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王都組⑨
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ずっと憧れてた。
ずっと求めていた。
絵本を読み、恋愛小説を読み、ずっと憧れていた愛ある結婚。でも貴族社会で、侯爵に生まれたワタクシにはそれは所詮物語のもの。
「ねぇ、何で君はこんな所で身を縮めているの? 」
父に王子達と懇意になってこいと送り出された王宮のお茶会で、心の弱いワタクシは重圧に負けそうになって庭園に隠れていた。
そんなワタクシを見つけ出して手を差し出してくれたあの人。
ワタクシにとってあの人が白馬の王子様だった。でもワタクシはその後直ぐにリヒト様との婚約が決まってしまった。
淡い初恋だった。
たった一瞬で破れた初恋。
それでもワタクシは何時だって貴方を目で追っていた。せめて、リヒト様と結婚するまでは少しだけ。少しだけでも貴方の姿を焼き付けていたい。
◇
クリスタ・シャルロッテは夢見がちな所がある。
だからクリスタは激しい系のBLではなく、純愛系のBLが好き。まぁ、そこはカールにも通じる所があるが。
「とっても、どうでもいい情報だね。」
ふぁっとフェルゼンが退屈そうに欠伸をする。基本シュネーの事以外どうでもいいこの人は本当にどうでも良さそうに私とクリスタとの美しき友情話を聞き流している。
フェルゼンのもとへ寄った所為で気付けばシャルロッテ侯爵家に着いたのは夜。
流石に明日に出直そうと思ったのだが、クリスタは快く迎え入れてくれた。
何時ものカールと私との女子会の際はクリスタの部屋で恋バナやBL談義に花を咲かせるのだが、フェルゼンが居るので中庭だ。
白い花々が咲き乱れる中庭に白い鳥籠のような可愛いテラス。白いワンピースを着たクリスタの姿は悪役令嬢というには程遠い姿で清純さがある。
顔は悪役顔の彼女だが、部屋の色も服は白で統一。何時か真っ白なウェディングドレスを着て素敵なお嫁さんになるのが夢な可愛い女の子だ。
「まぁ、今日はフェルゼン様も一緒ですのね。」
「お久しぶりです。クリスタ様。」
フェルゼンが何時もの少し抜けた優しい善人の皮を被り、クリスタに挨拶する。
その手際は見事で、さっきまで興味なさそうに退屈そうにしてた姿は一欠片もない。
「素敵ですね。本当にクリスタ様は白がお似合いで。」
「いえ、そんな…。フェルゼン様にそう言って頂けて嬉しい限りですわ。」
クリスタが褒められて嬉しそうに頰を赤らめる。
まさか…、シュネーの為に純粋なクリスタを堕とす気じゃないだろうな。
「ローレン第一王子いえ、ローレン王太子とご婚約なさるのですよね。おめでとうございます。」
お祝いですと何時手に入れたのだか分からない花束をクリスタに渡す。
えっ?
クリスタ、ローレン王子と婚約すんの!?
ローレン王子、王太子になったの!?
驚く私に耳打ちで、「昨日、王太子になったんだよ、ヴィル。」とカールが教えてくれたが、何故知らないのって顔をしてた。
だって前世でも『花君』のローレン王子には興味がなかったんだもん。ローレン攻略の時もずっと過去の恋愛引き摺ってウジウジと面倒……、ごほんっ。
うん、そういえば昨日は何だか王都も騒がしかったような気がする。そんな気がしてきた。
「ええ……、ありがとうございます。」
フェルゼンから花束を受け取り、微笑むクリスタ。ずっとローレン王子を慕っていた筈ほクリスタだが、その表情はあまり嬉しくなさそう。
リヒト王子の事があるから素直に喜べないのだろうか?
クリスタは悪役令嬢なのに優しいからな。
そんな事を想って心配してクリスタを見ているとクリスタに、にっこりと優しくフェルゼンが微笑んで。
「貴女はそうやって何時まで自身を偽るつもりですか? 」
……訳の分からない事を言い出した。
何事!?
偽るって何?
その言葉にクリスタの目がカッ開かれ、その瞳は目に見えて泳ぐ。
えっ、図星なの!?
