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ep.アダム
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夏樹が家に来た時、子供が迷い込んで来たのかと思った。
幼い顔立ちに華奢な体その立ち振る舞いや服装。
何より発音が日本人のそれだった。
留学生か何かだろうがそんな子が何故わざわざ都市部でもない住宅街のこの家に来たのだろうか。
きっと何か問題が起きたに違いない。
ただでさえこの土地はレイシズムに満ちている。
自分の母も日本人だ。母の同郷のよしみとして助けてやるべきなのではないか。
そう思って話を聞くとどうやらこの家を契約していたらしい。
自分が学校に通う為、母の知り合いの日本人に格安で借りたのが先月だ。
どうやら行き違いがあったみたいだが、海外ではよくある事だ。
自分もつい先日までボロアパートに住み、月一でインド人が結婚式を挙げ、夜な夜な騒いでいるのを眺めていたのだから。
この子は見れば見るほど愛らしい顔立ちで日本人にしては姿勢が正しく美しい。
服装も清潔感があり、きっと裕福な家の子だと確信した。
そんな子が路頭に迷えばどうなるかなんて考えなくても分かる。
身包みを剥がされ細い手首は組み敷かれ、あっという間に醜い男達に犯されるだろう。
ホームステイに来た子を犯す為に受け入れている者もいるくらいだ。
俺はこの子を放っておく訳にはいかないと思った。
シェアを提案した時の彼のホッとしたような、少し泣きそうな顔は自身の庇護欲を掻き立てられた。
夏樹は美しく芯があり、だけど今にも折れてしまいそうな儚さがある。
女性とはまた違う色気もあり、つい目で追ってしまう。
この感情を言葉に表現出来なくて、日頃の自分の無口さを恨んだ。
夏樹はよく話しかけてくれる。
本当は会話を楽しみたいが、何話せばいいのか分からない。
言語の壁ももちろんあるが、何より自分は楽しく会話をできる人間ではない。
ただ話しかけてくれるだけで、ソファで隣に座ってくれるだけで、心臓は跳ね血液と共に歓喜が全身に満ちる。
人に対してこんな感情になったのは初めてで戸惑いすらあった。
技術は素晴らしい、だが視野を広げ独自性も磨いていきましょう。
よく講師に言われていた事だ。
彼らのように、夏樹は自分をつまらない人間だと思っていないだろうか。
いつも夏樹を想い、彼を目で追い、いつかはこの土地を離れる事を思い出し恨めしく思う。
何とか感情を抑えようとしていたが、あの日涙を零す夏樹が宝石のように美しくて、儚く壊れそうで、このままどこかへ消えてしまうのではないかと不安になってしまう程だった。
繋ぎ止めたくて思わず口付けをした。
その後自己嫌悪に陥った。
弱っている相手に付け入るような事をして、最低だと。
だが、それと同時に彼が自分の為に涙を流せばいいのにと思った。
あの身体を乱し、白い肌に映える赤い唇を塞ぎたい。
無邪気に笑いながら腰に乗って踊る夏樹を想像し、掻き消すかのように筆を取る。
だが…なんて滑稽なんだ。
あの講師陣は自分の作品を見て様々な論理的な発言をしてくるがこれは単なる自分の性欲を表しただけなのに。
今まで自分は真面目にひたすら絵と向き合っていた。
だが皮肉にも絵よりも夢中になれるものを見つけてしまった今の方が評価を得ている。
夏樹は…どういう気持ちで自分を誘っているのだろう。
彼といるだけで喉の奥が焼けるように苦しくて、永遠を求められない歯痒さに自分を狂わせる。
愛おしくて恨めしくて、壊したくて大事にしたい。
その言葉を探す為に辞書を引いた。
見つかるはずはないと理解しながら。
幼い顔立ちに華奢な体その立ち振る舞いや服装。
何より発音が日本人のそれだった。
留学生か何かだろうがそんな子が何故わざわざ都市部でもない住宅街のこの家に来たのだろうか。
きっと何か問題が起きたに違いない。
ただでさえこの土地はレイシズムに満ちている。
自分の母も日本人だ。母の同郷のよしみとして助けてやるべきなのではないか。
そう思って話を聞くとどうやらこの家を契約していたらしい。
自分が学校に通う為、母の知り合いの日本人に格安で借りたのが先月だ。
どうやら行き違いがあったみたいだが、海外ではよくある事だ。
自分もつい先日までボロアパートに住み、月一でインド人が結婚式を挙げ、夜な夜な騒いでいるのを眺めていたのだから。
この子は見れば見るほど愛らしい顔立ちで日本人にしては姿勢が正しく美しい。
服装も清潔感があり、きっと裕福な家の子だと確信した。
そんな子が路頭に迷えばどうなるかなんて考えなくても分かる。
身包みを剥がされ細い手首は組み敷かれ、あっという間に醜い男達に犯されるだろう。
ホームステイに来た子を犯す為に受け入れている者もいるくらいだ。
俺はこの子を放っておく訳にはいかないと思った。
シェアを提案した時の彼のホッとしたような、少し泣きそうな顔は自身の庇護欲を掻き立てられた。
夏樹は美しく芯があり、だけど今にも折れてしまいそうな儚さがある。
女性とはまた違う色気もあり、つい目で追ってしまう。
この感情を言葉に表現出来なくて、日頃の自分の無口さを恨んだ。
夏樹はよく話しかけてくれる。
本当は会話を楽しみたいが、何話せばいいのか分からない。
言語の壁ももちろんあるが、何より自分は楽しく会話をできる人間ではない。
ただ話しかけてくれるだけで、ソファで隣に座ってくれるだけで、心臓は跳ね血液と共に歓喜が全身に満ちる。
人に対してこんな感情になったのは初めてで戸惑いすらあった。
技術は素晴らしい、だが視野を広げ独自性も磨いていきましょう。
よく講師に言われていた事だ。
彼らのように、夏樹は自分をつまらない人間だと思っていないだろうか。
いつも夏樹を想い、彼を目で追い、いつかはこの土地を離れる事を思い出し恨めしく思う。
何とか感情を抑えようとしていたが、あの日涙を零す夏樹が宝石のように美しくて、儚く壊れそうで、このままどこかへ消えてしまうのではないかと不安になってしまう程だった。
繋ぎ止めたくて思わず口付けをした。
その後自己嫌悪に陥った。
弱っている相手に付け入るような事をして、最低だと。
だが、それと同時に彼が自分の為に涙を流せばいいのにと思った。
あの身体を乱し、白い肌に映える赤い唇を塞ぎたい。
無邪気に笑いながら腰に乗って踊る夏樹を想像し、掻き消すかのように筆を取る。
だが…なんて滑稽なんだ。
あの講師陣は自分の作品を見て様々な論理的な発言をしてくるがこれは単なる自分の性欲を表しただけなのに。
今まで自分は真面目にひたすら絵と向き合っていた。
だが皮肉にも絵よりも夢中になれるものを見つけてしまった今の方が評価を得ている。
夏樹は…どういう気持ちで自分を誘っているのだろう。
彼といるだけで喉の奥が焼けるように苦しくて、永遠を求められない歯痒さに自分を狂わせる。
愛おしくて恨めしくて、壊したくて大事にしたい。
その言葉を探す為に辞書を引いた。
見つかるはずはないと理解しながら。
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