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第一章 起承転結の「起」
新人冒険者、その名は……
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ボートを漕ぎ出して数時間、そろそろ着くだろうか……
すると、目当ての島が見えてきた。かなり広そうな島だが、野生動物の類は居るのだろうか。
いや、モンスターがいると言ってたな。まあ、ジブリール様に調理法や仕留め方は教わった。
岸辺にボートを停めると、そのまま奥へ向かって歩き出す。ジブリール様の話だと、この島の奥に冒険者たちが出発点とする街があるらしい。
明るいところを探して、感覚を研ぎ澄ます。
人の声や足音、ロウソクもしくは電気の灯り、食べ物や生活の匂い…
何でもいい、手がかり出て来い。
えも言われぬ緊張感の中、目を凝らして耳を澄ましていると、ガサッという音が聞こえた。
「!」
俺は咄嗟に木の影へと隠れる。
位置的にはあそこか。
背中を見せてはならない、目を合わせてもいけない。果たして、ウサギかヘビか、それとも…
「ん?あんた人か?」
え?
「ああ、人間だが。」
「おいおい、早くこっちに来な。ここはクマやオオカミが出るから危ねぇんだ。」
「分かった、直ぐに行く。」
そのままゆっくりと声の主の元へと行く。
そこに居たのは、小太りで上半身裸の如何にもモブみたいなやつだ。
そこで、俺は聞いてみた。
「冒険者ギルドを探しているんだが、知らないか?」
「知ってるぜ、着いてきな。案内してやるよ。」
ここまではトントン拍子か。
ゆっくりと歩を進める相手に合わせて着いていく。動きから見るに、この森をよく熟知しているのだろう。
すると、灯りが見えて街を囲んでいる壁が目の前にある。だが、きちんと人が出入りできるように門があった。
「俺の仕事はここの門番でな。おーい、新しい冒険者希望の奴だ。通していいよな?」
「ああ。」
成程、門番というのは迷い人の探索もしているのだろうか。
まあ、通っていいと言われたんで通りまーす。
───────そして街の中へ───────
ここが冒険者たちの出立の場所……
MMORPGで見たような、中世風の街並みだ。
大きな噴水に石畳の地面、木製の家屋。武器屋とか道具屋とかもあるのかな?
それよりも冒険者ギルドだ。一体どこにあるというのだ……?
周りを見回すと、様々な貼り紙がしてある。
言葉は日本語では無いが、読み方はジブリール様に教わった。そこには……
『最近新人冒険者を狙った恐喝が多発しています、ご注意を!』
『夜の森は危険なので、壁の外を出歩かないで!』
といった具合のものだ。恐喝か…気を付けないとな。そう思いながら、てくてくと歩みを進めていく。すると、背後から怪しい人影が一人着いてくる。
振り向かず、気配だけで相手との距離を図る。
目的は一切不明だが、此方に用向きがあるのは違いないだろう。撒くか。
気付かれない程度に歩速を速めてみる。すると相手も自分が離されている事に気が付いたようだ。少しずつ速めて着いて来れる辺り、尾行にはそれなりに経験があるようだ。
例の恐喝だろうか、もしくは初心者を狙った強盗だろうかと頭の中で思慮を巡らせながら歩みを進めていく。何れにせよ絡まれてはめんど……ん?
気配が消えた。尾行を止めたのだろうか。
いや、油断は出来ない。正宗の柄に手をかけながら歩みを進めていたその時……
急に気配が現れた。間違いなく近付かれた。
一体何をしたんだ?
即座に気配のする方へ抜刀し刃を逆袈裟に振り上げ───────そうになるのを堪え、気配の方に視線を送る。そこに居たのは……
見ず知らずの同い年くらいの少女だ。
「あなた、見ない顔ね。もしかして新しい冒険者?」
……え?
「あんた誰だ」
「あんたじゃなくて、クロエ。私の名前は、クロエ・シャーロットよ」
色素の薄い肌にデニム生地のホットパンツに黒のチューブトップ、更には青色の上着といった露出の多い服装と腰にぶら下げた2本のナイフ。こいつはまさか……
「一応聞くけど、職業は?」
「盗賊。殺しはやらない主義なの」
アサシンじゃないなら良いか。
「盗賊サマが俺に一体何の用なんだ?」
「あんた、仲間にならない?」
「泥棒商売ならお断りだ」
「そうじゃない!一緒に冒険しないかって言ってんの!」
いやいや……あのね?
「俺はギルドにまだ登録していない。それに、出会ったばかりの人間と命懸けの冒険を?流石に展開が早すぎやしないか?」
「いや、あんたとならやれるわ。だって、あんたから金の匂いがするから。あ、多分そういう意味じゃなくて、ほら、金運とか財運とか、そういう匂いがあんたからするから」
え?マジで言ってんのか?
