右手と魔法!

茶竹 葵斗

文字の大きさ
20 / 50
逃亡

第二十話 一息ついた頃にまたやってくる謎

しおりを挟む
 獣達の襲来しゅうらいをやり過ごした四人は、またそれから歩いて歩いて、ようやく街にたどり着いた。思わぬ襲撃を受けて疲労が溜まっていた四人はホテルで休息を取ることにした。部屋に入ってすぐ鳳凰がふかふかのベッドに飛び込む。正直手ぐらい洗いなさい、と言いたいところだったが、日和も疲れていたので何も言えなかった。

「ふう……やっと一息つけた感じがする」
「そうだな」
「肉食って割とすぐあいつら来たもんな。うまかったーって余韻よいんひたる時間もなかったや」

 鳳凰は布団に埋もれたまま軽い口調でそう呟いた。先に正影が手を洗っているのでそれを待っていると、狷はベッドの縁に座ってじっと黙り込んだ。彼もまた手を洗うのを待っているのだろう。日和を見た狷は、すぐに視線をらした。正影の後に洗面所へ入ると、目の前に鏡があった。鏡の中の自分は少し疲れているように見えた。表情がどことなく暗い。ここで休めば少しはこの顔もどうにかなるだろうと考えて、日和は蛇口を手でひねった。冷たい水が心地いい。早々に手を洗って洗面所から出ると、やはり狷が順番を待っていたようで、すぐそばに立っていた。

「お待たせ」

 狷は日和の言葉に返事を返すことはなかった。それにも慣れてしまった日和は気にすることなく部屋へ戻る。相変わらず鳳凰はベッドに寝転がっていて、正影はカバンを机に置いてソファに座っていた。日和も正影の向かいのソファに腰を下ろして、ほう、と小さく息をついた。そこで獣達のことを思い出して、日和はまた胸のざわつきを覚える。やはり、どうしたって許せない。ウルペスコーポレーション。生き物の命をなんだと思っているのだろう。

「……ねぇ、ウルペスコーポレーションのこと、詳しく教えてほしいな」
「奴らのこと? んー……オレらもそんなに詳しいことは知らないんだよな。何せ相手は秘密結社だし」
「知ってることだけでいいから、オレも知りたい」

 日和と正影にそう言われ、鳳凰はうーんとうなる。そこへ手を洗い終えた狷が戻ってきた。話を聞いていたのか、狷がベッドのふちに座って話を切り出した。

「ウルペスコーポレーションを束ねているのはアレキサンダーという男だ。奴はウルペスコーポレーションを立ち上げる前からオレ達をずっと追ってきた。……いや、オレ達の師匠を追っていた」
「どうして?」
「奴は魔法の存在を消そうとしている。自分の目論見もくろみに邪魔な存在だからだ。その目論見が世界を支配することだということは師匠達から聞いた。ただ、何の為に、どのようにして世界を支配するのかまでは分からない」

 狷はそこまで話すと、手を組んで膝にひじをついた。

「俺の憶測おくそくだが……三珠を消し、俺達を消し、魔法の存在を消す。そして鈴の力を手にして世界を牽制けんせいする。奴らはそうして世界を支配するつもりかもしれない」
「……」

 世界を支配して、何をしたいのだろう。何の為に。日和は考えを巡らせてみたが、どうしても理解できなかった。そこで話を終えた狷は、ポケットからあの巾着袋を取り出して中身を確認する為か紐を解いていく。その動作をなんとなく見ていた正影は、腕に違和感を感じて視線を落とした。それと同時、狷がベッドの縁から立ち上がった。

「……どうしたの?」
「……三珠が一つしかない」
「え……っ」

 その言葉に日和と鳳凰は目を丸くして狷に近寄った。彼の手元の袋を覗くと、やはり珠は一つしかない。

「何で? 狷ちゃん、ちゃんとしまってたし紐も結んでたよね……?」
「……三珠の痕跡は全てここにある。どこかに落としたのか」
「…………待ってくれ、みんな」

 そこでひとりソファに座ったままの正影が声を漏らした。日和はそちらを振り返って、また目を見開いた。正影が持ち上げた右腕の手首には——日和の腕輪と同じ、あの腕輪がはまっていた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

処理中です...