ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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満月と鏡

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家に帰ってから、私は食い入るようにその記事に目を通した。
それは、満月のパワーで、好きな人と両想いになれるおまじないだった。
しかも、もうじきやって来る満月の日は、スーパームーンと呼ばれるもので、普段の満月より、ずっとパワーの強いものだと書いてあった。



しばらくして、スーパームーンの満月の日がやって来た。
 私は、その日までに手鏡と、それを入れるシルクのポーチを購入し、準備していた。



 (なんて綺麗なお月様……)



 確かにその月はいつもとはどこか違うように感じられた。
どこが?と聞かれれば、答えることは出来ないから、ただの気のせいかもしれないけれど。
 馬鹿馬鹿しいと思う反面、何か素敵なことが起こりそうでわくわくするような気持ちも感じた。



 私はベランダに出て、月をその手鏡に映しこんだ。



 (どうか、佐々木さんと両想いになれますように…!)



お月様に願いを込めた。
 数時間ほど、月のパワーを鏡に込めたら、今度は自分の姿を鏡に映しこむ。



これで、今日の手順は一応終わりだ。
あとは、この手鏡に21日間、毎日、何度も自分の顔を映すこと。
もちろん、自分以外の人を映してはいけないし、他人に鏡を触らせてもいけない。
そして、その後、佐々木さんを映しこめばそれでおまじないは完了する。



 不思議なことに、鏡を見るのが楽しくなった。
 今までの私は、鏡なんて滅多に見なかったのに…
不思議なのはそれだけじゃなかった。
 日が経つに連れ、周りの人から綺麗になったと言われるようになったのだ。



 最初は信じられなかったけど、何人かに言われるようになり、それも鏡の魔力のせいかと思うと、嬉しくてたまらなかった。



 21日はあっという間に過ぎ去り、あとは佐々木さんを映すだけとなったけど、それがなかなか難しかった。
なんせ他の人は映してはいけないのだから。



だけど、数日経った時、偶然、機会はやって来た。
 会社の忘年会で、佐々木さんがトイレに行った時、私も席を離れた。
 私は化粧直しをするようなふりをして、トイレから出て来た佐々木さんを鏡に映し込んだのだ。
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