ジブリール様、そんなものまでくれたんですか?
「というか、私ばっか喋ってるじゃん。あんた、名前とかあんの?」
「名前か?佐川彰だ」
「サガワアキラ?どっちがファーストネーム?」
「彰」
「んじゃ、アキラね」
ああ、そうだ。
「冒険者ギルドに行きたいんだが、知らないか?」
「着いてきて」
今度は案内されるがままに着いていく。先程大分遠回りをしてしまったため、路地裏のような狭い道を長く歩いている。
するとそこに、一つの足止めが。
「おい待ちなそこの二人」
「ん?」
そこに居たのは、三人組のデブ、チビ、ノッポの男たち。見たら分かる。貼り紙にあったのはこいつらだろう。
「何だ?カツアゲか?」
「へへっ、話が早ぇな。痛い目に遭いたく無かったら、有り金と荷物置いていきな」
こういう時、穏便に対処出来ないものか……
「へぇ、嫌だって言ったら?」
あ、クロエお前……
「上等だ。まとめて娼館にでもぶち込んでやらぁ!」
「おい、男もかよ?」
「良いだろ!そういうの流行ってるんだからよ!」
あれは流行ってるというのか……
「とにかく、話し合いの余地は無さそうね」
「その余地をぶち壊したのお前だけどな?」
周りに人はこいつら以外に居ない。ならば、手早く済ませても目立たないだろう。
すると早速、チビがナイフを取り出してこっちに向けてナイフによる右手の突きを繰り出してくる。
相手は身長164cm、体重57kg、右利き、格闘技及び武器術の経験なし、気合と根性のみの戦闘か。
刀で斬れば早いが、殺したら後のことが面倒だ。
まずはチビの右手を肘で防ぐ、そして右肘を内側に入れて相手の腕をホールド。
バッ!
左手で相手の肩を取り押さえる、自由を奪った状態で地面に放り投げる。
ドサアッ!
「あ、があっ!」
関節をキメられた上に硬い地面に叩きつけられた痛みで呻くチビ。続いてやって来るのは、デブ。素手で殴りかかってくる。
身長175cm、体重115kg。右利き、格闘技及びマーシャルアーツの類の何かをやっていた奴に違いない。
ここは一先ず殴られる、フリをして頭突きで指の骨を折る。
ベキィッ!
中指と薬指、骨折。
「痛てえっ!てめぇ!」
今度はこっちの頭を狙ったハイキックか。
スリッピンアウェーの要領で、喰らったフリをして、回避。
ずるっ
「あ?」
相手自身の脚が目隠しになっているので、その隙に回転の膂力を活かした後ろ回し蹴り。
ドカッ!
「ぐえっ!」
右足の踵が相手の側頭部に命中。これにてデブは戦闘不能。
さて、残るノッポは……あれ?
いつの間にか地面に大の字で伸びてる。
というか、クロエがノッポの腹を踏みつけてふんぞり返っている。
「…ってあんた、あたし一人がこいつ相手してる間に二人倒したの?!」
「驚くことは無い、そういう風に教育されたからな」
俺ほどでは無いが、腕っ節は相当か。
どうやらこの女盗賊、力量だけなら信用出来そうだ。
「随分時間食ってしまったな。案内は頼む」
「ええ、それとこいつら縛ってギルドに突き出すさないとね」
「縛る縄は持ってるのか?」
すると、クロエは茶色の頑丈そうなロープを取り出した。抜け目のないやつ……
───────冒険者ギルド───────
「ご協力、ありがとうございました」
あいつらを何とかギルドに突き出し、俺達には報奨金が支払われた。その額は、50,000G。
何とか宿暮らし程度は出来そうだ。
さて、次は……
「冒険者の方の新規登録でしたら、此方になります」
一人の女性が此方に来る。
「私は受付担当のシルヴィアと申します。宜しくお願いしますね、ご新規様」
登録書とペンを渡された。
名前とコードネーム、住所の欄がある。
「…コードネーム?」
「はい。皆さんにはそれぞれコードネーム及び偽名が必要となります。決められてから、ご提出をお願いします」
ということで、クロエと名前を一緒に考える事に。
「肉食獣の名前とかは?パンサーとか」
動物かあ、ベタすぎてしっくり来ない。
「んー、なんか中二病っぽくて面白味に欠ける」
「辛口ね…」
どうせなら、あまり付かなさそうな名前がいい。
「…フッド」
「え?」
「コードネームはフッド、どうだろう」
「貴方の世界の有名な言葉?」
「そう、俺の世界のとある国の言葉で「アウトロー」って意味だよ」
ということで、新人冒険者フッド、生誕。
