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学園2
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列車が減速を始めた。
つ、ついに到着するのか。
飛び級とは言え、ドキドキワクワク魔法学園生活に変わりはないのだ。聖地巡礼できる事には変わりないのだ。
ちょっとくらいイベントが減るだけなのだ。
生徒は全員男の子な男子校だから質実剛健。"配慮"も仕方ないのだ。
こちらのレイニーは友達を作る気はなさそうな事が気がかりだが、気にする事はない。
何を悲しむ事があろうか。
「おい、コレつけとけ」
フスフスと鼻息荒くしている所に、レイニーが紫色の石のついた首輪を付けてきた。
「ん?これ、レイニーのお母さんが渡してくれたやつ!僕が付けていいの?大事なモノなんじゃない?」
ひー。こんな凄そうな石、付けるの怖いよ。絶対高価なやつだ。
「俺もまじないかけといた。むしろお前に必要なんだよ」
「え、なんで?」
「……本当は俺が渡せたらよかったのに、イラつくって事」
「???」
ひょいと抱き上げられるといつもの鞄に入れられた。
「お前、人前では前みたいに使い魔らしくしてろよ」
使い魔らしくとは?カタコトで喋るとか、もっと獣っぽくと言う事?
「な、なんで?」
せっかく流暢な会話ができるのだ。レイニーの使い魔としてあわよくば登場人物と交流したい。裏話とか聞きたいのに。
「いいから、言う通りにしろ!」
レイニーが耳の後ろをカリカリと掻いてくる。毎度の事ながら犬の本能には逆らえない。
「あ、あっ、あふっ、分かりましたぁ」
「普通は使い魔がここまで意思疎通ができる事なんてないから、捕まって研究機関に連れて行かれても知らないぞ」
「ひ!」
それは困る。転生なんて証明しようがない事で捕まってしまっては、一生逃げられないだろう。
僕は数多の管に繋がれ白衣の人々に採血される怯えた黒ポメを想像した。
このレイニーがいつもブラッシングしてくれている艶やかな毛並みも、丸刈りにされてしまうかもしれない。
「分かったら学園生活は俺から離れず勝手な行動はしない事。いいな?」
「はぁ~い」
仕方ない。聖地巡礼はレイニーについていけばできるし、まあいいか。
***
「ふわぁああ……」
憧れの校門をくぐり、ついにあの!魔法学園へ到着した。
受付で名前と招待状を出すと鍵を渡される。荷物は先に届けてある事、その他軽い注意事項を説明され、レイニーは宿舎へ向かった。
「今日は部屋に行くだけなんだから。あんま興奮すんな」
そんな事言いながら、いつもよりゆっくり歩いて景色を堪能させてくれている。
わ、あれは箒の練習をしていたグラウンド!!
レイニーはもう箒に乗れるからここに来る事は無いだろうし、今のうちに目に焼き付けておこう。
その時だった。
『─────』
ゾク……。
???
なんだろう、今の感じ。
ぴこぴこフリフリ大興奮の黒ポメ尻尾がシュンとなる。
「どうかしたか?」
いけない。心配させてしまった。
「……なんでもない」
「そうか」
レイニーにちょっと乱暴に撫でられ、僕たちは自室へ向かった。
***
「ふおお……凄い!イメージ通りの雰囲気だ!!」
レイニーに与えられた部屋は、僕がよく知る原作のレイニー・ザ・ウィザードそのままだった。
キルティングのクッションに、石壁をくり抜いたような窓。
脚の太めな木のテーブルに、アースカラーのラグが敷いてある。
元々二人部屋のダブルベッドの上段を取っ払っただけのようで、広さは申し分ない。
「この木のテーブル、すごく丈夫なんだ!魔法薬の課題をしている時にうっかり液体をこぼしてしまうんだけど……」
「フッ……」
レイニーに笑われてしまった。コレだからオタクは……と呆れられているのだろうか。
目をキラキラさせて、尻尾フリフリなポメが自分は人間だと言い張っているのだからレイニーからしたら滑稽に違いない。
「元気そうだな」
「あ。うん。さっきのは本当、なんでもないよ」
「じゃあ、少し片付けたらメシにしよう。さっき運ばれて来たみたいであったかいうちに食べたい」
「う、うおおー!これってニンフが届けてくれたんじゃ!?」
レイニー・ザ・ウィザード設定集で見たやつ!!学校の敷地内にはニンフが居て、用務員のような事をしてくれる。
ニンフは恥ずかしがり屋だから、滅多に人前に姿を現さないらしい。
「やかましい!早くメシにするぞ」
そんなこんなで学園生活、プロローグ編は無事終了したのだった。
その日の夜……。
「……っ」
お腹の奥がムズムズする。身体も妙な感じだ。
全身が重くて動けない。
側に誰かいる気配がする。
「……っ!、っ!!」
必死になって声を絞り出したが、音にすらなっていない。
「─────」
誰かが喋っている。
不思議と怖くはなかった。
つ、ついに到着するのか。
飛び級とは言え、ドキドキワクワク魔法学園生活に変わりはないのだ。聖地巡礼できる事には変わりないのだ。
ちょっとくらいイベントが減るだけなのだ。
生徒は全員男の子な男子校だから質実剛健。"配慮"も仕方ないのだ。
こちらのレイニーは友達を作る気はなさそうな事が気がかりだが、気にする事はない。
何を悲しむ事があろうか。
「おい、コレつけとけ」
フスフスと鼻息荒くしている所に、レイニーが紫色の石のついた首輪を付けてきた。
「ん?これ、レイニーのお母さんが渡してくれたやつ!僕が付けていいの?大事なモノなんじゃない?」
ひー。こんな凄そうな石、付けるの怖いよ。絶対高価なやつだ。
「俺もまじないかけといた。むしろお前に必要なんだよ」
「え、なんで?」
「……本当は俺が渡せたらよかったのに、イラつくって事」
「???」
ひょいと抱き上げられるといつもの鞄に入れられた。
「お前、人前では前みたいに使い魔らしくしてろよ」
使い魔らしくとは?カタコトで喋るとか、もっと獣っぽくと言う事?