「貴女は別にローレンの事好きじゃないでしょう? ローレンの事を目で追ってたのも、僕に聞いてたのもフリだ。実際、貴女自身、ローレンに何の興味もない。きっとリヒト王子が駄目になった時の保険をシャルロッテ侯爵がかけさせていただけだ。」
「…………。」
「第二王子との婚約は当主の意志。しかし娘が本当に愛していたのは第一王子。そんな時、第二王子は罪を犯し、婚約は破棄。失意の中、今度こそ娘は愛したいた第一王子と晴れて結ばれて二人はこの国を力を合わせて守っていくのでした。めでたしめでたし。」
フェルゼンの顔から被っていた筈の善人面が剥がれる。その表情は冷え冷えとしていた。
「本当に馬鹿だよね。貴女のお父上。恋愛小説じゃないんだからそんな簡単に物事が行く訳ないのにね。……そもそもあの、ローレンが婚約を受ける訳がない。アイツは不器用で一途だ。」
クリスタの目尻に涙が溜まる。
身体は寒空の下にいるようにブルブルと震えている。
着いた瞬間、アクセル全開で始まった修羅場。
悪役令嬢なのに正義感溢れるクリスタに助力を頼もうと着た筈の私達は何故か背景と化してる(レオノールが仲間になったんだからクリスタもイケると安直に考えていた)。
ー どういう事!?
「なら…、ワタクシはどうすれば良いのですか!? ワタクシは侯爵令嬢。シャルロッテ家の為にこの身を捧げなければならないの。好きでもない相手でも一生……一生、愛ある幸せな結婚は叶わないッ!! 」
ワッとついに泣き出してしまったクリスタ。ストロベリーブロンドの縦ロールの髪が悲しげに揺れる。
えっ!? 恋バナでずっと第一王子の話してたじゃん!!
私その話もびっくりしたんだからね!!
リヒトのルートで出でくる悪役令嬢だからてっきりリヒトの事が好きだと思ってたのにローレン好きだって……嘘なのアレ!?
同じ腐の沼にどっぷりハマった戦友の筈だったのに。
私とカールは衝撃の事実に今にもぶっ倒れそうだった。
信じてたのにーーッ!!
我ら生まれは違えど同じ腐の盃飲んだ兄弟だろぉーーッ!!
しかし目の前では尚も劇的な寸劇が繰り広げられている。
どっかの悲恋の物語のようにクリスタがその場に泣き崩れ、縋るようにフェルゼンの服を掴む。
「ワタクシは…もう、耐えられない。それでも例え思惑のある婚約でも何時かは愛そうと思っていたリヒト様は無実の罪で流刑。次はローレン様まで、父は…。愛もない、周りを苦しめるだけの婚約。我が家の利益の為だけに…こんな酷い。」
「で? 」
ー その返し酷くない!?
クリスタがリヒトの事や周囲の人達の事を考えて更に苦しんでいるというのに何の感慨もない顔でただそれを見つめてる。
鬼だ。
シュネーの事以外本当に興味ないのな!!
クズだよ、オマエ!!
フェルゼンへのない好感度が更に降下する中、鬼畜は更にクリスタを追い詰める。
「人はそういうものでしょう? どう綺麗事言ったって、皆自分の事ばかりだ。何悲劇のヒロインぶってるの? 何も出来ない、しもしない小娘が。」
「ちょっとフェルゼンくんッ!! それは酷……。」
「自身の望みくらい。自身で掴みとればいい。それすら出来ない、しもしない癖にお偉い事で。」
「ちょっとぉ!? 」
もうクリスタは悪役顔も崩れる程グズグズに泣いている。
テメェの血は何色だ!!
「ならッ、……なら、ワタクシを貴方の手で殺して下さい。」
「えっ!? ちょっとクリスタ様!! 」
「ワタクシの本当の望みは愛する方と結ばれる事ですわ。本当はッ…本当は好きでもない相手と結婚するのもッ、その先もッイヤ!! 」
「何で僕が…面倒臭い。」
「ちょっと屑は黙りなさいな!! クリスタ様、落ち着いて。」
ついにクリスタが壊れた。
相当今までのストレスがたまっていたのかもしれない。……と少しは思うが確実にこの屑の所為だろ。
クリスタは子供のように泣きじゃくりながらテーブルに用意されていたケーキ用のナイフを持ちだし、フェルゼンに渡す。
フェルゼンはそれをさも面倒臭そうに受け取……受けとんな!!
止めろやッ!!
