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モーサン町編
まるで、もう一つのJapan
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──日差しが眩しい。心地よい風に起こされて、目を開くと、中世の町のようで、やっぱ日本のような...... 俺が理解するのには時間が掛かってしまうような、そんな世界が広がっていた。
俺の背中には、硬い幹のような感触が広がっていた。どうやら、あの女神は気を利かせて目立たない木陰へと移動させてくれたようだ。ツンデレの特徴だな全く。
とはいえ、この学生服のまま歩いていたら、一人だけ浮いた存在となってしまうであろう。まずは女神の萌子にも言われた通り、服屋へと向かう事にしようか。
俺は学ランを脱いで、町の中を歩こうとした...... あれ? みんなパーカーやTシャツみたいなのを着ている? もっと布が多めで、ひらひらとした服を着た奴なんて誰一人いない? ......ここ異世界なの?
町は、スーパーや郵便局、工具屋などと日本で見るものばかりだった。武器屋や精霊所といった場所はあちらこちらにない。どういう事なんだ......。
「いらしゃいませー!」
木陰から一番近い服屋に入店すると、ユニ〇ロと同じような服がずらっと並んでいた。商品名まで言うとアウトな気がするから言わないが、着心地が良さそうな素材を使っているようだ。......いや何で?
「あのー店員さん? なんかひらひらとしたような服とか売ってないんですかね?」
「そのような商品をお求めならば、コスプレショップで買ってくださいね」
あのヒラヒラとした服はこっちの世界でもコスプレ扱い!? マジで!? ...... ここでグダグダやってたらめんどくさそうだし、普通にパーカーとジーパンを買おうと、レジ籠に入れた。
「はい、そちらの商品二点で100円です」
「やっす! 在庫処分品なんですかこれ!?」
「アハハ! お客様ってば冗談を! 通常価格に決まってるじゃないですか!」
だとしたらここの国のレート安すぎんだろ! 日本にいた頃の俺のお小遣いだったら一生分の服がここで買えちゃうんですけど!?
服屋に行くだけでこんなに疲れるもんなのだろうか...... でも、パーカーを着たらなんか防御力が上がった気がするかも。いや、気のせいか......。
そういえば、今夜の宿屋を探さなくては。お、ここに地図がある。忘れないようにスマホで撮っておこ...... あれ、ない、ない、ない!? どこのポケットにも入ってないだと!?
〔駿我ー聞こえるー? あんたの脳に直接話しかけるっていう典型的なやつやってるんだけどー〕
「ああ聞こえるよこの野郎! なんだよこの町は! 日本と全く変わってないじゃないか!」
〔そうよ、だってこのモーサン町は日本人が作りだしたと言われている町だもん。文句があるなら町役場にでも行ってみれば? 町長がもしかしたら日本人かもしれないしね〕
「そうなんだ……じゃなくて! 俺のスマホが無いんだよ! そっちにある!?」
〔あースマホは私の手にあるわ。この世界はスマホなんてもん存在しないからいらないでしょ。カメラに頼らないで町の人とかに聞きなさいよ。少しでも関りは持っておいた方がいいわ〕
「何だよそれ! 異世界という不便な世界に来たんだから少しは便利な物持たせてもいいだろ!?」
〔あんたこの世界不便って感じているの? 日本と変わらない町で過ごすのが不便? わがままねあんた。じゃあここで切るわね〕
「あ、おいちょっと待て! 萌子! 萌子ぉ!」
彼女の名前を叫んでも、返事は帰ってこなかった。ふと辺りを見ると、町民の冷たい視線が感じられた。これは酷い。
「よ、そこの兄ちゃん。話を聞いてる限りだと、町役場に行きたいみたいだね」
「え、あ、はい......」
こんな俺でも受け入れてくれたのか、ツインテールで小柄な少女が俺に話し掛けてくれた。優しい子!
「私がそこまで連れて行ってあげるよ。ちょうど私も用があってね」
「あ、ありがとう!」
「さ、行こ?」
俺はツインテ少女に手を引かれて、町役場まで行くことにした。
歩いている道中、俺は彼女に数々の質問する事にした。この町はおかしいからな。
「私はシナフィン。兄ちゃんの名前は?」
「俺は駿我っていうんだ」
「へー、日本人かー」
「そうそう……おい待て、今日本人って言ったか? 日本という国を知ってるのか?」
「当たり前よ。なんせ、この町は日本を参考にして造られたと言われてるもの」
この町は日本を参考にした? ここまさか地球じゃないよね? なんで日本を知ってるの?
