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 「三好…」

 次の日、森本君に声をかけられ、私は咄嗟に俯いた。



 「今日の帰り…
ちょっと話したいことがあるんだけど…」

 「え…?」



 話したいことって…
今まではいつも何か食べに行く誘いだったのに、今日は話したいって…
多分、凛子のことだよね?
もしかして、凛子と付き合うとか、そんな話なんだろうか?
そう思ったら、聞きたくないと思った。



 「私…今日は……」

 断りの返事をしようと思った時…
私の中の誰かが言った。
 逃げてたら、どうにもならないって。



 「……都合付かないか?」

 「……わかった。行くよ。」



 私は、勇気を振り絞って、森本君と会うことにした。
 放課後のことが気になりすぎて、授業はずっと頭の中を素通りだった。



そして、ついに放課後…



指定された校門の前に行くと、森本君は、もうそこに立っていた。



 「あ、ごめんね。」

 「うん、俺もついさっき来たとこだから。
じゃあ、行こうか。」

 「うん。」



 私は森本君と少し離れて並んで歩いた。
いつもこんな感じだった。
だって、森本君はただのクラスメイト。
ただそれだけの人だから。
 私達は、20分弱歩いて、何度か一緒に行ったことのある静かな公園に向かった。


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