「どうせ…、どうせ赦してもらえない。身分が低いと父は赦して下さらない。だったら貴方の手で殺してッ!! 」
「落ち着い…。」
「面倒…。」
「黙れッ、フェルゼンッ!! 貴方の撒いたタネでしょう!? 止めて下さいな!! 」
「うるしゃーい!! もうほっといてぇーッ。」
こっちは必死に場を鎮めようとしているのにクリスタが地団駄を踏む。
何時もの令嬢らしい姿は全くない。
何時もの友人想いな姿も。
後、興奮し過ぎて舌が回ってない…。
「わたくちは、ずっとフェルゼンしゃまが好きなのぉ。ずっと、第一おーじ話きくのを口実にしてたんだもん。フェルゼンしゃまとおはなし、したかっただけだもん。だからこりょしてよ。叶わないんだったらぁー。」
ポカポカとフェルゼンをクリスタが殴る。子供の駄々のようだが、内容は恐ろしい。
それよりクリスタはフェルゼンが好きなの!? 趣味悪ッ!!
「そういえば…クリスタ様ってフェルゼン × シュネー推しだったよね。まさか……冊子のシュネー様に自身を置き換えてたとか……。」
カールが苦笑いを浮かべる。
そういや何を勧めても頑なにフェル × シュネ 推しだった。
シュネーと自身を置き換えて…いた?
まさか腐女子では…ない!?
私の冊子楽しみにしてたのってそういう……。
「貴方も本当に馬鹿だね。」
「うわぁーんッ。ごろじでぇー。」
「何じゃこりゃ。」
混沌だ。
フェルゼンの存在で場が一気に混沌だ。
当の本人はどうでも良さそう。
いや、せめて関心を持て。
頼むから。
やがてフェルゼンは面倒臭そうに受け取ったケーキ用のナイフを振り上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
なんちゃってキャラ紹介
ヴィルマ・イーリス
なんちゃって男爵令嬢。前世の記憶持ち。本来のゲームのシナリオではカール・アーバインルートの主人公のライバル。だが、ゲームの彼女は今の真逆で気弱。ボスの悪役令嬢クリスタに泣きつく。
カール・アーバイン
伯爵家子息でヴィルマの婚約者。ゲームでは攻略対象で女装癖が主軸になるが、ここでは平気で女装するし、女子力は日に日に高くなって行く。
フェルゼン・ハースト
シュネールートの悪役令息にしてシュネーの血の繋がった兄。エリアスと同じでシュネー以外に容赦がない。女性でも子供でも関係ない。血の色は勿論、赤。
クリスタ・シャルロッテ
リヒトの元婚約者。侯爵令嬢にして悪役。しかしその優しいその性根から悪役になれてない。寧ろ友達想いのいい人。なんちゃって悪役令嬢。だが……。
ローレン
フォルメルン王国の元第一王子。つい最近、王太子になった。ヴィルマは『花君』の攻略対象なのにローレンに興味がない。婚約者の『友人』なのに……。
ずっと求めていた。
絵本を読み、恋愛小説を読み、ずっと憧れていた愛ある結婚。でも貴族社会で、侯爵に生まれたワタクシにはそれは所詮物語のもの。
「ねぇ、何で君はこんな所で身を縮めているの? 」
父に王子達と懇意になってこいと送り出された王宮のお茶会で、心の弱いワタクシは重圧に負けそうになって庭園に隠れていた。
そんなワタクシを見つけ出して手を差し出してくれたあの人。
ワタクシにとってあの人が白馬の王子様だった。でもワタクシはその後直ぐにリヒト様との婚約が決まってしまった。
淡い初恋だった。
たった一瞬で破れた初恋。
それでもワタクシは何時だって貴方を目で追っていた。せめて、リヒト様と結婚するまでは少しだけ。少しだけでも貴方の姿を焼き付けていたい。
◇
クリスタ・シャルロッテは夢見がちな所がある。
だからクリスタは激しい系のBLではなく、純愛系のBLが好き。まぁ、そこはカールにも通じる所があるが。
「とっても、どうでもいい情報だね。」
ふぁっとフェルゼンが退屈そうに欠伸をする。基本シュネーの事以外どうでもいいこの人は本当にどうでも良さそうに私とクリスタとの美しき友情話を聞き流している。
フェルゼンのもとへ寄った所為で気付けばシャルロッテ侯爵家に着いたのは夜。
流石に明日に出直そうと思ったのだが、クリスタは快く迎え入れてくれた。
何時ものカールと私との女子会の際はクリスタの部屋で恋バナやBL談義に花を咲かせるのだが、フェルゼンが居るので中庭だ。
白い花々が咲き乱れる中庭に白い鳥籠のような可愛いテラス。白いワンピースを着たクリスタの姿は悪役令嬢というには程遠い姿で清純さがある。
顔は悪役顔の彼女だが、部屋の色も服は白で統一。何時か真っ白なウェディングドレスを着て素敵なお嫁さんになるのが夢な可愛い女の子だ。
「まぁ、今日はフェルゼン様も一緒ですのね。」
「お久しぶりです。クリスタ様。」
フェルゼンが何時もの少し抜けた優しい善人の皮を被り、クリスタに挨拶する。
その手際は見事で、さっきまで興味なさそうに退屈そうにしてた姿は一欠片もない。
「素敵ですね。本当にクリスタ様は白がお似合いで。」
「いえ、そんな…。フェルゼン様にそう言って頂けて嬉しい限りですわ。」
クリスタが褒められて嬉しそうに頰を赤らめる。
まさか…、シュネーの為に純粋なクリスタを堕とす気じゃないだろうな。
「ローレン第一王子いえ、ローレン王太子とご婚約なさるのですよね。おめでとうございます。」
お祝いですと何時手に入れたのだか分からない花束をクリスタに渡す。
えっ?
