虚実の時

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
26 / 42

26

しおりを挟む




 「本当にふたりとも頑固なんだから……」

 「あなたにはわからないでしょうね。」

 「おまえには何もないみたいに見えるかもしれないが、ここには僕達に必要なものはなんだってあるんだ。
ここを離れる気はないよ。」

ミカエルとアニエスの息子・ローランは、肩をすくめ苦笑する。



 「まぁ、きっとそう言うとは思ったけどね。
でも、残念だなぁ…とても良い家なんだよ。
 町のはずれなんだけど、その代わり日当たりは良いし、二人で住むにはちょうど良い広さだし、庭も広くて気持ちが良いよ。
しかも、家賃もすごく安くしてもらえるのに……」

 「何を言ってるんだ。
ここより日当たりの良い場所があるもんか。
おまえだって、小さい頃はおとなしいと思ったらいつもそこで眠ってて……」

そう言いながら、ミカエルは日に焼けたカーペットを指差した。



 「わかった、わかった。
その話なら、もう何百回も聞いてるよ。
ただ……父さん達ももう若くないんだ。
どんなことがあるかわからないし……」

 「ここには先生がいるし、診療所だってあるじゃないか。」

 「そりゃあそうだけど……やっぱり便利な場所で暮らしてた方が……」

 「あなたの気持ちは嬉しいけれど、それはもっと年をとってからにするわ。
 今はまだ私達には何の不便もないから。」

ローランは、肩を落とし大きな溜息を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

【完結】その約束は果たされる事はなく

かずきりり
恋愛
貴方を愛していました。 森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。 私は貴方を愛してしまいました。 貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって… 貴方を諦めることは出来そうもありません。 …さようなら… ------- ※ハッピーエンドではありません ※3話完結となります ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

聖女エーステリアの死

倉真朔
恋愛
聖女エーステリアはなぜ最愛の人に断罪されたのか。切ない物語です。 この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。

処理中です...