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「良い絵だなぁ……」
ミカエルは飾られた絵を一枚一枚じっくりと眺め、満足そうな笑顔を浮かべた。
絵にあまり関心のないアニエスは、退屈に思いながらも、ミカエルの気分を壊さないように、同じように絵を楽しんでいるふりをした。
「なんて繊細なタッチなんだろう。
見てると胸がいっぱいになってくるよ。
これを描いたのはよほど几帳面な画家なんだろうね。」
絵の間近まで顔を寄せ、とても熱のこもった口調で話すミカエルは、アニエスが今までに見たことのないミカエルで、そのことが妙に彼女を不安にさせた。
「ねぇ、ミカエル……
買い物もしないといけないんだし、少し急がないとローランとの約束の時間に間に合わないわよ。」
「大丈夫だよ。」
ミカエルは、アニエスの言葉を少しも気にすることなく、その後も丁寧に絵を見て回った。
「あ……」
展示されている絵もあとわずかとなった時、ミカエルは聞こえるかどうかの小さな声を上げて、一枚の絵の前に立ち尽くした。
そこに描かれていたのは若い女性だった。
長い金髪で質素な身なりをした女性が椅子に腰掛けている所を描いたもので、女性の表情はなんともいえない深い悲しみを湛えていた。
その絵を見た途端、ミカエルの足はその場に釘付けになり、鼓動は一気に速さを増した。
頭の中が動き出すような気味の悪い感覚……そして、激しい頭痛がミカエルを襲った。
「ミカエル……?どうかしたの……?」
「うっ…あ、あぁーーーっ!」
「ミカエル!どうしたの!?
ミカエル!!」
頭を抱えてその場にうずくまるミカエルに、アニエスは驚き、懸命に呼びかける。
「あ…あぁ……」
ミカエルは頭を深く下げ、言葉にならない声を発し続け、彼の周りには遠巻きに人だかりが出来ていた。
「誰か、お願いです!お医者様を……!」
「良い絵だなぁ……」
ミカエルは飾られた絵を一枚一枚じっくりと眺め、満足そうな笑顔を浮かべた。
絵にあまり関心のないアニエスは、退屈に思いながらも、ミカエルの気分を壊さないように、同じように絵を楽しんでいるふりをした。
「なんて繊細なタッチなんだろう。
見てると胸がいっぱいになってくるよ。
これを描いたのはよほど几帳面な画家なんだろうね。」
絵の間近まで顔を寄せ、とても熱のこもった口調で話すミカエルは、アニエスが今までに見たことのないミカエルで、そのことが妙に彼女を不安にさせた。
「ねぇ、ミカエル……
買い物もしないといけないんだし、少し急がないとローランとの約束の時間に間に合わないわよ。」
「大丈夫だよ。」
ミカエルは、アニエスの言葉を少しも気にすることなく、その後も丁寧に絵を見て回った。
「あ……」
展示されている絵もあとわずかとなった時、ミカエルは聞こえるかどうかの小さな声を上げて、一枚の絵の前に立ち尽くした。
そこに描かれていたのは若い女性だった。
長い金髪で質素な身なりをした女性が椅子に腰掛けている所を描いたもので、女性の表情はなんともいえない深い悲しみを湛えていた。
その絵を見た途端、ミカエルの足はその場に釘付けになり、鼓動は一気に速さを増した。
頭の中が動き出すような気味の悪い感覚……そして、激しい頭痛がミカエルを襲った。
「ミカエル……?どうかしたの……?」
「うっ…あ、あぁーーーっ!」
「ミカエル!どうしたの!?
ミカエル!!」
頭を抱えてその場にうずくまるミカエルに、アニエスは驚き、懸命に呼びかける。
「あ…あぁ……」
ミカエルは頭を深く下げ、言葉にならない声を発し続け、彼の周りには遠巻きに人だかりが出来ていた。
「誰か、お願いです!お医者様を……!」
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