「まあ、ここの町長が来てから、こんな町に変わっちゃったんだけどね。 昔はごく普通のヒラヒラとした服を来て、魔法学校もあって、冒険者の卵が沢山生まれる町だったんだよ」
「シナフィンは、今の生活嫌?」
「うーん...... 嫌じゃないけど、やっぱり昔の雰囲気の方がいいかも......」
そうだよな。いきなり町がガラリと変わって、文化も色々と変わってきちゃって、そんなの嫌だもんな。
「あ、あそこが町役場だよ、早速中に入ろ…… っ!?」
「どうした...... !?」
町役場には、スキンヘッドで、とても大きな斧を持った盗賊のようなおじさんが立っていた。修羅場って所だろうか……。
「あ゛あ゛? なんだテメェら、ちょっと今はここに入るべき状況じゃねぇんだ。 命が惜しければ、さっさと出ていくんだな」
「駿我! 呆然と見てないで早くこっちに来て!」
「ご、ごめん! すぐ行く!」
シナフィンに呼ばれて、俺は近くの建物に逃げ込んだ。
「もう何してんの! あいつの言う通り死にたいの!?」
「いや...... ようやく異世界っぽい事が出来たなぁって思ってさ」
「はぁ?」
だってしょうがないじゃん! 想像していた異世界と全く違うんだもん! ちょっとはワクワクしてもいいじゃん!
とは言いながらも、やっぱり怖い物は怖いので、怯えながら町役場の中を見ていると、一人の女性が出てきた。
「──盗賊ね。ここで争わないで、表で戦いましょう。私、戦いの腕には自信があるの」
そう言うと女性は、腰から刀を取り出し、戦闘体制に入った。これだよコレ! 異世界はこうでなくっちゃ!
「ほう? あまり舐めたようなこと言ってるんじゃねぇぜ? 女でも容赦しねぇからなぁ!! うぉらぁ!」
盗賊の男は腕に力を込めて、溜めた力で女性を斧で降りかかろうとしていた。俺は怖くて目を瞑ってしまった...... が、キン! という音だけが響き、辺りは静寂に包まれていた。様子がおかしいと思い、目を開いて女性を見ると、刀で斧をガードしていた。
「なっ、なんだその武器は!?」
「あなた、刀をご存じないかしら? 日本で作られた伝統的な武器よ。この世界にある色々な武器を素材にして作りだした、私の自慢の武器。どんな物でもガード出来ると言われているわ。あなたも刀の餌食になりたくなければ、さっさとこの町から出ることね」
「...... ほう。結構いい物を持ってんじゃねえかぁ。直接金を奪うよりも、その刀とやらを売って金にした方がよっぽど儲かるわぁ。では頂くとするかなぁ!!」
盗賊の男はまた女性に向かって斧を振りかぶろうとした。
「......話が理解できないようね。だったら痛い目にあってもらおうかしら? そりゃあ!」
「ぐおっ!?」
女性は刀を横に振り、風のような物を一瞬のうちに生み出し、そして男の腹に命中させた。その勢いで、俺らが隠れている建物の壁を突き破り、男は目の前で倒れていた。
「...... っタタタ。ん? さっきのガキか......うぉし!」
男は何か思いついたと、俺の首と掴んできて、斧を額に近づけてきた。...... ひぇぇぇ!!
「す、駿我!」
「刀使いの女! こいつを人質にとった! お前がその刀を大人しく渡せば、このガキを解放してやる。そうでなかったら......言わなくても分かるよなぁ?」
男は斧の刃先を俺の首元に向けた。あと少しで首が切れそうだ。
「くっ......卑怯な真似を……キミ! 何とかして助けてあげるから!」
とは言っても! この状況でどう助かると言うんですか! 俺、約二時間ぶりに死ぬの!? 転生したてでこの展開はダメでしょーがあの女神め!