俺の旅は、これから始まるのか。
そして俺は、申請書を提出し正式にギルドのメンバー入りを果たした。
「では、フッドさんという名前で登録させていただきますね。引き続き案内がございますので、暫しお待ちください」
書類が受理された後、俺たちはシルヴィアに案内され、一件の家に通された。
「ギルドに加入してまだ充分な稼ぎを得られていない方には、当ギルドが用意した住宅に宿泊していただきます、ルールは多少ありますが、守っていただけたなら普通に住んでいただけます」
よし、家ゲット。
ここで道具作りやトレーニングはできるか。
「此方が保証しているのはベッドや椅子、机など必要最低限の家具のみですので、その他必要な道具等は各自で揃えてください」
ふーん、ま、いっか。
んで、気が向いた時にギルドに向かう、と。でもまあ、暇だし毎日通ってみるか。
「鍵は置いておきますので、それでは」
シルヴィアさんは帰っていった。
今日から一人暮らしかあ……
スマホも無い、話す相手も居ない中、俺は静かに眠りについた。
するとその晩、夢を見た。
「アキラ、ここまでは順調ですわね」
「…ジブリール様」
ジブリール様と出会った。
「夢の中にまで押しかけて申し訳ありません、ですが、新たなプレゼントを用意しました」
すると、ジブリール様は俺に指輪を寄越した。
「貴方の右手の人差し指ちょうどに当てはまるサイズを用意しました。どんなものかは、起きれば分かります。胸に手を当てて、今ある武器を思い出してください。では、後はお休み下さい」
……………………………………………………。
───────翌日───────
目が覚めたら、ジブリール様の言った通りに右手に指輪があった。
ん?一体どんな機能を…?
胸に手を当てて…今ある武器を思い出して…
すると……
シャリィィィィィン!
ガラスの割れるような音がして、俺を中心として回転する目の前に幾つもの水晶の欠片のようなものの中に、村正と正宗がクロスして宙に浮かんでいた。
もしかしてこの指輪は、装備拡張のアイテムなのか。つまりは、他にも武器があるってことか。遠距離の武器、銃とか弓とか欲しいな。
まあいいや、と俺はギルドに向けて足を運ぶのであった。
(To be continued......)
すると、目当ての島が見えてきた。かなり広そうな島だが、野生動物の類は居るのだろうか。
いや、モンスターがいると言ってたな。まあ、ジブリール様に調理法や仕留め方は教わった。
岸辺にボートを停めると、そのまま奥へ向かって歩き出す。ジブリール様の話だと、この島の奥に冒険者たちが出発点とする街があるらしい。
明るいところを探して、感覚を研ぎ澄ます。
人の声や足音、ロウソクもしくは電気の灯り、食べ物や生活の匂い…
何でもいい、手がかり出て来い。
えも言われぬ緊張感の中、目を凝らして耳を澄ましていると、ガサッという音が聞こえた。
「!」
俺は咄嗟に木の影へと隠れる。
位置的にはあそこか。
背中を見せてはならない、目を合わせてもいけない。果たして、ウサギかヘビか、それとも…
「ん?あんた人か?」
え?
「ああ、人間だが。」
「おいおい、早くこっちに来な。ここはクマやオオカミが出るから危ねぇんだ。」
「分かった、直ぐに行く。」
そのままゆっくりと声の主の元へと行く。
そこに居たのは、小太りで上半身裸の如何にもモブみたいなやつだ。
そこで、俺は聞いてみた。
「冒険者ギルドを探しているんだが、知らないか?」
「知ってるぜ、着いてきな。案内してやるよ。」
ここまではトントン拍子か。
ゆっくりと歩を進める相手に合わせて着いていく。動きから見るに、この森をよく熟知しているのだろう。
すると、灯りが見えて街を囲んでいる壁が目の前にある。だが、きちんと人が出入りできるように門があった。
「俺の仕事はここの門番でな。おーい、新しい冒険者希望の奴だ。通していいよな?」
「ああ。」
成程、門番というのは迷い人の探索もしているのだろうか。
まあ、通っていいと言われたんで通りまーす。
───────そして街の中へ───────
ここが冒険者たちの出立の場所……
MMORPGで見たような、中世風の街並みだ。
大きな噴水に石畳の地面、木製の家屋。武器屋とか道具屋とかもあるのかな?
それよりも冒険者ギルドだ。一体どこにあるというのだ……?
