レイニー・ザ・ウィザード〜魔法使いレイニーと犬になった僕〜

メカラウロ子

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学園生活

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いよいよ授業が始まる……のだけれど、こうなるともはや原作は意味をなさない。

飛び級になったレイニーは、上級生ばかりの教室で、ぽつんと一人後ろの方に座っている。

他の生徒たちは、一学年から共に成長してきた仲間で顔見知りだからグループができている。

ただでさえ打ち解けにくい環境だってのに、レイニーは相変わらずツンツンして、せっかく声をかけてくれた先輩達を丁重に断っていた。

それでいて、レイニーは選択授業も取っていない。一年前に次年度の教科を選ぶから今年は総合科目のみ。

教師陣側から馴染めないのではないかと心配されたが本人たっての希望だからそれ以上何も言えないのだ。

「オトコ喰ってやらなくていいのか、レイニー」

「こんな閉鎖的な環境で、誰彼構わず手を出したら妙な噂になるだろ」

僕の考えが口に出てしまったようだ。

「でも、友情から恋に変わるとか、キュンキュンなラブとか、体験したいって思わない?せっかくの学園生活なのに」

「別に、本当に好きな人に愛されなきゃ意味がないだろ」

「かわいーなぁ、レイニー君はッ!!男ってのは好きでなくても抱けるもんよ?」

「お前は…。実年齢いくつなんだよ」


僕は前世で入院生活が長かったから、こうしてスクールラブができる事が羨ましい。

それなのに、レイニーは相変わらず、興味なさそうな顔ですんっとしている。

「原作レイニーは、憧れの人に会えるかもってワクワクしてたんだけど、こっちのレイニーはそんなのないもんなぁ」

「セオドアなんてのは知らないけど、憧れの人は……いる」

少し赤くなってもじもじしている所を見ると、コレはマジのやつだ。なんてピュアなんだ!可愛いやつめ!

「え!?誰?誰?この学園の人?」

ワクワクぴこぴこ尻尾を振ってレイニーを覗き込む。

「うるさいな」

なる程、合点がいった。

学校に通う必要がない、交流をする気もない。そんなレイニーがわざわざ学園へ行くと決めたのは、その憧れの人ってのを探すために違いない。

「僕も手伝うよ!恋のキューピッドならぬ、ポメのキューピッド」

するとレイニーの顔が曇り、目を伏せた。

「俺の、手の届かない所にいるから……その必要はない」

「それって……」

「みなさん!静粛に!!」

魔法薬の講師が教壇についた。
目の前の机に、ポンと道具が現れる。

「ふわぁ。ねえねえ、この授業って難しいって二巻に書いてあったやつだ。作り方をニンフに歌で教えてもらうんだ」

魔法薬は、地味だけど精密な精度を必要とする授業だ。

粉末は丁寧に砕かなきゃいけないし、液体も静かに落とさないといけない。うっかり気泡が入ってしまったら台無しになってしまう。

僕は前世、薬剤師に興味があったからこのエピソード大好きなんだよね。
レイナーの中では地味だしそんなに人気ないんだけど。

「ほら、僕歌えるよ!くるりと回って~」

「うるさい」

そう言ってレイニーはあっという間に魔法薬を作り上げた。

「ほわぁ……すごぉい」

むしり。

「ひゃ……!!???」

「使い魔の毛で仕上げだろ?」

「ひ、酷い。僕の可愛いぽわ毛を無断でむしるなんて……!」

そう言っている内に、レイニーのフラスコからポンッと小さい花火が上がる。

「まあ!素晴らしいわ!!レイニー・アッシュフォード!」

わぁっと周りがざわついた。


ゾク……。

『この─────が』

『さすが───。──とは違うなぁ』

まただ。

『本当、──は──なんだから』

身体がザワザワする。

「おい、どうした?ノア?」

何故だろう、あんなに憧れていた学園生活のはずなのに……。
大好きなレイニー・ザ・ウィザードの世界に来て嬉しいはずなのに……。

なんだかすごく、怖い。
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