「......渡す気が無いようだな。じゃあカウントダウンといこうかぁ。俺が10を数える内に渡さなければ、斧を持っている俺の右手が動く。では、10、9、8」
「何か......何か方法はないの? 私、どうすればいいの?」
あ。あの人も何か策が無いようだ。これはやばいかも。......一応ダメ元で、昔見たアニメの魔法でも唱えてみよう。
「......我が魂に眠りし力よ! 太陽の様に熱く! 火山のマグマよりも熱く! 熱き力を右手に宿し、そして燃え上がれ! ファイアーソウル!!!」
......なーんてね。そんなの出るわけないよね......。
「す、駿我.....?」
「ガハハハ! 恐怖を感じ過ぎてとうとう気がおかしくなっちまったか! カウントの続きだ!! 5、4......なんだか熱くなってきたような......あああ!?」
「せ、青年!?」
みんなが何か驚いている。ハハハ......幻覚でも見てるのかな......うぁっつ!! 何だこれ!? 俺の右手に火玉が出来ている!?
「青年今よ! 男にその火を放って!」
「はい!......ファイアーソウル!!!!」
「ぐぁあああああ!!!!」
俺が放ったファイアーソウルが男の体を包み込み、男は火だるま状態になり、左右に転がった。てか、何で転移特典も貰ってない俺がこんな魔法を使えたんだ?
〔あー聞こえる駿我? あんたにはここで死なれると困るから、今あんたにSランク魔法が使えるようにしたの。感謝しなさいよ。その契約料50万円もしたんだから。次死ぬまでにあたしの所に50万円用意してきなさい〕
「あ、ありがとう...... 別にBランク魔法でも良かったんだけどさ、無理して契約しなくてもよかったんだけど?」
〔......うるさい馬鹿! 命を助けてやったんだからいいでしょ!? もう当分アシストなんかしてやんないんだから!!!!〕
と言って、萌子は通信を切ってしまった。当分って言ってたから、近いうちにまた連絡を寄こすだろう。
「キミ! 怪我はない?」
「は、はい。何とか......」
「......それで、あなたについて少しお話がしたいわ。この男の手続きが終わったら、ちょっと役場まで来てくれないかしら?」
「ちょうど俺も用があったので、あとそこのシルフィンも」
「うん! 私もこの町長さんに用があったの!」
......え、町長さん? この女性が?
「あら、自己紹介が遅れたわね。私の名はナナミール・ヒンド。この町の町長をやっているわ。これからよろしくね」
「は、はい......駿我と言います......こちらこそ......」
「駿我くん......か。なるほど、そういうことね。ますます話すのが楽しみになってきたわ。それじゃあ、また後でね」
そう言って、ナナミールさんは盗賊の男の手続きを始めた。......俺に何か感じられるようなのだろうか? 不思議な体験だった。
俺の背中には、硬い幹のような感触が広がっていた。どうやら、あの女神は気を利かせて目立たない木陰へと移動させてくれたようだ。ツンデレの特徴だな全く。
とはいえ、この学生服のまま歩いていたら、一人だけ浮いた存在となってしまうであろう。まずは女神の萌子にも言われた通り、服屋へと向かう事にしようか。
俺は学ランを脱いで、町の中を歩こうとした...... あれ? みんなパーカーやTシャツみたいなのを着ている? もっと布が多めで、ひらひらとした服を着た奴なんて誰一人いない? ......ここ異世界なの?
町は、スーパーや郵便局、工具屋などと日本で見るものばかりだった。武器屋や精霊所といった場所はあちらこちらにない。どういう事なんだ......。
「いらしゃいませー!」
木陰から一番近い服屋に入店すると、ユニ〇ロと同じような服がずらっと並んでいた。商品名まで言うとアウトな気がするから言わないが、着心地が良さそうな素材を使っているようだ。......いや何で?
「あのー店員さん? なんかひらひらとしたような服とか売ってないんですかね?」
「そのような商品をお求めならば、コスプレショップで買ってくださいね」
あのヒラヒラとした服はこっちの世界でもコスプレ扱い!? マジで!? ...... ここでグダグダやってたらめんどくさそうだし、普通にパーカーとジーパンを買おうと、レジ籠に入れた。
「はい、そちらの商品二点で100円です」
「やっす! 在庫処分品なんですかこれ!?」
「アハハ! お客様ってば冗談を! 通常価格に決まってるじゃないですか!」
だとしたらここの国のレート安すぎんだろ! 日本にいた頃の俺のお小遣いだったら一生分の服がここで買えちゃうんですけど!?
服屋に行くだけでこんなに疲れるもんなのだろうか...... でも、パーカーを着たらなんか防御力が上がった気がするかも。いや、気のせいか......。
そういえば、今夜の宿屋を探さなくては。お、ここに地図がある。忘れないようにスマホで撮っておこ...... あれ、ない、ない、ない!? どこのポケットにも入ってないだと!?
