落ち葉の魔法使い

神在琉葵(かみありるき)

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……交換?

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「こ、交換って……どうすれば良いのよ。」

 「簡単だよ。
 目をつぶり、君がいらないと思ってる記憶を頭に思い浮かべて、今の記憶を僕にあげるって言ってくれたら良いんだ。
さぁ……思い出して。」



わけがわからない。
だけど、不思議なことに私は男に言われるまま、目を閉じて淳のことを思い出していた。
 初めて会った時のこと…楽しかったこと、嬉しかったこと、恥ずかしかったこと……
思い出せば思い出す程、私がどれほど淳に救われてたかという事が感じられ、十日程前に淳から別れ話を切り出された時のことを思い出すと、感情が込み上げ涙がこぼれ落ちた。



 私が悪かったんだ。
 何をしても許してくれるからって良い気になって…
一緒にお祝しようって約束してた淳の誕生日さえ、私はすっかり忘れて仕事をしてた。
しかも、電話をかけて来た淳に、そんなことより仕事の方が大切だとか、私はあんたみたいな平社員じゃないんだからと失礼なことをさんざん言ってしまった。



ふられて当然……



私が悪かったことはわかっていて、それでも私は頭を下げられなかった。
なんともない顔をして「楽しかったわ。」そう言って、手を振って別れた。
 素直じゃなくて、自分勝手な自分自身に怒りと後悔が込み上げる。



 最悪な記憶……大袈裟にいえば人生の汚点……
忘れてしまいたい記憶……



なのに、忘れちゃいけない気がする。
 忘れたらきっと楽になれるのに、それでも、忘れちゃいけない……違う……淳のことは何一つ忘れたくないって思ってる自分に気が付いた。
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