周りを見回すと、様々な貼り紙がしてある。
言葉は日本語では無いが、読み方はジブリール様に教わった。そこには……
『最近新人冒険者を狙った恐喝が多発しています、ご注意を!』
『夜の森は危険なので、壁の外を出歩かないで!』
といった具合のものだ。恐喝か…気を付けないとな。そう思いながら、てくてくと歩みを進めていく。すると、背後から怪しい人影が一人着いてくる。
振り向かず、気配だけで相手との距離を図る。
目的は一切不明だが、此方に用向きがあるのは違いないだろう。撒くか。
気付かれない程度に歩速を速めてみる。すると相手も自分が離されている事に気が付いたようだ。少しずつ速めて着いて来れる辺り、尾行にはそれなりに経験があるようだ。
例の恐喝だろうか、もしくは初心者を狙った強盗だろうかと頭の中で思慮を巡らせながら歩みを進めていく。何れにせよ絡まれてはめんど……ん?
気配が消えた。尾行を止めたのだろうか。
いや、油断は出来ない。正宗の柄に手をかけながら歩みを進めていたその時……
急に気配が現れた。間違いなく近付かれた。
一体何をしたんだ?
即座に気配のする方へ抜刀し刃を逆袈裟に振り上げ───────そうになるのを堪え、気配の方に視線を送る。そこに居たのは……
見ず知らずの同い年くらいの少女だ。
「あなた、見ない顔ね。もしかして新しい冒険者?」
……え?
「あんた誰だ」
「あんたじゃなくて、クロエ。私の名前は、クロエ・シャーロットよ」
色素の薄い肌にデニム生地のホットパンツに黒のチューブトップ、更には青色の上着といった露出の多い服装と腰にぶら下げた2本のナイフ。こいつはまさか……
「一応聞くけど、職業は?」
「盗賊。殺しはやらない主義なの」
アサシンじゃないなら良いか。
「盗賊サマが俺に一体何の用なんだ?」
「あんた、仲間にならない?」
「泥棒商売ならお断りだ」
「そうじゃない!一緒に冒険しないかって言ってんの!」
いやいや……あのね?
「俺はギルドにまだ登録していない。それに、出会ったばかりの人間と命懸けの冒険を?流石に展開が早すぎやしないか?」
「いや、あんたとならやれるわ。だって、あんたから金の匂いがするから。あ、多分そういう意味じゃなくて、ほら、金運とか財運とか、そういう匂いがあんたからするから」
え?マジで言ってんのか?
ジブリール様、そんなものまでくれたんですか?
「というか、私ばっか喋ってるじゃん。あんた、名前とかあんの?」
「名前か?佐川彰だ」
「サガワアキラ?どっちがファーストネーム?」
「彰」
「んじゃ、アキラね」
ああ、そうだ。
「冒険者ギルドに行きたいんだが、知らないか?」
「着いてきて」
今度は案内されるがままに着いていく。先程大分遠回りをしてしまったため、路地裏のような狭い道を長く歩いている。
するとそこに、一つの足止めが。
「おい待ちなそこの二人」
「ん?」
そこに居たのは、三人組のデブ、チビ、ノッポの男たち。見たら分かる。貼り紙にあったのはこいつらだろう。
「何だ?カツアゲか?」
「へへっ、話が早ぇな。痛い目に遭いたく無かったら、有り金と荷物置いていきな」
こういう時、穏便に対処出来ないものか……
「へぇ、嫌だって言ったら?」
あ、クロエお前……
「上等だ。まとめて娼館にでもぶち込んでやらぁ!」
「おい、男もかよ?」
「良いだろ!そういうの流行ってるんだからよ!」
あれは流行ってるというのか……
「とにかく、話し合いの余地は無さそうね」
「その余地をぶち壊したのお前だけどな?」
周りに人はこいつら以外に居ない。ならば、手早く済ませても目立たないだろう。
すると早速、チビがナイフを取り出してこっちに向けてナイフによる右手の突きを繰り出してくる。
相手は身長164cm、体重57kg、右利き、格闘技及び武器術の経験なし、気合と根性のみの戦闘か。
刀で斬れば早いが、殺したら後のことが面倒だ。
まずはチビの右手を肘で防ぐ、そして右肘を内側に入れて相手の腕をホールド。
バッ!
左手で相手の肩を取り押さえる、自由を奪った状態で地面に放り投げる。
ドサアッ!
「あ、があっ!」
関節をキメられた上に硬い地面に叩きつけられた痛みで呻くチビ。続いてやって来るのは、デブ。素手で殴りかかってくる。
身長175cm、体重115kg。右利き、格闘技及びマーシャルアーツの類の何かをやっていた奴に違いない。
ここは一先ず殴られる、フリをして頭突きで指の骨を折る。
ベキィッ!
