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真実2
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「おい、出来損ないのノアの奴、また先生に居残りさせられたんだってな?」
違う。それはお前達が僕の教科書を踏んづけてビリビリに破いたから、先生が一緒に修復してくれたんだ。
「やっぱり妾のガキは頭も悪いんだ」
「は、離して」
「は、離して~だってよ!オドオドどもってキモいヤツ!!!」
そう笑うのは、セオドア・ブラックウェル。
僕の異母兄だ。
クラスでも成績トップで将来有望。だけど選民思想が強くて僕みたいな弱者を見下している。
お供の二人を引き連れて、三対一で卑怯なやつ。だけど僕は何も言い返せない。出来損ないのポンコツなのは事実だからだ。
いつも僕の事が気に食わないらしいセオドアと、それに乗っかる彼の取り巻きに嫌がらせを受けていた。
だから僕は、学園が長期休みのタイミングを見計らって、僕の唯一の得意魔法を使って、図書室からこっそり借りておいた閲覧禁止の本の魔法に挑戦するつもりだった。
もしも魔法がない世界があるとしたら、どんなところなんだろう。ほんのちょっとだけ、覗いてみるだけのつもりだった。
魔法が無ければセオドアだって、こんなに調子に乗る事なんてできないくせに。
「おい、そもそもよぉ、ブラックウェル家の敷地内に何でお前がいるわけ?」
「そ、それは。当主様に……呼ばれて」
僕だって本当はこんな所来たくなかった。親戚中に白い目で見られ、見た目も冴えない僕なんて、全く受け入れられていない事くらい分かっている。
「チッ、お父様は寛大なんだ。調子乗んなよ」
寛大も何も、犯罪紛いの金儲けに都合よく僕を使っているだけじゃないか。戦闘力がないのに、前線へ連れて行かれ死んでしまった母さんみたいに。
お前は俺たちに戦ってもらわなければ何も出来ないという事を忘れるなよ。そう脅す割には実践経験なんてないくせに。
母さんの嫁ぎ先が対抗勢力になりそうだと知って、無理矢理犯したのはお前の父だというのに。
「んだぁ?なんか文句あんのか……」
「な、なんでもない」
ブラックウェル家は由緒正しい家系である。使う魔法も派手で豪華。強い炎の魔法や水魔法。対して僕は、似ているのは黒髪ってだけ。
セオドアにはお前みたいな無能と半分でも血が繋がっていると考えただけで反吐が出ると言われた。
僕にできる事は存在感を消して、出来るだけここにいる間は関わらないように、視線の中に入らないように気をつけるのみだ。
セオドアに背を向け、そっとその場から立ち去ろうとする。
ブォオオオオ……。
おぞましい雄叫びが、のどかな野原に響く。
「何でこんな辺鄙な所にフォヴォーラ族なんて居るんだよ!!」
セオドア達の悲痛な叫び声がした。
必死な抵抗も虚しく、フォヴォーラ族がセオドアを食い殺した。あっという間だった。
そしてその時、僕は前世を思い出した。
ああ、ツイてない。よりによって何でこのタイミングなんだ。
僕も食われる……僕はまた死ぬのか。そう思った。だけど……。
パキ。
音がした方を見ると幼い子が怯えて腰を抜かしている。
シルバーアッシュの髪にアメジストのような瞳。
震える手を握ると、少しだけ落ち着いたようだった。
「君、どうしてこんな所で……」
今はセオドアの体に夢中みたいだけど、きっとすぐにこっちに来る。
「早く逃げて。僕が食い止めるから」
何を言ってるんだ。あのセオドアですら一発でやられたのに。僕なんかじゃそんな力ないのに。
僕の母方の家系は隠密活動に特化していて存在感や物を消せる。ただそれだけ。
派手な魔法も、強い力もない。
だけど、この子だけは助かるかもしれない。
「おいで」
僕は少年の額に唇を触れ、まじないをかけた。
少年は驚いたように目をパチパチさせる。
「大人の人に、ここに怪物が出たから道を封鎖してと言うんだ。できる?」
少年は震えながらコクリとうなずいた。
「ふふ、いい子だ。さあ、急いで」
少年は一瞬躊躇してから走り出した。まるで、お兄ちゃんはどうするの?と言いたげだった。
さて、僕にできる事。
なるべく時間を稼ぎ、コイツの気が街へ向かないように、存在感を消したり、姿を見せて混乱させる。
怖くて手が震えるけど、集中だ。集中しろ……。
***
どれくらい時間が経っただろう。
腕も足も、使い物にならなくなってしまった。
血もたくさん出ている。
あの子は無事家に帰る事が出来ただろうか。
意識が遠くなる。
あ。
ダメだ……。
目の前に大口を開けたフォヴォーラ族の、生臭い息がかかる。
