ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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夜空の方舟

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「ただいま~!」

 数日後、妻が旅行から帰って来た。



 「ひとりで大変だったでしょ?
ごめんなさいね。
あなたのおかげで本当に楽しい思い出が出来たわ。
どうもありがとう!」



 妻は俺がもう1億のことを知ってることには気づかず、いつもの調子で笑顔をふりまく。
そんな妻を見ていると、俺は腹が立ち過ぎて、気分が悪くなる程だった。



 「あなた…どうかしたの?」

 「は、は、半分寄越せ!
 俺はおまえの夫なんだからな!」

 「半分って……一体、何のことなの?」

 「俺が何も知らないと思ってるのか!
 宝くじで当たった金だ!
 俺は知ってるんだぞ!」

 「宝くじって…どういうことなのよ?」



 妻があまりにしらばっくれるものだから、俺は頭に血が上り、妻に平手打ちを食らわしていた。



 「あ、あなた…何を!?」

 「う、うるさいっ!」

 私はめちゃくちゃに妻を痛めつけた。
 妻に手を上げたことは初めてだ。
だが、自分でももう歯止めが利かなくなっていた。
 俺は、心の憂さを晴らすべく、妻に暴力をふるい続けた。



 *



その後も、妻は断固として口を割らなかった。
 通帳を目の前に突き付けても、知らないというばかりだ。
これほど、性悪な女だとは思ってもみなかった。



 俺の気持ちは逆なでされるばかりだった。
どうして、素直に言えないんだ。
 言えば、俺だって許してやるのに…



俺達は毎日のように喧嘩をし、俺は妻を殴り続けた。



ある日、机の上に離婚届が置いてあった。
それを見た俺の顔には思わず苦い笑みが浮かんだ。



 妻は、1億持ってるから、もう俺なんかに用はないということだろう。
あぁ、それならそれで良い。
 俺だって、そんな妻に未練はない。



もっと早くに別れるべきだったのだ。
こんな嘘つきで性悪な女とは、一緒にいても仕方がない。
どうせ金は出さないだろうし。



 俺は、書類に記入し、役所に届けた。
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