〔駿我ー聞こえるー? あんたの脳に直接話しかけるっていう典型的なやつやってるんだけどー〕
「ああ聞こえるよこの野郎! なんだよこの町は! 日本と全く変わってないじゃないか!」
〔そうよ、だってこのモーサン町は日本人が作りだしたと言われている町だもん。文句があるなら町役場にでも行ってみれば? 町長がもしかしたら日本人かもしれないしね〕
「そうなんだ……じゃなくて! 俺のスマホが無いんだよ! そっちにある!?」
〔あースマホは私の手にあるわ。この世界はスマホなんてもん存在しないからいらないでしょ。カメラに頼らないで町の人とかに聞きなさいよ。少しでも関りは持っておいた方がいいわ〕
「何だよそれ! 異世界という不便な世界に来たんだから少しは便利な物持たせてもいいだろ!?」
〔あんたこの世界不便って感じているの? 日本と変わらない町で過ごすのが不便? わがままねあんた。じゃあここで切るわね〕
「あ、おいちょっと待て! 萌子! 萌子ぉ!」
彼女の名前を叫んでも、返事は帰ってこなかった。ふと辺りを見ると、町民の冷たい視線が感じられた。これは酷い。
「よ、そこの兄ちゃん。話を聞いてる限りだと、町役場に行きたいみたいだね」
「え、あ、はい......」
こんな俺でも受け入れてくれたのか、ツインテールで小柄な少女が俺に話し掛けてくれた。優しい子!
「私がそこまで連れて行ってあげるよ。ちょうど私も用があってね」
「あ、ありがとう!」
「さ、行こ?」
俺はツインテ少女に手を引かれて、町役場まで行くことにした。
歩いている道中、俺は彼女に数々の質問する事にした。この町はおかしいからな。
「私はシナフィン。兄ちゃんの名前は?」
「俺は駿我っていうんだ」
「へー、日本人かー」
「そうそう……おい待て、今日本人って言ったか? 日本という国を知ってるのか?」
「当たり前よ。なんせ、この町は日本を参考にして造られたと言われてるもの」
この町は日本を参考にした? ここまさか地球じゃないよね? なんで日本を知ってるの?
「まあ、ここの町長が来てから、こんな町に変わっちゃったんだけどね。 昔はごく普通のヒラヒラとした服を来て、魔法学校もあって、冒険者の卵が沢山生まれる町だったんだよ」
「シナフィンは、今の生活嫌?」
「うーん...... 嫌じゃないけど、やっぱり昔の雰囲気の方がいいかも......」
そうだよな。いきなり町がガラリと変わって、文化も色々と変わってきちゃって、そんなの嫌だもんな。
「あ、あそこが町役場だよ、早速中に入ろ…… っ!?」
「どうした...... !?」
町役場には、スキンヘッドで、とても大きな斧を持った盗賊のようなおじさんが立っていた。修羅場って所だろうか……。
「あ゛あ゛? なんだテメェら、ちょっと今はここに入るべき状況じゃねぇんだ。 命が惜しければ、さっさと出ていくんだな」
「駿我! 呆然と見てないで早くこっちに来て!」
「ご、ごめん! すぐ行く!」
シナフィンに呼ばれて、俺は近くの建物に逃げ込んだ。
「もう何してんの! あいつの言う通り死にたいの!?」
「いや...... ようやく異世界っぽい事が出来たなぁって思ってさ」
「はぁ?」
だってしょうがないじゃん! 想像していた異世界と全く違うんだもん! ちょっとはワクワクしてもいいじゃん!
とは言いながらも、やっぱり怖い物は怖いので、怯えながら町役場の中を見ていると、一人の女性が出てきた。
「──盗賊ね。ここで争わないで、表で戦いましょう。私、戦いの腕には自信があるの」
そう言うと女性は、腰から刀を取り出し、戦闘体制に入った。これだよコレ! 異世界はこうでなくっちゃ!
