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非日常の訪れ
第十話 魔法の可能性は無限大
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食事を済ませて店を出た四人は、落ち着いて話の出来る日和の部屋へと戻ってきた。日和がベッドの縁に座ると、正影も座椅子へ座り込み、鳳凰と狷はカーペットの上に腰を下ろす。さて、どう話を持ち込もうか。考えていると、狷が話を切り出した。
「……三珠とは、はるか昔に世界を救った神を封印している珠だ。これは俺の師匠から譲り受けたもの」
「師匠……?」
「オレ達には魔法を教えてくれた師匠がいてさ。昔からずーっと受け継がれてきたんだって」
そう説明した鳳凰は、手のひらを宙へ向けて何やら力を込めた。すると、指と指を繋ぐようにバチバチと電気が走って、魔法を見るのは初めての正影が目を丸くする。
「魔法はさ、正直なんでも出来ちまう、それこそ超能力のことなんだ。でもそんなのが世の中にあるって知られたらパニックになるじゃん? 簡単に火を起こしたり電気がビリビリーってなったりさ」
「……三珠には魔力が込められている。それも膨大な力の魔力だ。三珠の力を使って世界を支配しようと企む輩がいる。俺達は奴らに三珠を渡さない為に身を隠していた」
まるで映画の中のような話だ。でも、実際に魔法を目の当たりにしている以上、日和にも正影にも今更それが現実なのかと問うことはできなかった。
「でも最近奴らに追い詰められてて……どうしようかってなってた時に、オレが三珠を落としちゃって」
「で、それを日和が拾って、三珠ってのを狙う奴らに襲われたってことか……。お前、本当にやらかしてくれたな」
「う……それはマジでごめん……」
しゅんと小さくなった鳳凰を一瞥して、狷が静かに続ける。
「……三珠に干渉した以上、これ以上お前達に隠し通すことはできん。だから今こうして全てを話している。……お前達も危険に巻き込まれるだろう。この馬鹿のせいでな」
「すみません……」
「それは……私も悪いよ。あの袋を拾わなかったら巻き込まれることもなかったし、鳳凰くん達に迷惑かけることもなかったし……」
そう、とても後悔している。自分だけではなく正影も巻き込んで、鳳凰達にもこうして迷惑をかけているのは明白だ。
「ごめんなさい」
「槻尾さんが謝ることじゃないって! オレが悪いんだ」
「もうどっちが悪いとかはいいから、これからどうすればいいのかを教えてくれ。オレ達はどうなる? その輩からお前達は逃げてるんだろう? 同じように逃げなくちゃならないのか」
正影の言葉に、鳳凰はちらりと狷へ視線を投げる。狷は素直に頷くと、腕を組んで日和達を赤い瞳でまっすぐ見つめた。
「……お前はまだいいだろう。三珠にも触れていない。だが、そっちの女は別だ。現に三珠が体について離れないなら、お前自身が三珠だと言っても過言ではない。奴らに狙われるだろう」
「三珠は三つじゃないと意味がないんだ。名前もそうだけど、三つ揃っていないと力を発揮できない」
「その……力って?」
日和の問いに一瞬沈黙が流れたが、鳳凰と狷は互いに顔を見合わせるとどちらからともなく告げる。
「……三珠はさ、三珠同士がくっつきあってはじめて封印の効果が出るんだ。一つでも欠けて、もし三珠の封印が破れたら、魔法をこの世に解き放っちまうんだよ。そうならないように、オレ達が守ってるんだ」
「魔法がこの世に解き放たれれば、誰もが魔法を使えるようになる。犯罪者の手にも魔法が渡るとどうなるか、お前達でも想像はできるだろう。そうなれば最後、世界は戦火に包まれる」
鳳凰の言った通り、火や電気を自在に操られるようになれば、簡単に人を傷付けることができるようになってしまうだろう。それが悪い者の手に渡れば、確かに魔法を使って悪事を働くかもしれない。それよりも先に、世界がパニックに陥るのは想像に易く。なんとなくの想像しか日和には出来なかったが、きっと恐ろしいことになるのは目に見えて、ぞっとした。
「槻尾さんや正影さんが魔法を悪いことに使わないって信頼してるから、こうやって話をしてるんだぜ。今はみんなが魔法を使えるわけじゃないしな」
「うん……」
「……まだ信じられないか」
そう言われれば、まだ信じられないのは確かだ。日常から一気に非日常へ落とされて、簡単に分かれという方が酷だろう。でも、もう認めざるを得ないのかもしれない。
「……お前達の言いたいことは分かった。それに、お前は責任を取って日和を守るって言ったよな」
鳳凰は深く頷く。
「日和が逃げるしかないなら、オレもついていく。こんな話を聞いたし、危険だとしても大切な友達を勝手に連れ回されるのは嫌だからな」
「正……」
「……うん、分かった。ちゃんと守るから。心配だろうけど、絶対に守る」
決意を込めた言葉を零す鳳凰に、正影が引き締めていた表情を僅かに緩めた。
「正直まだ信じられないけどな。さっきのお前の、魔法……ってやつか?あんなの見たら、無理にでも納得するしかないし」
「へへ、オレは電気を使うのが得意なんだ。でも傷を癒したりするのは下手くそでさ」
「そんなこともできるのか……」