「な、なんで?」
せっかく流暢な会話ができるのだ。レイニーの使い魔としてあわよくば登場人物と交流したい。裏話とか聞きたいのに。
「いいから、言う通りにしろ!」
レイニーが耳の後ろをカリカリと掻いてくる。毎度の事ながら犬の本能には逆らえない。
「あ、あっ、あふっ、分かりましたぁ」
「普通は使い魔がここまで意思疎通ができる事なんてないから、捕まって研究機関に連れて行かれても知らないぞ」
「ひ!」
それは困る。転生なんて証明しようがない事で捕まってしまっては、一生逃げられないだろう。
僕は数多の管に繋がれ白衣の人々に採血される怯えた黒ポメを想像した。
このレイニーがいつもブラッシングしてくれている艶やかな毛並みも、丸刈りにされてしまうかもしれない。
「分かったら学園生活は俺から離れず勝手な行動はしない事。いいな?」
「はぁ~い」
仕方ない。聖地巡礼はレイニーについていけばできるし、まあいいか。
***
「ふわぁああ……」
憧れの校門をくぐり、ついにあの!魔法学園へ到着した。
受付で名前と招待状を出すと鍵を渡される。荷物は先に届けてある事、その他軽い注意事項を説明され、レイニーは宿舎へ向かった。
「今日は部屋に行くだけなんだから。あんま興奮すんな」
そんな事言いながら、いつもよりゆっくり歩いて景色を堪能させてくれている。
わ、あれは箒の練習をしていたグラウンド!!
レイニーはもう箒に乗れるからここに来る事は無いだろうし、今のうちに目に焼き付けておこう。
その時だった。
『─────』
ゾク……。
???
なんだろう、今の感じ。
ぴこぴこフリフリ大興奮の黒ポメ尻尾がシュンとなる。
「どうかしたか?」
いけない。心配させてしまった。
「……なんでもない」
「そうか」
レイニーにちょっと乱暴に撫でられ、僕たちは自室へ向かった。
***
「ふおお……凄い!イメージ通りの雰囲気だ!!」
レイニーに与えられた部屋は、僕がよく知る原作のレイニー・ザ・ウィザードそのままだった。
キルティングのクッションに、石壁をくり抜いたような窓。
脚の太めな木のテーブルに、アースカラーのラグが敷いてある。
元々二人部屋のダブルベッドの上段を取っ払っただけのようで、広さは申し分ない。
「この木のテーブル、すごく丈夫なんだ!魔法薬の課題をしている時にうっかり液体をこぼしてしまうんだけど……」
「フッ……」
レイニーに笑われてしまった。コレだからオタクは……と呆れられているのだろうか。
目をキラキラさせて、尻尾フリフリなポメが自分は人間だと言い張っているのだからレイニーからしたら滑稽に違いない。
「元気そうだな」
「あ。うん。さっきのは本当、なんでもないよ」
「じゃあ、少し片付けたらメシにしよう。さっき運ばれて来たみたいであったかいうちに食べたい」
「う、うおおー!これってニンフが届けてくれたんじゃ!?」
レイニー・ザ・ウィザード設定集で見たやつ!!学校の敷地内にはニンフが居て、用務員のような事をしてくれる。
ニンフは恥ずかしがり屋だから、滅多に人前に姿を現さないらしい。
「やかましい!早くメシにするぞ」
そんなこんなで学園生活、プロローグ編は無事終了したのだった。
その日の夜……。
「……っ」
お腹の奥がムズムズする。身体も妙な感じだ。
全身が重くて動けない。
側に誰かいる気配がする。
「……っ!、っ!!」
必死になって声を絞り出したが、音にすらなっていない。
「─────」
誰かが喋っている。
不思議と怖くはなかった。
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