その時、目の前が真っ白になった気がする。
そこから記憶が途切れた。
違う。それはお前達が僕の教科書を踏んづけてビリビリに破いたから、先生が一緒に修復してくれたんだ。
「やっぱり妾のガキは頭も悪いんだ」
「は、離して」
「は、離して~だってよ!オドオドどもってキモいヤツ!!!」
そう笑うのは、セオドア・ブラックウェル。
僕の異母兄だ。
クラスでも成績トップで将来有望。だけど選民思想が強くて僕みたいな弱者を見下している。
お供の二人を引き連れて、三対一で卑怯なやつ。だけど僕は何も言い返せない。出来損ないのポンコツなのは事実だからだ。
いつも僕の事が気に食わないらしいセオドアと、それに乗っかる彼の取り巻きに嫌がらせを受けていた。
だから僕は、学園が長期休みのタイミングを見計らって、僕の唯一の得意魔法を使って、図書室からこっそり借りておいた閲覧禁止の本の魔法に挑戦するつもりだった。
もしも魔法がない世界があるとしたら、どんなところなんだろう。ほんのちょっとだけ、覗いてみるだけのつもりだった。
魔法が無ければセオドアだって、こんなに調子に乗る事なんてできないくせに。
「おい、そもそもよぉ、ブラックウェル家の敷地内に何でお前がいるわけ?」
「そ、それは。当主様に……呼ばれて」
僕だって本当はこんな所来たくなかった。親戚中に白い目で見られ、見た目も冴えない僕なんて、全く受け入れられていない事くらい分かっている。
「チッ、お父様は寛大なんだ。調子乗んなよ」
寛大も何も、犯罪紛いの金儲けに都合よく僕を使っているだけじゃないか。戦闘力がないのに、前線へ連れて行かれ死んでしまった母さんみたいに。
お前は俺たちに戦ってもらわなければ何も出来ないという事を忘れるなよ。そう脅す割には実践経験なんてないくせに。
母さんの嫁ぎ先が対抗勢力になりそうだと知って、無理矢理犯したのはお前の父だというのに。
「んだぁ?なんか文句あんのか……」
「な、なんでもない」
ブラックウェル家は由緒正しい家系である。使う魔法も派手で豪華。強い炎の魔法や水魔法。対して僕は、似ているのは黒髪ってだけ。
セオドアにはお前みたいな無能と半分でも血が繋がっていると考えただけで反吐が出ると言われた。
僕にできる事は存在感を消して、出来るだけここにいる間は関わらないように、視線の中に入らないように気をつけるのみだ。
セオドアに背を向け、そっとその場から立ち去ろうとする。
ブォオオオオ……。
おぞましい雄叫びが、のどかな野原に響く。
「何でこんな辺鄙な所にフォヴォーラ族なんて居るんだよ!!」
セオドア達の悲痛な叫び声がした。
必死な抵抗も虚しく、フォヴォーラ族がセオドアを食い殺した。あっという間だった。
そしてその時、僕は前世を思い出した。
ああ、ツイてない。よりによって何でこのタイミングなんだ。
僕も食われる……僕はまた死ぬのか。そう思った。だけど……。
パキ。
音がした方を見ると幼い子が怯えて腰を抜かしている。
シルバーアッシュの髪にアメジストのような瞳。
震える手を握ると、少しだけ落ち着いたようだった。
「君、どうしてこんな所で……」
今はセオドアの体に夢中みたいだけど、きっとすぐにこっちに来る。
「早く逃げて。僕が食い止めるから」
何を言ってるんだ。あのセオドアですら一発でやられたのに。僕なんかじゃそんな力ないのに。
僕の母方の家系は隠密活動に特化していて存在感や物を消せる。ただそれだけ。
派手な魔法も、強い力もない。
だけど、この子だけは助かるかもしれない。
「おいで」
僕は少年の額に唇を触れ、まじないをかけた。
少年は驚いたように目をパチパチさせる。
「大人の人に、ここに怪物が出たから道を封鎖してと言うんだ。できる?」
少年は震えながらコクリとうなずいた。
「ふふ、いい子だ。さあ、急いで」
少年は一瞬躊躇してから走り出した。まるで、お兄ちゃんはどうするの?と言いたげだった。
さて、僕にできる事。
なるべく時間を稼ぎ、コイツの気が街へ向かないように、存在感を消したり、姿を見せて混乱させる。
怖くて手が震えるけど、集中だ。集中しろ……。
***
どれくらい時間が経っただろう。
腕も足も、使い物にならなくなってしまった。
血もたくさん出ている。
あの子は無事家に帰る事が出来ただろうか。
意識が遠くなる。
あ。
ダメだ……。
目の前に大口を開けたフォヴォーラ族の、生臭い息がかかる。
その時、目の前が真っ白になった気がする。
そこから記憶が途切れた。
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