クリスタ、ローレン王子と婚約すんの!?
ローレン王子、王太子になったの!?
驚く私に耳打ちで、「昨日、王太子になったんだよ、ヴィル。」とカールが教えてくれたが、何故知らないのって顔をしてた。
だって前世でも『花君』のローレン王子には興味がなかったんだもん。ローレン攻略の時もずっと過去の恋愛引き摺ってウジウジと面倒……、ごほんっ。
うん、そういえば昨日は何だか王都も騒がしかったような気がする。そんな気がしてきた。
「ええ……、ありがとうございます。」
フェルゼンから花束を受け取り、微笑むクリスタ。ずっとローレン王子を慕っていた筈ほクリスタだが、その表情はあまり嬉しくなさそう。
リヒト王子の事があるから素直に喜べないのだろうか?
クリスタは悪役令嬢なのに優しいからな。
そんな事を想って心配してクリスタを見ているとクリスタに、にっこりと優しくフェルゼンが微笑んで。
「貴女はそうやって何時まで自身を偽るつもりですか? 」
……訳の分からない事を言い出した。
何事!?
偽るって何?
その言葉にクリスタの目がカッ開かれ、その瞳は目に見えて泳ぐ。
えっ、図星なの!?
「貴女は別にローレンの事好きじゃないでしょう? ローレンの事を目で追ってたのも、僕に聞いてたのもフリだ。実際、貴女自身、ローレンに何の興味もない。きっとリヒト王子が駄目になった時の保険をシャルロッテ侯爵がかけさせていただけだ。」
「…………。」
「第二王子との婚約は当主の意志。しかし娘が本当に愛していたのは第一王子。そんな時、第二王子は罪を犯し、婚約は破棄。失意の中、今度こそ娘は愛したいた第一王子と晴れて結ばれて二人はこの国を力を合わせて守っていくのでした。めでたしめでたし。」
フェルゼンの顔から被っていた筈の善人面が剥がれる。その表情は冷え冷えとしていた。
「本当に馬鹿だよね。貴女のお父上。恋愛小説じゃないんだからそんな簡単に物事が行く訳ないのにね。……そもそもあの、ローレンが婚約を受ける訳がない。アイツは不器用で一途だ。」
クリスタの目尻に涙が溜まる。
身体は寒空の下にいるようにブルブルと震えている。
着いた瞬間、アクセル全開で始まった修羅場。
悪役令嬢なのに正義感溢れるクリスタに助力を頼もうと着た筈の私達は何故か背景と化してる(レオノールが仲間になったんだからクリスタもイケると安直に考えていた)。
ー どういう事!?
「なら…、ワタクシはどうすれば良いのですか!? ワタクシは侯爵令嬢。シャルロッテ家の為にこの身を捧げなければならないの。好きでもない相手でも一生……一生、愛ある幸せな結婚は叶わないッ!! 」
ワッとついに泣き出してしまったクリスタ。ストロベリーブロンドの縦ロールの髪が悲しげに揺れる。
えっ!? 恋バナでずっと第一王子の話してたじゃん!!
私その話もびっくりしたんだからね!!
リヒトのルートで出でくる悪役令嬢だからてっきりリヒトの事が好きだと思ってたのにローレン好きだって……嘘なのアレ!?
同じ腐の沼にどっぷりハマった戦友の筈だったのに。
私とカールは衝撃の事実に今にもぶっ倒れそうだった。
信じてたのにーーッ!!
我ら生まれは違えど同じ腐の盃飲んだ兄弟だろぉーーッ!!