日和は狷の手で傷が癒えたことを思い出す。一瞬の出来事だった。傷口にふわりとあたたかい感覚が広がって、痛みも消えて。火を操ったり、電気を操ったり、傷付けるものだけではなく、傷を癒すこともできる魔法。鳳凰達は危ないというが、決して悪いものではないように日和には思えた。
「……三珠とは、はるか昔に世界を救った神を封印している珠だ。これは俺の師匠から譲り受けたもの」
「師匠……?」
「オレ達には魔法を教えてくれた師匠がいてさ。昔からずーっと受け継がれてきたんだって」
そう説明した鳳凰は、手のひらを宙へ向けて何やら力を込めた。すると、指と指を繋ぐようにバチバチと電気が走って、魔法を見るのは初めての正影が目を丸くする。
「魔法はさ、正直なんでも出来ちまう、それこそ超能力のことなんだ。でもそんなのが世の中にあるって知られたらパニックになるじゃん? 簡単に火を起こしたり電気がビリビリーってなったりさ」
「……三珠には魔力が込められている。それも膨大な力の魔力だ。三珠の力を使って世界を支配しようと企む輩がいる。俺達は奴らに三珠を渡さない為に身を隠していた」
まるで映画の中のような話だ。でも、実際に魔法を目の当たりにしている以上、日和にも正影にも今更それが現実なのかと問うことはできなかった。
「でも最近奴らに追い詰められてて……どうしようかってなってた時に、オレが三珠を落としちゃって」
「で、それを日和が拾って、三珠ってのを狙う奴らに襲われたってことか……。お前、本当にやらかしてくれたな」
「う……それはマジでごめん……」
しゅんと小さくなった鳳凰を一瞥して、狷が静かに続ける。
「……三珠に干渉した以上、これ以上お前達に隠し通すことはできん。だから今こうして全てを話している。……お前達も危険に巻き込まれるだろう。この馬鹿のせいでな」
「すみません……」
「それは……私も悪いよ。あの袋を拾わなかったら巻き込まれることもなかったし、鳳凰くん達に迷惑かけることもなかったし……」
そう、とても後悔している。自分だけではなく正影も巻き込んで、鳳凰達にもこうして迷惑をかけているのは明白だ。
「ごめんなさい」
「槻尾さんが謝ることじゃないって! オレが悪いんだ」
「もうどっちが悪いとかはいいから、これからどうすればいいのかを教えてくれ。オレ達はどうなる? その輩からお前達は逃げてるんだろう? 同じように逃げなくちゃならないのか」
正影の言葉に、鳳凰はちらりと狷へ視線を投げる。狷は素直に頷くと、腕を組んで日和達を赤い瞳でまっすぐ見つめた。
「……お前はまだいいだろう。三珠にも触れていない。だが、そっちの女は別だ。現に三珠が体について離れないなら、お前自身が三珠だと言っても過言ではない。奴らに狙われるだろう」
「三珠は三つじゃないと意味がないんだ。名前もそうだけど、三つ揃っていないと力を発揮できない」
「その……力って?」
日和の問いに一瞬沈黙が流れたが、鳳凰と狷は互いに顔を見合わせるとどちらからともなく告げる。
「……三珠はさ、三珠同士がくっつきあってはじめて封印の効果が出るんだ。一つでも欠けて、もし三珠の封印が破れたら、魔法をこの世に解き放っちまうんだよ。そうならないように、オレ達が守ってるんだ」
「魔法がこの世に解き放たれれば、誰もが魔法を使えるようになる。犯罪者の手にも魔法が渡るとどうなるか、お前達でも想像はできるだろう。そうなれば最後、世界は戦火に包まれる」
鳳凰の言った通り、火や電気を自在に操られるようになれば、簡単に人を傷付けることができるようになってしまうだろう。それが悪い者の手に渡れば、確かに魔法を使って悪事を働くかもしれない。それよりも先に、世界がパニックに陥るのは想像に易く。なんとなくの想像しか日和には出来なかったが、きっと恐ろしいことになるのは目に見えて、ぞっとした。
「槻尾さんや正影さんが魔法を悪いことに使わないって信頼してるから、こうやって話をしてるんだぜ。今はみんなが魔法を使えるわけじゃないしな」
「うん……」
「……まだ信じられないか」
そう言われれば、まだ信じられないのは確かだ。日常から一気に非日常へ落とされて、簡単に分かれという方が酷だろう。でも、もう認めざるを得ないのかもしれない。
「……お前達の言いたいことは分かった。それに、お前は責任を取って日和を守るって言ったよな」
鳳凰は深く頷く。
「日和が逃げるしかないなら、オレもついていく。こんな話を聞いたし、危険だとしても大切な友達を勝手に連れ回されるのは嫌だからな」
「正……」
「……うん、分かった。ちゃんと守るから。心配だろうけど、絶対に守る」
決意を込めた言葉を零す鳳凰に、正影が引き締めていた表情を僅かに緩めた。
「正直まだ信じられないけどな。さっきのお前の、魔法……ってやつか?あんなの見たら、無理にでも納得するしかないし」
「へへ、オレは電気を使うのが得意なんだ。でも傷を癒したりするのは下手くそでさ」
「そんなこともできるのか……」
日和は狷の手で傷が癒えたことを思い出す。一瞬の出来事だった。傷口にふわりとあたたかい感覚が広がって、痛みも消えて。火を操ったり、電気を操ったり、傷付けるものだけではなく、傷を癒すこともできる魔法。鳳凰達は危ないというが、決して悪いものではないように日和には思えた。
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