寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ

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王都組⑦

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アレは凄かった。
後学の為に見せて頂いたが、本当に凄かった。

エリアス様はエゲツなくて、あの凶悪な玩具も数珠状のも容赦なく取れなくなるんじゃないかと思うくらい深く挿れた。未知の場所を突かれたレオノールは何度もヒクヒクと身体を痙攣させて獣のような叫び声を上げていた。

最初の方は「お前ら全員殺してやる。」、「地獄に送ってやる。」、「見るな。描くな。出て行け!! 」と強がっていたレオノールも泣きじゃくりながら喘いでいた。シュヴェルトに縋って、甘えるようによがる様がもう…語録がないわたくしには凄いしか言えない。


いやぁ、もうアレは絵だけじゃ表せない。録音機が欲しい。

「蓄音機の原理で何とか作れないかな…。」

「戻って来てヴィル。後、涎を拭いて。」

わたくしを見て、ドン引きな我が婚約者カール。流石にレオノールの情事の解説は顔を真っ赤にして「やめて下さい。」とお願いされた。

まだ、初々しいな。
腐の沼の底はまだ先ぞ。

コト、コトと綺麗に舗装された道を小さく馬車が揺れながら向かうはハースト伯爵家。

最近、ハースト領の発展は目を見張るものだ。綺麗に舗装された道。町は前来た時より栄えている。

皆、口々にフェルゼン・ハースト伯爵は良い領主だという。しかしその一方でフェルゼン・ハースト伯爵は怖い人だと直接会ったものは言う。

「成る程。これは怖がりますわね。」

悪役令息、フェルゼン・ハースト。
彼はあろう事が弟であるシュネー・ハーストを愛し、娶ろうと画策していた男。

彼は普段優しい兄の仮面を被り、極度のブラコンではあるが少し抜けた優しい性格を演じている。

皆、彼には気を抜き、ゲームで確かバッドエンド『君は僕の花嫁。シュネー監禁・近親相姦エンド』を迎えても、表向きは良い領主として領民に慕われており、それがまたシュネーを苦しめる。裏の顔を知るのはシュネーだけ。シュネーにとって生まれ育ったハースト領がもう二度と羽ばたけない鳥籠へと変わるのだ。

しかし今、目の前にいる男はどうだろう?

片足を書斎のテーブルに放り、片手には酒瓶が握られている。髪はボサボサで風呂に入っていないのだろうか少し臭い。仕事はしているみたいだが、その姿にはある意味優秀だったゲームのフェルゼン・ハースト姿はなく、ただの浮浪者にしかみえない。


「シュネー様を手放してから心ここに在らずでして…。優秀な方ですから仕事は出来るからハースト領は発展していますが、我々は心配で……。」

フェルゼンの書斎に通される前、ハースト家の執事がポロッと本音を漏らした。どうやらシュネーにフラれ、その上兄弟の縁も切られた衝撃は相当なもののようで立ち直れてないらしい。

「それでもハースト領を発展させるって、フェルゼンはシュネー様の事今でも好きなんだね。」

カールは少し複雑そうな顔を浮かべた。

カールもあの日以降シュネーの事をずっと心配していた。そしてハースト家とシュネーが決裂した時の事もテラスの茂みで盗み聞きしてたわたくしから詳しく聞いている。

シュネーの事と同時にフェルゼンの事も気に掛けていた。

フェルゼンはカールの事をどう思っているか分からないがカールにとってフェルゼンは第一王子の『友人』仲間だ。優しい性根の彼にとって友人でフェルゼンが極度のブラコンと知っていた分、余計、心配だったのだろう。

「勿論、シュネー様にした事は許せないよ。でもね、ヴィル。どんな人間だろうとやっぱり、好きな人に見放されるのは辛いよ。それがフェルゼンが招いた結果だとしても。」

そう話していざ、開けて見ればこれだ。
カールは変わり果てた友に絶句していた。

本当にわたくしの婚約者は優しい。わたくしは逆立ちしたって、コイツに同情なんてしない。

シュネーはコイツの所為で更に生き辛くなってしまった。
コイツがシュネーを幸せから遠ざけた。

「失礼致しますわ。ハースト伯爵、お覚悟!! 」

カールの制止も掻い潜り、私の鉄拳が火を噴く。

唸れ!! 私の鉄拳!! 
猪系魔獣すらも昏倒させるこの拳!!

