、申し訳なさそうに謝意を述べた。
「すみません、つい夢中になってしまって」
「アンタ、変わり者だと言われるだろう。学者っつうのはみんなこんな感じなのか?」
「私は……確かに普通とは違うと言われますが、結果を残せば問題ないと自負しています」
「おまえさん、誰かと飯を食う時もこうなのか?」
「食事は静かに取るものですよ」
俺は絶句し、何も言えなくなってしまった。
「本題に入ります。我々は夫婦ですから、衆道に限りなく近い行為をしなければなりません」
仁は奥から恋人同士の仲睦まじい様子を描いた絵を持ち出した。
「まずはここから始めましょう。夫婦であれば、この程度の接触は日常的であるはずです。さあ、私の手を握り、指を絡めてください」
たった手を握るだけ?そう思ったが、あまりに仁が真剣な様子なので何も言えないでいた。
宗太郎がゴツゴツした手で握り返すと、仁の体が一瞬ビクンと強ばる。
「……手の温度が、予想より高いですね。豆も硬くなって……」
仁の耳が後ろまで赤くなっている。
「おい、そんな調子で大丈夫なのか?」
「問題ありません。オールクリアです」
***
にぎにぎと指を絡ませ、少しずつ雑談を始めた。
「ところで、もう剣術はされていないのですか?」
「阿久津から聞いたのか?ああ、やはり目をやっちまうとな。それに、厳しい厳しい親父様の事を思い出してどうもいけねぇ」
仁が少し残念そうな顔をした。
「私は武道なんてからっきしですから、出来る方を尊敬します」
「俺だって、何かに集中する好奇心みたいなもんは凄いなと思ったぜ?」
「武士も学者も、向いている方向が違うだけで、どちらも根気の使い方は一緒だと思っています。現にあなたも私も、目的を成し遂げる為に労力を苦としません。一つの事に集中する様は、非常に近しいと感じます。我々は似た者同士だと思いませんか?」
「似ているかはさておき、分からんでもないな」
俺は既に、仁の学者としての集中力は認めていた。
そう言えば、俺も稽古に集中するあまり、夜中までやっているもんだから、教える側がぶっ倒れちまうと親父にも怒られたっけ。
「私達、上手くやれる気がします。これからよろしくお願いしますね、宗太郎さん」
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