中指と薬指、骨折。
「痛てえっ!てめぇ!」
今度はこっちの頭を狙ったハイキックか。
スリッピンアウェーの要領で、喰らったフリをして、回避。
ずるっ
「あ?」
相手自身の脚が目隠しになっているので、その隙に回転の膂力を活かした後ろ回し蹴り。
ドカッ!
「ぐえっ!」
右足の踵が相手の側頭部に命中。これにてデブは戦闘不能。
さて、残るノッポは……あれ?
いつの間にか地面に大の字で伸びてる。
というか、クロエがノッポの腹を踏みつけてふんぞり返っている。
「…ってあんた、あたし一人がこいつ相手してる間に二人倒したの?!」
「驚くことは無い、そういう風に教育されたからな」
俺ほどでは無いが、腕っ節は相当か。
どうやらこの女盗賊、力量だけなら信用出来そうだ。
「随分時間食ってしまったな。案内は頼む」
「ええ、それとこいつら縛ってギルドに突き出すさないとね」
「縛る縄は持ってるのか?」
すると、クロエは茶色の頑丈そうなロープを取り出した。抜け目のないやつ……
───────冒険者ギルド───────
「ご協力、ありがとうございました」
あいつらを何とかギルドに突き出し、俺達には報奨金が支払われた。その額は、50,000G。
何とか宿暮らし程度は出来そうだ。
さて、次は……
「冒険者の方の新規登録でしたら、此方になります」
一人の女性が此方に来る。
「私は受付担当のシルヴィアと申します。宜しくお願いしますね、ご新規様」
登録書とペンを渡された。
名前とコードネーム、住所の欄がある。
「…コードネーム?」
「はい。皆さんにはそれぞれコードネーム及び偽名が必要となります。決められてから、ご提出をお願いします」
ということで、クロエと名前を一緒に考える事に。
「肉食獣の名前とかは?パンサーとか」
動物かあ、ベタすぎてしっくり来ない。
「んー、なんか中二病っぽくて面白味に欠ける」
「辛口ね…」
どうせなら、あまり付かなさそうな名前がいい。
「…フッド」
「え?」
「コードネームはフッド、どうだろう」
「貴方の世界の有名な言葉?」
「そう、俺の世界のとある国の言葉で「アウトロー」って意味だよ」
ということで、新人冒険者フッド、生誕。
俺の旅は、これから始まるのか。
そして俺は、申請書を提出し正式にギルドのメンバー入りを果たした。
「では、フッドさんという名前で登録させていただきますね。引き続き案内がございますので、暫しお待ちください」
書類が受理された後、俺たちはシルヴィアに案内され、一件の家に通された。
「ギルドに加入してまだ充分な稼ぎを得られていない方には、当ギルドが用意した住宅に宿泊していただきます、ルールは多少ありますが、守っていただけたなら普通に住んでいただけます」
よし、家ゲット。
ここで道具作りやトレーニングはできるか。
「此方が保証しているのはベッドや椅子、机など必要最低限の家具のみですので、その他必要な道具等は各自で揃えてください」
ふーん、ま、いっか。
んで、気が向いた時にギルドに向かう、と。でもまあ、暇だし毎日通ってみるか。
「鍵は置いておきますので、それでは」
シルヴィアさんは帰っていった。
今日から一人暮らしかあ……
スマホも無い、話す相手も居ない中、俺は静かに眠りについた。
するとその晩、夢を見た。
「アキラ、ここまでは順調ですわね」
「…ジブリール様」
ジブリール様と出会った。
「夢の中にまで押しかけて申し訳ありません、ですが、新たなプレゼントを用意しました」
すると、ジブリール様は俺に指輪を寄越した。
「貴方の右手の人差し指ちょうどに当てはまるサイズを用意しました。どんなものかは、起きれば分かります。胸に手を当てて、今ある武器を思い出してください。では、後はお休み下さい」
……………………………………………………。
───────翌日───────
目が覚めたら、ジブリール様の言った通りに右手に指輪があった。
ん?一体どんな機能を…?
胸に手を当てて…今ある武器を思い出して…
すると……
シャリィィィィィン!
ガラスの割れるような音がして、俺を中心として回転する目の前に幾つもの水晶の欠片のようなものの中に、村正と正宗がクロスして宙に浮かんでいた。
もしかしてこの指輪は、装備拡張のアイテムなのか。つまりは、他にも武器があるってことか。遠距離の武器、銃とか弓とか欲しいな。
まあいいや、と俺はギルドに向けて足を運ぶのであった。
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