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ep.10
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翌日。
机の上にマフィンが置いてある。
"良かったらどうぞ"
こ、こいつ~!自分から話しかければいいのに!!
マフィンたくさん買ったんだけど一緒にどう?
昨日はお互い感情的になってしまったから落ち着いて話し合おう。
そう言ってくれたら僕も嫌な言い方してごめんって言えるのに…
怒られた大型犬みたいな顔してチラチラ見てくる!
覗き込むようにまだご主人怒ってる?みたいな顔して見てくる!!
自分からは話しかけずにこっちから切り出してくるのを待っている。
本当にずるいんだから!
別にどっちが悪いとかないんだから自信を持てばいいんだ!
だけどアダムはこういう奴だから…だからこの二人の関係は成り立っている。
それが出来たらアダムはここに居ない。
適度にリードして、だからといってこだわりがあって頑固だから強引に尻に敷いちゃいけない。
繊細で純粋で…めんどくせぇ男!
だから、この男は僕しかダメなんだ。
他の誰でもないこの僕じゃないと。
夏樹はふう…とため息をついた。
「ねえ、イルミネーション見に行かない?」
「……!行く」
何だよ、嬉しそうな顔しちゃって。
「キラキラして綺麗だね。夜の方が昼間より明るいね」
「イギリス人は暗い方が落ち着くんだよ」
「おっ、ブリティッシュジョークってやつ?」
「ただの事実なのに…」
二人で軽口を叩きながらイルミネーションに彩られたアーチ下を歩く。
日本では恋人同士の一大イベントと言っても過言ではないクリスマスは、海外では家族と過ごすのが定番らしい。
前日に出発し、数日間は滞在するから留守をよろしくと言われていた所だった。
だからアダムが長く家を空ける前に話をつけたいと思っていた。
この手の話は長引かせるほど悪化する。
サラッと終わらせた方がいい。
こんなにこっちは考えているのに、当の本人は昨日は夏樹に怒られちゃったんだよなぁ…くらいにしか思っていなさそうなのが腹立たしい。
惚れた弱みってやつだから受け入れる以外方法は無いんだけど。
行き止まりの橋にもたれかかりながら二人で道行く人を眺めていた。
「あ…夏樹、昨日は…その…」
アダムがもじもじしながら何か言いたそうにしている。
「僕はアダムに抱いて欲しいって思ってるよ」
このまま待っても5年かかりそうだと思った夏樹が先に口を開いた。
「エッチしてもしなくても、離れ離れになって寂しいのは変わらないんだから、好き同士なんだしすればいいんだよ」
「すき…」
「違うの?」
「違わない」
「残りの期間好きなの我慢して辛い思いし続けるより出来るだけ楽しく過ごした方がいいじゃん」
「だけど、離れてからの事を考えると…」
「どうせまた同じ事で悩んで、また同じような言い争いするでしょ。最後まで何も変わらない方が僕は嫌だけど」
今の時代、日本とイギリスであってもオンラインで繋がれるし帰国後は連休くらい金持ちの特権で会いに行ってもいいと思ってる。
「それもあるけど…自分がどうしたらいいか分からないんだ」
いい加減イライラしてきたな。
「じゃあさ、僕の事抱きたくないならもうアダムは寝てていいから。その間に僕が勝手にやるし」
「…そんな事!俺だって夏樹を抱きたい」
「はい、じゃあ決まり!」
「あ…」
やられたと言わんばかりにアダムはふふっと笑う。
長身ではっきりとした顔立ちで笑えば可愛いくて、アダムだって十分見惚れてしまう出立ちをしている。
「夏樹はいつも…」
くしゅん。
「う~。流石に寒いからもう戻ろっか。えっと…何か言いかけた?」
「何でもないよ…そうだね、帰ろう。風邪ひかないように、暖かい飲み物飲んで寝ようね」
この感じ今日もお預けか。
まあいい、確実にアダムの理性は削り取られている。
じっくり行こうじゃないか。
家路についた二人は何事もなく眠りについたのだった。
机の上にマフィンが置いてある。
"良かったらどうぞ"
こ、こいつ~!自分から話しかければいいのに!!
