虚実の時

神在琉葵(かみありるき)

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「ご、ごめん……」

ミカエルは、アニエスの涙を優しく指で拭う。



 「あなたはそんな人じゃない!
 私、信じてる……!!」

 「……ありがとう、アニエス。
 君には本当に助けられてばかりだね。
 僕になにが出来るかわからないけど、僕が君に出来ることならなんだってやるつもりだよ。」

 「……本当に?」

 「え…もちろん本当だよ。」



 「だったら……」

 真っ直ぐな視線でミカエルをみつめるアニエスは、なにかを言いかけて急に躊躇うように口をつぐんだ。



 「アニエス…何か希望があるのなら遠慮せずになんでも言って。」

アニエスは小さく頷き、俯くと再び口を開いた。



 「だったら、私と結婚して……」

 「け、結婚…!?
そりゃあ、僕だって君のことは好きだよ。
でも、さっきも話した通り、僕は記憶が……」

 「そんなことは気にしないわ!
 私はあなたのことを愛してるし、あなたのことを信じてる。
たかが半年と思われるかもしれないけれど、私はあなたの一番近くにいて、ずっとあなたのことを見てきたわ。
だから、あなたのことは誰よりもわかってるつもりよ。
ミカエル…相手のことを心から愛し、信じていれば、それに勝るものなんてないんじゃないかしら?
たとえ、あなたの過去にどんなことがあっても、私はそんなこと何も気にならないわ。」

それは、普段のおとなしいアニエスとはまるで別人のように、きっぱりとした強い言葉だった。



 「愛と信頼……」

 独り言のようにその言葉を口にした途端、ミカエルは心の中がざわざわとうごめくのを感じたが、その原因はわからなかった。



 「ミカエル…もしも、私のことが嫌いだったらはっきり言って。
でも、そうじゃないのなら、ずっと私の傍にいてほしいの。
 私は、あなたと二人でこの先の人生を歩んで行きたい……
それ以外に望みなんてないわ。」

 「アニエス…少しだけ時間をくれないか。
 僕だって、そう出来るなら最高だと思うよ。
でも、その前にどうしてもやっておかなきゃならないことがある。」
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