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非日常の訪れ
第十三話 男勝りな彼女はどこまでもイケメン
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「三珠と私が……合体……?」
意味の分からない言葉に、日和はおうむ返しをする。そこで以前、狷が言っていた言葉を思い出した。
——三珠が体について離れないなら、お前自身が三珠だと言っても過言ではない。
まさにその通りのことが起きている、というのだろうか。自分の意思に従って動いた蔓と、半透明の結界。確かに、自分と一体化したと言われても疑いはない。
「そんなこと……」
「……有り得る。三珠は莫大な魔法を込めたものだ。何が起きてもおかしくはない。三珠には意思が宿っていると師匠が言っていた。三珠はお前を宿主として選んだのかもしれん」
「宿主……?」
一体何が起きているのだろう。とりあえず危険が去ったことは理解できるので、そこは良いとして、だ。三珠には意思が宿っているだとか、自分を宿主として選んだとか、そんな訳の分からないことがまた起きている。しかもあの少年は三珠以外に「鈴」という言葉も口にしていた。鈴、とは何なのだろう。それもそうだし、あの少年の正体も気になるところだ。
「ねぇ……三珠のことはもう納得するしかないからとりあえず置いとくね。あの男の子が言ってたけど、三珠ともう一つ狙われてるものがあるの? 鈴って?」
「ああ……鈴のことか」
鳳凰は少し困ったような顔をしたが、特に躊躇うことなく話を始めた。
「オレのピアス、鈴がついてるんだけどさ。鈴ってのはこれのこと」
そう言って、鳳凰は左耳を見せてきた。確かに彼の耳には小さな鈴がついている。しかし、こんな物を狙っているとは、どういうことだろうか。
「これさ、中で核融合が起きてるんだよ。オレにはよく分かんねェんだけど、永久機関?ってのがすごいらしくて、これも狙われてる」
「待って、頭が追いつかない……核融合……?か、核融合……も、もうだめさすがにだめ、理解が及ばない! お茶! お茶がほしい!」
「あ、日和が壊れた」
もうパニックだ。お茶が欲しい発作まで出てきてしまった。こんなところでパニックを起こしてしまうのは……いや、誰だってパニックを起こすだろう、この状況は。理解の及ばないことを立て続けに頭に叩き込まれれば混乱すること必至だ。
「もうわけ分かんないよ! 誰か簡単に説明して! というかもうやだ! 家に帰りたい! お茶飲みたい!」
「落ち着け日和、まずは落ち着け」
「落ち着けないよ! 正だって落ち着けないでしょこの状況! 男の子に襲われたと思ったら変な結界が出てきて、三珠が私と合体してるとか、鈴の中で核融合が起きてるとか!」
「それが魔法と関わるということだ」
慌てふためく日和とは比べられないほど冷静に、狷が言い放った。その冷たい言葉に日和はぴたりと体の動きを止めた。
「まだ覚悟ができていないようだな。魔法と関わり、三珠を身につけるということは非日常が日常に変わるということだ。お前はまだ非日常を受け入れられていない。そっちの女の方が冷静だ。これ以上未知の事象が起きてもまだ混乱するのなら、やはりお前の腕を斬り落とすしかない。足手まといだ」
「っ狷、そこまで言うことないだろ! 槻尾さんだっていっぱいいっぱいなんだって……」
そこまで言われて、日和は己の感情が徐々に落ち着いていくのを感じた。鳳凰はそこまでと言うが、今の日和にとってはそこまで言ってくれた方が冷静になれたのだ。日和は細く空気を吸い込むと、目を閉じて大きく息を吐き出した。
切り替えなければ。足手まといにはなりたくない。
「…………ごめんなさい、取り乱して。うん、それで? 鈴の中で核融合が起きてる?」
「あ……、うん」
「…………この世にはまだ半永久的かつ安全にエネルギーを作り出す機関というものがない。いや、ないことになっている。この鈴は鳳凰の師匠から託されたものだ。これは常識を覆す……いや、世界を変えるものだ。魔法と遜色のないほど世に知れてはならないもの」
「そんなすごいもの、どうしてお前達が……?」
正影の問いに鳳凰は押し黙る。それを見兼ねてか、狷が顔を上げて口を開いた。
「俺達には三珠や鈴を守る使命がある。お前達のような者には到底理解が及ばんだろうが、ずっと受け継がれてきたものだ」
「…………そうか」
それ以上言及しない正影は、日和を心配そうな表情で見つめた。これは、本当に大変なことに巻き込まれているのかもしれない。いや、そんなこと今更だ。既に非日常の中に放り込まれているのだ。自分達の理解を越えた世界があるのかもしれないという漠然な想像をしたことはあるが、それは 御伽噺や映画の中だけのものだと思っていた。今までは架空の存在だった。しかし、それは現実に、しかも自分達の目の前に突きつけられた。
日和をじっと見つめていた正影だが、ふと大きく頷くと腕を組んで鳳凰達をまっすぐ見つめた。
「オレ達とは全く別の世界で生きてきたんだな。分かった。関わった以上、お前達にも責任は取ってもらうし、もう後戻りはできないんだろ? ならとことん付き合ってやる。こういうことは経験はないけど、映画で見たことがあるからな。オレは覚悟はできてる」
「正……」
正影は——彼女は、昔から男勝りで頼り甲斐のある存在だった。ひ弱でドジな日和を守ってくれたのはいつでも正影だ。彼女はその辺りの男性よりも男らしいところがある。こんな時にまで、男らしい彼女に気持ちを救われるとは。日和は涙が出そうになったが、それを堪えて唇を噛みしめた。