「ほう? あまり舐めたようなこと言ってるんじゃねぇぜ? 女でも容赦しねぇからなぁ!! うぉらぁ!」
盗賊の男は腕に力を込めて、溜めた力で女性を斧で降りかかろうとしていた。俺は怖くて目を瞑ってしまった...... が、キン! という音だけが響き、辺りは静寂に包まれていた。様子がおかしいと思い、目を開いて女性を見ると、刀で斧をガードしていた。
「なっ、なんだその武器は!?」
「あなた、刀をご存じないかしら? 日本で作られた伝統的な武器よ。この世界にある色々な武器を素材にして作りだした、私の自慢の武器。どんな物でもガード出来ると言われているわ。あなたも刀の餌食になりたくなければ、さっさとこの町から出ることね」
「...... ほう。結構いい物を持ってんじゃねえかぁ。直接金を奪うよりも、その刀とやらを売って金にした方がよっぽど儲かるわぁ。では頂くとするかなぁ!!」
盗賊の男はまた女性に向かって斧を振りかぶろうとした。
「......話が理解できないようね。だったら痛い目にあってもらおうかしら? そりゃあ!」
「ぐおっ!?」
女性は刀を横に振り、風のような物を一瞬のうちに生み出し、そして男の腹に命中させた。その勢いで、俺らが隠れている建物の壁を突き破り、男は目の前で倒れていた。
「...... っタタタ。ん? さっきのガキか......うぉし!」
男は何か思いついたと、俺の首と掴んできて、斧を額に近づけてきた。...... ひぇぇぇ!!
「す、駿我!」
「刀使いの女! こいつを人質にとった! お前がその刀を大人しく渡せば、このガキを解放してやる。そうでなかったら......言わなくても分かるよなぁ?」
男は斧の刃先を俺の首元に向けた。あと少しで首が切れそうだ。
「くっ......卑怯な真似を……キミ! 何とかして助けてあげるから!」
とは言っても! この状況でどう助かると言うんですか! 俺、約二時間ぶりに死ぬの!? 転生したてでこの展開はダメでしょーがあの女神め!
「......渡す気が無いようだな。じゃあカウントダウンといこうかぁ。俺が10を数える内に渡さなければ、斧を持っている俺の右手が動く。では、10、9、8」
「何か......何か方法はないの? 私、どうすればいいの?」
あ。あの人も何か策が無いようだ。これはやばいかも。......一応ダメ元で、昔見たアニメの魔法でも唱えてみよう。
「......我が魂に眠りし力よ! 太陽の様に熱く! 火山のマグマよりも熱く! 熱き力を右手に宿し、そして燃え上がれ! ファイアーソウル!!!」
......なーんてね。そんなの出るわけないよね......。
「す、駿我.....?」
「ガハハハ! 恐怖を感じ過ぎてとうとう気がおかしくなっちまったか! カウントの続きだ!! 5、4......なんだか熱くなってきたような......あああ!?」
「せ、青年!?」
みんなが何か驚いている。ハハハ......幻覚でも見てるのかな......うぁっつ!! 何だこれ!? 俺の右手に火玉が出来ている!?
「青年今よ! 男にその火を放って!」
「はい!......ファイアーソウル!!!!」
「ぐぁあああああ!!!!」
俺が放ったファイアーソウルが男の体を包み込み、男は火だるま状態になり、左右に転がった。てか、何で転移特典も貰ってない俺がこんな魔法を使えたんだ?
〔あー聞こえる駿我? あんたにはここで死なれると困るから、今あんたにSランク魔法が使えるようにしたの。感謝しなさいよ。その契約料50万円もしたんだから。次死ぬまでにあたしの所に50万円用意してきなさい〕
「あ、ありがとう...... 別にBランク魔法でも良かったんだけどさ、無理して契約しなくてもよかったんだけど?」
〔......うるさい馬鹿! 命を助けてやったんだからいいでしょ!? もう当分アシストなんかしてやんないんだから!!!!〕
と言って、萌子は通信を切ってしまった。当分って言ってたから、近いうちにまた連絡を寄こすだろう。
「キミ! 怪我はない?」
「は、はい。何とか......」
「......それで、あなたについて少しお話がしたいわ。この男の手続きが終わったら、ちょっと役場まで来てくれないかしら?」
「ちょうど俺も用があったので、あとそこのシルフィンも」
「うん! 私もこの町長さんに用があったの!」
......え、町長さん? この女性が?
「あら、自己紹介が遅れたわね。私の名はナナミール・ヒンド。この町の町長をやっているわ。これからよろしくね」
「は、はい......駿我と言います......こちらこそ......」
「駿我くん......か。なるほど、そういうことね。ますます話すのが楽しみになってきたわ。それじゃあ、また後でね」
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