しかしフェルゼンは容赦なくその鉄拳を酒瓶で叩き落とした。

「フェルゼーンッ!? ちょっ、ちょ、それ、僕の婚約者!! 」

わたくしの拳を叩き落とし、割れた酒瓶をわたくしの顔の前に突き付ける。

その目は死んでいるのに完璧な動きだ。

「フンッ、やりますわね。ですが、シュネー様の仇を取らせて頂きますの。わたくしの…よくもわたくしの楽しいBL ライフを!! 」

「後半の言葉が全てを台無しにしてるよ、ヴィル。」

そんなわたくし達のやりとりを何処か遠くの世界の出来事のようにフェルゼンはさっさと興味をなくし、床に置いてあった酒瓶を開封する。開けた瞬間、ラッパ飲みだ。

「フェルゼン……。」

完全に落ちぶれたような態度(領主としては完璧に仕事をしているので別に本当に落ちぶれてはいない)を取るフェルゼンにカールは更に衝撃を受ける。

ウルウルと蜂蜜色の瞳が潤む。

その姿はヒーローを心配するヒロインのよう。フェルゼン、ウチのカールはやらんぞ。

しかしうちのヒロインカールはただじゃ落ち込まない。
グッと涙を堪えて、フェルゼンの前へ進み出る。

「フェルゼン!! 僕達は君に手伝って欲しい事がある。」

「…………。」

「これからシャルロッテ侯爵家に行くんだ。そこで君に助力を願いたいんだよ。」

「…………。」

「シャルロッテ侯爵家にいるレイピア使いの暗殺者を見つけ出したいんだ。その暗殺者はゲルダ・ファーデンの死の生き証人。彼を手に入れれば第二王子に掛けられた冤罪を晴らす糸口になるかもしれない。」

「…………。」

「お願いだよ。……シュネー様の為でもあるんだよ。」

「………………シュネー? 」

必死にうちのヒロインカールが目を潤ませて懇願しているのに此奴、シュネーの所にしか反応しなかった。

死んだような目をしていた筈の目に少し生気が宿る。
どんだけ未練タラタラなんだ。

「シュネー…がどうかしたのか。」

「知らないの? シュネー様は国王、第一王子毒殺及び国家転覆罪を被せられたリヒト殿下を守る為に『従騎士』になったんだよ。『従騎士』になったからリヒト殿下とともに『刑受の森』に流刑になったんだ。……知らなかったの? 」

フェルゼンの表情が驚愕の色に変わり、やがて、真っ青に変わった。

「シュネー…が……流刑? 『刑受の森』に? 第二王子の話は聞いたが……。まさか、おい、ルノ、お前か!! 」

フェルゼンに呼ばれて先程案内してくれた執事が天井から降りてきた。何故天井?

「フェルゼン様をこれ以上苦しめない為です。」

「嘘を付け。オマエはそんな殊勝な人間じゃないでしょ? ……僕にシュネーを手に入れるチャンスを与えない為だろ。」

「何の事やら? 手に入れるといいましてもシュネー様はもう元王子の『従騎士』ですよ。貴方にシュネー様を手に入れるチャンスはもうないです。……シュネー様が逃げ切れて良かったですよ。こんな変態から。」

「オマエ……。」

「別にシュネー様の味方って訳でもないですよ。わたくしは、貴方の執事です。」

いきなり登場したルノなる執事はフェルゼン相手に華麗に言葉の応酬で返す。

その目は何故だろう。
主人を慕う従者というよりはドSの目をしている。……こんなキャラ居なかったけど『花君』に。モブか?

「そんなにチャンスが欲しくば手伝って差し上げたらどうです? わたくしは別にこのまま、腐っていく貴方を見ているのは……快感……いえ、悲しゅうございます。どうせなら可愛いを救う手伝いをなさっては? 兄弟の縁は戻してくれるかもしれませんよ? 」

三十代前半と思われる大人の風格のあるルノはなんだか怪しい雰囲気を醸し出し、主人であるフェルゼンをギラギラした目で見ている。フェルゼンはそんなルノは忌々しそうに一瞥し、溜息をついた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

なんちゃってキャラ紹介

ヴィルマ・イーリス
なんちゃって男爵令嬢にして前世の記憶を持つ。男爵令嬢なのに魔獣とファイトする。アルヴィンから人型魔獣の称号をもらう。BL はハードプレイでもいける口。

カール・アーバイン
ヴィルマの婚約者。おそらくこの作品のヒロイン格の一人。ヴィルマ? ああ、アレはただの人型魔獣です。

フェルゼン・ハースト
色々いっちゃってるやばい奴。
シュネーのトラウマを加速させたシュネーの実の兄。最初は優しい兄ちゃん枠でシュネーの癒しとして出すつもりだったのに勝手に変態街道を走り出した男。

ルノ
ハースト家の執事。今年で三十二歳。あれでも主人であるフェルゼンの事はおそらく慕ってる。

エリアス・クランクハイト
鬼畜。『クランクハイトの黒薔薇』。シュネー以外に容赦がない。

レオノール・デーゲン
苦労人のツンデレ。それでも旦那が好き。

シュヴェルト・デーゲン
最近エリアスと手を組み、手に負えない騎士団長所の次男。

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