「……私も、みんなについていく。足手まといになんかならないように、ついていくから」
意味の分からない言葉に、日和はおうむ返しをする。そこで以前、狷が言っていた言葉を思い出した。
——三珠が体について離れないなら、お前自身が三珠だと言っても過言ではない。
まさにその通りのことが起きている、というのだろうか。自分の意思に従って動いた蔓と、半透明の結界。確かに、自分と一体化したと言われても疑いはない。
「そんなこと……」
「……有り得る。三珠は莫大な魔法を込めたものだ。何が起きてもおかしくはない。三珠には意思が宿っていると師匠が言っていた。三珠はお前を宿主として選んだのかもしれん」
「宿主……?」
一体何が起きているのだろう。とりあえず危険が去ったことは理解できるので、そこは良いとして、だ。三珠には意思が宿っているだとか、自分を宿主として選んだとか、そんな訳の分からないことがまた起きている。しかもあの少年は三珠以外に「鈴」という言葉も口にしていた。鈴、とは何なのだろう。それもそうだし、あの少年の正体も気になるところだ。
「ねぇ……三珠のことはもう納得するしかないからとりあえず置いとくね。あの男の子が言ってたけど、三珠ともう一つ狙われてるものがあるの? 鈴って?」
「ああ……鈴のことか」
鳳凰は少し困ったような顔をしたが、特に躊躇うことなく話を始めた。
「オレのピアス、鈴がついてるんだけどさ。鈴ってのはこれのこと」
そう言って、鳳凰は左耳を見せてきた。確かに彼の耳には小さな鈴がついている。しかし、こんな物を狙っているとは、どういうことだろうか。
「これさ、中で核融合が起きてるんだよ。オレにはよく分かんねェんだけど、永久機関?ってのがすごいらしくて、これも狙われてる」
「待って、頭が追いつかない……核融合……?か、核融合……も、もうだめさすがにだめ、理解が及ばない! お茶! お茶がほしい!」
「あ、日和が壊れた」
もうパニックだ。お茶が欲しい発作まで出てきてしまった。こんなところでパニックを起こしてしまうのは……いや、誰だってパニックを起こすだろう、この状況は。理解の及ばないことを立て続けに頭に叩き込まれれば混乱すること必至だ。
「もうわけ分かんないよ! 誰か簡単に説明して! というかもうやだ! 家に帰りたい! お茶飲みたい!」
「落ち着け日和、まずは落ち着け」
「落ち着けないよ! 正だって落ち着けないでしょこの状況! 男の子に襲われたと思ったら変な結界が出てきて、三珠が私と合体してるとか、鈴の中で核融合が起きてるとか!」
「それが魔法と関わるということだ」
慌てふためく日和とは比べられないほど冷静に、狷が言い放った。その冷たい言葉に日和はぴたりと体の動きを止めた。
「まだ覚悟ができていないようだな。魔法と関わり、三珠を身につけるということは非日常が日常に変わるということだ。お前はまだ非日常を受け入れられていない。そっちの女の方が冷静だ。これ以上未知の事象が起きてもまだ混乱するのなら、やはりお前の腕を斬り落とすしかない。足手まといだ」
「っ狷、そこまで言うことないだろ! 槻尾さんだっていっぱいいっぱいなんだって……」
そこまで言われて、日和は己の感情が徐々に落ち着いていくのを感じた。鳳凰はそこまでと言うが、今の日和にとってはそこまで言ってくれた方が冷静になれたのだ。日和は細く空気を吸い込むと、目を閉じて大きく息を吐き出した。
切り替えなければ。足手まといにはなりたくない。
「…………ごめんなさい、取り乱して。うん、それで? 鈴の中で核融合が起きてる?」
「あ……、うん」
「…………この世にはまだ半永久的かつ安全にエネルギーを作り出す機関というものがない。いや、ないことになっている。この鈴は鳳凰の師匠から託されたものだ。これは常識を覆す……いや、世界を変えるものだ。魔法と遜色のないほど世に知れてはならないもの」
「そんなすごいもの、どうしてお前達が……?」
正影の問いに鳳凰は押し黙る。それを見兼ねてか、狷が顔を上げて口を開いた。
「俺達には三珠や鈴を守る使命がある。お前達のような者には到底理解が及ばんだろうが、ずっと受け継がれてきたものだ」
「…………そうか」
それ以上言及しない正影は、日和を心配そうな表情で見つめた。これは、本当に大変なことに巻き込まれているのかもしれない。いや、そんなこと今更だ。既に非日常の中に放り込まれているのだ。自分達の理解を越えた世界があるのかもしれないという漠然な想像をしたことはあるが、それは 御伽噺や映画の中だけのものだと思っていた。今までは架空の存在だった。しかし、それは現実に、しかも自分達の目の前に突きつけられた。
日和をじっと見つめていた正影だが、ふと大きく頷くと腕を組んで鳳凰達をまっすぐ見つめた。
「オレ達とは全く別の世界で生きてきたんだな。分かった。関わった以上、お前達にも責任は取ってもらうし、もう後戻りはできないんだろ? ならとことん付き合ってやる。こういうことは経験はないけど、映画で見たことがあるからな。オレは覚悟はできてる」
「正……」
正影は——彼女は、昔から男勝りで頼り甲斐のある存在だった。ひ弱でドジな日和を守ってくれたのはいつでも正影だ。彼女はその辺りの男性よりも男らしいところがある。こんな時にまで、男らしい彼女に気持ちを救われるとは。日和は涙が出そうになったが、それを堪えて唇を噛みしめた。
「……私も、みんなについていく。足手まといになんかならないように、ついていくから」
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