しかし目の前では尚も劇的な寸劇が繰り広げられている。
どっかの悲恋の物語のようにクリスタがその場に泣き崩れ、縋るようにフェルゼンの服を掴む。
「ワタクシは…もう、耐えられない。それでも例え思惑のある婚約でも何時かは愛そうと思っていたリヒト様は無実の罪で流刑。次はローレン様まで、父は…。愛もない、周りを苦しめるだけの婚約。我が家の利益の為だけに…こんな酷い。」
「で? 」
ー その返し酷くない!?
クリスタがリヒトの事や周囲の人達の事を考えて更に苦しんでいるというのに何の感慨もない顔でただそれを見つめてる。
鬼だ。
シュネーの事以外本当に興味ないのな!!
クズだよ、オマエ!!
フェルゼンへのない好感度が更に降下する中、鬼畜は更にクリスタを追い詰める。
「人はそういうものでしょう? どう綺麗事言ったって、皆自分の事ばかりだ。何悲劇のヒロインぶってるの? 何も出来ない、しもしない小娘が。」
「ちょっとフェルゼンくんッ!! それは酷……。」
「自身の望みくらい。自身で掴みとればいい。それすら出来ない、しもしない癖にお偉い事で。」
「ちょっとぉ!? 」
もうクリスタは悪役顔も崩れる程グズグズに泣いている。
テメェの血は何色だ!!
「ならッ、……なら、ワタクシを貴方の手で殺して下さい。」
「えっ!? ちょっとクリスタ様!! 」
「ワタクシの本当の望みは愛する方と結ばれる事ですわ。本当はッ…本当は好きでもない相手と結婚するのもッ、その先もッイヤ!! 」
「何で僕が…面倒臭い。」
「ちょっと屑は黙りなさいな!! クリスタ様、落ち着いて。」
ついにクリスタが壊れた。
相当今までのストレスがたまっていたのかもしれない。……と少しは思うが確実にこの屑の所為だろ。
クリスタは子供のように泣きじゃくりながらテーブルに用意されていたケーキ用のナイフを持ちだし、フェルゼンに渡す。
フェルゼンはそれをさも面倒臭そうに受け取……受けとんな!!
止めろやッ!!
「どうせ…、どうせ赦してもらえない。身分が低いと父は赦して下さらない。だったら貴方の手で殺してッ!! 」
「落ち着い…。」
「面倒…。」
「黙れッ、フェルゼンッ!! 貴方の撒いたタネでしょう!? 止めて下さいな!! 」
「うるしゃーい!! もうほっといてぇーッ。」
こっちは必死に場を鎮めようとしているのにクリスタが地団駄を踏む。
何時もの令嬢らしい姿は全くない。
何時もの友人想いな姿も。
後、興奮し過ぎて舌が回ってない…。
「わたくちは、ずっとフェルゼンしゃまが好きなのぉ。ずっと、第一おーじ話きくのを口実にしてたんだもん。フェルゼンしゃまとおはなし、したかっただけだもん。だからこりょしてよ。叶わないんだったらぁー。」
ポカポカとフェルゼンをクリスタが殴る。子供の駄々のようだが、内容は恐ろしい。
それよりクリスタはフェルゼンが好きなの!? 趣味悪ッ!!
「そういえば…クリスタ様ってフェルゼン × シュネー推しだったよね。まさか……冊子のシュネー様に自身を置き換えてたとか……。」
カールが苦笑いを浮かべる。
そういや何を勧めても頑なにフェル × シュネ 推しだった。
シュネーと自身を置き換えて…いた?
まさか腐女子では…ない!?
私の冊子楽しみにしてたのってそういう……。
「貴方も本当に馬鹿だね。」
「うわぁーんッ。ごろじでぇー。」
「何じゃこりゃ。」
混沌だ。
フェルゼンの存在で場が一気に混沌だ。
当の本人はどうでも良さそう。
いや、せめて関心を持て。
頼むから。
やがてフェルゼンは面倒臭そうに受け取ったケーキ用のナイフを振り上げた。
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なんちゃって男爵令嬢。前世の記憶持ち。本来のゲームのシナリオではカール・アーバインルートの主人公のライバル。だが、ゲームの彼女は今の真逆で気弱。ボスの悪役令嬢クリスタに泣きつく。
カール・アーバイン
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フェルゼン・ハースト
シュネールートの悪役令息にしてシュネーの血の繋がった兄。エリアスと同じでシュネー以外に容赦がない。女性でも子供でも関係ない。血の色は勿論、赤。
クリスタ・シャルロッテ
リヒトの元婚約者。侯爵令嬢にして悪役。しかしその優しいその性根から悪役になれてない。寧ろ友達想いのいい人。なんちゃって悪役令嬢。だが……。
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だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
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