虚実の時

神在琉葵(かみありるき)

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 「ここは本当に星が綺麗だね。」

ミカエルはキラキラと星の瞬く空を見上げ、静かな声で呟いた。



 「そうね。とても綺麗だわ。」

 隣に腰を降ろしたアニエスも、ミカエルと同じように空を見上げながらそう答えた。



 「亡くなった人は星になる…なんて言われるけど、そのせいなのかな?
 星を見ていると、なんだかとても気持ちが落ち着くんだ。
 皆が見守ってくれてるせいなのかな?」

ミカエルの言葉に、アニエスは何も答えなかった。
 彼には、アニエスが黙っている理由がなんとなくわかっていた。



アニエスの両親は、水害によって亡くなった。
 水害では、村の三分の一近い人々が命をなくした。
 亡くなったのは、主に川沿いに住む人々だったが、アニエスの両親は懇意にしているお年寄りを助けようとしてそちらへ向かい、そして命を落としたのだった。



 「……アニエス…やっぱりまだご両親の話をされるのは辛い?」

 「えっ……そうね。そうかもしれないわ。」

 曖昧に答え、アニエスは俯いた。



 「エリックさんから聞いたよ。
 君のご両親は、とても立派な人達だったんだね。」

 「ええ…誰にでも優しくて、真面目で……でも……」

アニエスは、そこまで話すと苦しそうに唇を噛み締めた。



 「でも……何なんだい?」

 「私は……両親が立派じゃなくても良かったって思うの。
あの時、あのまま家にいたら…両親は死ぬことはなかった……
だから、行かないでほしかった。
わかってるわ。私が酷いことを言ってるのは……
お婆ちゃんには、私も小さい頃からとても良くしてもらったし、本当のお婆ちゃんみたいに思ってた。
だけど……両親が死ぬくらいなら…だったら、私はもっと本気で止めれば良かったって…我慢なんてしないでなんとしても行かせなきゃ良かったって後悔……」

 涙声で感情的に話すアニエスを、ミカエルはそっと抱き締めた。



 「もう良いよ。
それ以上は、もう話さないで。」

その言葉に、アニエスの涙は堰を切ったように流れ出す。
ミカエルの胸に顔を埋め、アニエスはどうにも止められなくなった涙を流し続けた。

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