レイニー・ザ・ウィザード〜魔法使いレイニーと犬になった僕〜

メカラウロ子

文字の大きさ
5 / 15

学園2

しおりを挟む
列車が減速を始めた。

つ、ついに到着するのか。

飛び級とは言え、ドキドキワクワク魔法学園生活に変わりはないのだ。聖地巡礼できる事には変わりないのだ。

ちょっとくらいイベントが減るだけなのだ。
生徒は全員男の子な男子校だから質実剛健。"配慮"も仕方ないのだ。

こちらのレイニーは友達を作る気はなさそうな事が気がかりだが、気にする事はない。

何を悲しむ事があろうか。

「おい、コレつけとけ」

フスフスと鼻息荒くしている所に、レイニーが紫色の石のついた首輪を付けてきた。

「ん?これ、レイニーのお母さんが渡してくれたやつ!僕が付けていいの?大事なモノなんじゃない?」

ひー。こんな凄そうな石、付けるの怖いよ。絶対高価なやつだ。

「俺もまじないかけといた。むしろお前に必要なんだよ」

「え、なんで?」

「……本当は俺が渡せたらよかったのに、イラつくって事」

「???」

ひょいと抱き上げられるといつもの鞄に入れられた。

「お前、人前では前みたいに使い魔らしくしてろよ」

使い魔らしくとは?カタコトで喋るとか、もっと獣っぽくと言う事?

「な、なんで?」

せっかく流暢な会話ができるのだ。レイニーの使い魔としてあわよくば登場人物と交流したい。裏話とか聞きたいのに。

「いいから、言う通りにしろ!」

レイニーが耳の後ろをカリカリと掻いてくる。毎度の事ながら犬の本能には逆らえない。

「あ、あっ、あふっ、分かりましたぁ」

「普通は使い魔がここまで意思疎通ができる事なんてないから、捕まって研究機関に連れて行かれても知らないぞ」

「ひ!」

それは困る。転生なんて証明しようがない事で捕まってしまっては、一生逃げられないだろう。
僕は数多の管に繋がれ白衣の人々に採血される怯えた黒ポメを想像した。

このレイニーがいつもブラッシングしてくれている艶やかな毛並みも、丸刈りにされてしまうかもしれない。

「分かったら学園生活は俺から離れず勝手な行動はしない事。いいな?」

「はぁ~い」

仕方ない。聖地巡礼はレイニーについていけばできるし、まあいいか。


***


「ふわぁああ……」

憧れの校門をくぐり、ついにあの!魔法学園へ到着した。

受付で名前と招待状を出すと鍵を渡される。荷物は先に届けてある事、その他軽い注意事項を説明され、レイニーは宿舎へ向かった。

「今日は部屋に行くだけなんだから。あんま興奮すんな」

そんな事言いながら、いつもよりゆっくり歩いて景色を堪能させてくれている。

わ、あれは箒の練習をしていたグラウンド!!
レイニーはもう箒に乗れるからここに来る事は無いだろうし、今のうちに目に焼き付けておこう。

その時だった。

『─────』

ゾク……。

???

なんだろう、今の感じ。
ぴこぴこフリフリ大興奮の黒ポメ尻尾がシュンとなる。

「どうかしたか?」

いけない。心配させてしまった。

「……なんでもない」

「そうか」

レイニーにちょっと乱暴に撫でられ、僕たちは自室へ向かった。


***


「ふおお……凄い!イメージ通りの雰囲気だ!!」

レイニーに与えられた部屋は、僕がよく知る原作のレイニー・ザ・ウィザードそのままだった。

キルティングのクッションに、石壁をくり抜いたような窓。
脚の太めな木のテーブルに、アースカラーのラグが敷いてある。

元々二人部屋のダブルベッドの上段を取っ払っただけのようで、広さは申し分ない。

「この木のテーブル、すごく丈夫なんだ!魔法薬の課題をしている時にうっかり液体をこぼしてしまうんだけど……」

「フッ……」

レイニーに笑われてしまった。コレだからオタクは……と呆れられているのだろうか。

目をキラキラさせて、尻尾フリフリなポメが自分は人間だと言い張っているのだからレイニーからしたら滑稽に違いない。

「元気そうだな」

「あ。うん。さっきのは本当、なんでもないよ」

「じゃあ、少し片付けたらメシにしよう。さっき運ばれて来たみたいであったかいうちに食べたい」

「う、うおおー!これってニンフが届けてくれたんじゃ!?」

レイニー・ザ・ウィザード設定集で見たやつ!!学校の敷地内にはニンフが居て、用務員のような事をしてくれる。

ニンフは恥ずかしがり屋だから、滅多に人前に姿を現さないらしい。

「やかましい!早くメシにするぞ」

そんなこんなで学園生活、プロローグ編は無事終了したのだった。


その日の夜……。

「……っ」

お腹の奥がムズムズする。身体も妙な感じだ。
全身が重くて動けない。

側に誰かいる気配がする。

「……っ!、っ!!」

必死になって声を絞り出したが、音にすらなっていない。

「─────」

誰かが喋っている。

不思議と怖くはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【8話完結】俺は推しじゃない!ただの冒険者だ!

キノア9g
BL
ごく普通の中堅冒険者・イーサン。 今日もほどほどのクエストを探しにギルドを訪れたところ、見慣れない美形の冒険者・アシュレイと出くわす。 最初は「珍しい奴がいるな」程度だった。 だが次の瞬間── 「あなたは僕の推しです!」 そう叫びながら抱きついてきたかと思えば、つきまとう、語りかける、迫ってくる。 挙句、自宅の前で待ち伏せまで!?  「金なんかねぇぞ!」 「大丈夫です! 僕が、稼ぎますから!」 平穏な日常をこよなく愛するイーサンと、 “推しの幸せ”のためなら迷惑も距離感も超えていく超ポジティブ転生者・アシュレイ。 愛とは、追うものか、追われるものか。 差し出される支援、注がれる好意、止まらぬ猛アプローチ。 ふたりの距離が縮まる日はくるのか!? 強くて貢ぎ癖のあるイケメン転生者 × 弱めで普通な中堅冒険者。 異世界で始まる、ドタバタ&ちょっぴり胸キュンなBLコメディ、ここに開幕! 全8話

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...