マフィンたくさん買ったんだけど一緒にどう?
昨日はお互い感情的になってしまったから落ち着いて話し合おう。
そう言ってくれたら僕も嫌な言い方してごめんって言えるのに…
怒られた大型犬みたいな顔してチラチラ見てくる!
覗き込むようにまだご主人怒ってる?みたいな顔して見てくる!!
自分からは話しかけずにこっちから切り出してくるのを待っている。
本当にずるいんだから!
別にどっちが悪いとかないんだから自信を持てばいいんだ!
だけどアダムはこういう奴だから…だからこの二人の関係は成り立っている。
それが出来たらアダムはここに居ない。
適度にリードして、だからといってこだわりがあって頑固だから強引に尻に敷いちゃいけない。
繊細で純粋で…めんどくせぇ男!
だから、この男は僕しかダメなんだ。
他の誰でもないこの僕じゃないと。
夏樹はふう…とため息をついた。
「ねえ、イルミネーション見に行かない?」
「……!行く」
何だよ、嬉しそうな顔しちゃって。
「キラキラして綺麗だね。夜の方が昼間より明るいね」
「イギリス人は暗い方が落ち着くんだよ」
「おっ、ブリティッシュジョークってやつ?」
「ただの事実なのに…」
二人で軽口を叩きながらイルミネーションに彩られたアーチ下を歩く。
日本では恋人同士の一大イベントと言っても過言ではないクリスマスは、海外では家族と過ごすのが定番らしい。
前日に出発し、数日間は滞在するから留守をよろしくと言われていた所だった。
だからアダムが長く家を空ける前に話をつけたいと思っていた。
この手の話は長引かせるほど悪化する。
サラッと終わらせた方がいい。
こんなにこっちは考えているのに、当の本人は昨日は夏樹に怒られちゃったんだよなぁ…くらいにしか思っていなさそうなのが腹立たしい。
惚れた弱みってやつだから受け入れる以外方法は無いんだけど。
行き止まりの橋にもたれかかりながら二人で道行く人を眺めていた。
「あ…夏樹、昨日は…その…」
アダムがもじもじしながら何か言いたそうにしている。
「僕はアダムに抱いて欲しいって思ってるよ」
このまま待っても5年かかりそうだと思った夏樹が先に口を開いた。
「エッチしてもしなくても、離れ離れになって寂しいのは変わらないんだから、好き同士なんだしすればいいんだよ」
「すき…」
「違うの?」
「違わない」
「残りの期間好きなの我慢して辛い思いし続けるより出来るだけ楽しく過ごした方がいいじゃん」
「だけど、離れてからの事を考えると…」
「どうせまた同じ事で悩んで、また同じような言い争いするでしょ。最後まで何も変わらない方が僕は嫌だけど」
今の時代、日本とイギリスであってもオンラインで繋がれるし帰国後は連休くらい金持ちの特権で会いに行ってもいいと思ってる。
「それもあるけど…自分がどうしたらいいか分からないんだ」
いい加減イライラしてきたな。
「じゃあさ、僕の事抱きたくないならもうアダムは寝てていいから。その間に僕が勝手にやるし」
「…そんな事!俺だって夏樹を抱きたい」
「はい、じゃあ決まり!」
「あ…」
やられたと言わんばかりにアダムはふふっと笑う。
長身ではっきりとした顔立ちで笑えば可愛いくて、アダムだって十分見惚れてしまう出立ちをしている。
「夏樹はいつも…」
くしゅん。
「う~。流石に寒いからもう戻ろっか。えっと…何か言いかけた?」
「何でもないよ…そうだね、帰ろう。風邪ひかないように、暖かい飲み物飲んで寝ようね」
この感じ今日もお預けか。
まあいい、確実にアダムの理性は削り取られている。
じっくり行こうじゃないか。
家路についた二人は何事もなく眠りについたのだった。
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