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「いや~、見たことないなぁ…」
声をかけた誰もが、ミカエルのことを知らないと言った。
それも当然のこと。
ミカエルがバルバスの町に来た時は、荷物のようにして荷車に載せられていたのだから。
しかも、ミカエルは本来、レスター近くの崖で滑落している。
そのことを知っているアニエスは、無駄とわかっていながら、人々に声をかけて回った。
「……僕はこの町の住人ではなさそうだね。」
「そうみたいね。」
「だったら、どこ……」
「あれぇ……?」
鼻の頭を真っ赤にした老人が、二人の傍で立ち止まった。
まだ明るい時間だというのに、老人が相当酔っていることは、離れても臭う酒のにおいで明らかだった。
「おじいさん…もしかして、僕のことをご存じなんですか?」
「おまえさんは、こないだ一緒に飲んだあんちゃんじゃないのか?」
「えっ!こないだって、いつのことです?」
「いつって…そうさなぁ…半年も前だったか……旅はやめたのか?」
「旅…?僕は、旅をしてるって言ってたんですか?」
「はぁ?おまえさん、自分の言ったことを忘れちまったのか?」
アニエスには、老人がミカエルと誰かを勘違いをしていることに気付いていた。
しかし、そのことが良い方、悪い方、どちらに転がるかを見極めるまで様子を見ようと、そのまま静かに成り行きを見守った。
「おじいさん、実は僕はこの先の崖から落ちて頭を打ち、記憶をなくしてしまったんです。
それで、もしやこの町に住んでたんじゃないかと思って、調べに来たんです。」
「なんと、頭を…!そりゃあえらいことだったな。
お前さんは、この町の者じゃないぞ。
何年も前から旅をしていると話していた。」
「何年も前から?何か故郷のことは言ってませんでしたか?」
「いや、何も言ってなかったな。
この先にはどんな町があるのかとか…世界中を旅するのが夢だとか…そんな話をしていたように思うがな…」
「そうでしたか。ありがとうございました。」
声をかけた誰もが、ミカエルのことを知らないと言った。
それも当然のこと。
ミカエルがバルバスの町に来た時は、荷物のようにして荷車に載せられていたのだから。
しかも、ミカエルは本来、レスター近くの崖で滑落している。
そのことを知っているアニエスは、無駄とわかっていながら、人々に声をかけて回った。
「……僕はこの町の住人ではなさそうだね。」
「そうみたいね。」
「だったら、どこ……」
「あれぇ……?」
鼻の頭を真っ赤にした老人が、二人の傍で立ち止まった。
まだ明るい時間だというのに、老人が相当酔っていることは、離れても臭う酒のにおいで明らかだった。
「おじいさん…もしかして、僕のことをご存じなんですか?」
「おまえさんは、こないだ一緒に飲んだあんちゃんじゃないのか?」
「えっ!こないだって、いつのことです?」
「いつって…そうさなぁ…半年も前だったか……旅はやめたのか?」
「旅…?僕は、旅をしてるって言ってたんですか?」
「はぁ?おまえさん、自分の言ったことを忘れちまったのか?」
アニエスには、老人がミカエルと誰かを勘違いをしていることに気付いていた。
しかし、そのことが良い方、悪い方、どちらに転がるかを見極めるまで様子を見ようと、そのまま静かに成り行きを見守った。
「おじいさん、実は僕はこの先の崖から落ちて頭を打ち、記憶をなくしてしまったんです。
それで、もしやこの町に住んでたんじゃないかと思って、調べに来たんです。」
「なんと、頭を…!そりゃあえらいことだったな。
お前さんは、この町の者じゃないぞ。
何年も前から旅をしていると話していた。」
「何年も前から?何か故郷のことは言ってませんでしたか?」
「いや、何も言ってなかったな。
この先にはどんな町があるのかとか…世界中を旅するのが夢だとか…そんな話をしていたように思うがな…」
「そうでしたか。ありがとうございました。」
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