虚実の時

神在琉葵(かみありるき)

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 「ご安心下さい。
 一時的なものだったようです。
もう心配はありませんよ。」



 意識を失ったミカエルは診療所に運ばれたが、それからしばらくすると意識を取り戻し、入院することもなく戻された。



 「心配かけてすまなかったな。
もう大丈夫だ。」

 「父さん…本当に大丈夫なのかい?」

 「あぁ、もうなんともない。」

 心配そうな表情のローランに、ミカエルは機嫌の良い笑顔を返した。



 「お待たせ。簡単なものばかりだけどごめんなさいね。
ここにはろくな食材がなかったから。」

 「疲れてるところをすまなかったな。
レストランへは明日食べに行こう。」

 狭いローランの家のキッチンで、三人は食卓を囲んだ。



 「ミカエル…もう頭痛はなんともないの…?」

 「あぁ、もうなんともない。
 久しぶりに都会に出てきて、疲れたのかもしれないな。
 僕もいつの間にかすっかり田舎者になったんだなぁ…」

ミカエルが元気なことはともかく、やけに機嫌が良いことが、アニエスには気がかりだった。



 *



 「ローラン…すまないが、ちょっと起きてくれ。」

 「え……父さん…どうしたの?」



 眠りについてしばらくした真夜中に、ローランはミカエルに起こされた。
ローランが目を覚ましたのを確認すると、ミカエルは今一度ドアを開け、あたりの様子をうかがった。



 「何なの、父さん、こんな夜中に……」

 「アニエスには聞かれたくない話なんだ。」

ミカエルは押さえた声でそう切り出した。



 「母さんに内緒…?
どんなことなの?」

 「実は、おまえに頼みたいことがあるんだ。」

 「頼みたいこと…?」

 小首を傾げ、きょとんとするローランに、ミカエルは思いがけないことを話した。

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