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逃亡
第二十話 一息ついた頃にまたやってくる謎
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獣達の襲来をやり過ごした四人は、またそれから歩いて歩いて、ようやく街にたどり着いた。思わぬ襲撃を受けて疲労が溜まっていた四人はホテルで休息を取ることにした。部屋に入ってすぐ鳳凰がふかふかのベッドに飛び込む。正直手ぐらい洗いなさい、と言いたいところだったが、日和も疲れていたので何も言えなかった。
「ふう……やっと一息つけた感じがする」
「そうだな」
「肉食って割とすぐあいつら来たもんな。うまかったーって余韻に浸る時間もなかったや」
鳳凰は布団に埋もれたまま軽い口調でそう呟いた。先に正影が手を洗っているのでそれを待っていると、狷はベッドの縁に座ってじっと黙り込んだ。彼もまた手を洗うのを待っているのだろう。日和を見た狷は、すぐに視線を逸らした。正影の後に洗面所へ入ると、目の前に鏡があった。鏡の中の自分は少し疲れているように見えた。表情がどことなく暗い。ここで休めば少しはこの顔もどうにかなるだろうと考えて、日和は蛇口を手で捻った。冷たい水が心地いい。早々に手を洗って洗面所から出ると、やはり狷が順番を待っていたようで、すぐそばに立っていた。
「お待たせ」
狷は日和の言葉に返事を返すことはなかった。それにも慣れてしまった日和は気にすることなく部屋へ戻る。相変わらず鳳凰はベッドに寝転がっていて、正影はカバンを机に置いてソファに座っていた。日和も正影の向かいのソファに腰を下ろして、ほう、と小さく息をついた。そこで獣達のことを思い出して、日和はまた胸のざわつきを覚える。やはり、どうしたって許せない。ウルペスコーポレーション。生き物の命をなんだと思っているのだろう。
「……ねぇ、ウルペスコーポレーションのこと、詳しく教えてほしいな」
「奴らのこと? んー……オレらもそんなに詳しいことは知らないんだよな。何せ相手は秘密結社だし」
「知ってることだけでいいから、オレも知りたい」
日和と正影にそう言われ、鳳凰はうーんと唸る。そこへ手を洗い終えた狷が戻ってきた。話を聞いていたのか、狷がベッドの縁に座って話を切り出した。
「ウルペスコーポレーションを束ねているのはアレキサンダーという男だ。奴はウルペスコーポレーションを立ち上げる前からオレ達をずっと追ってきた。……いや、オレ達の師匠を追っていた」
「どうして?」
「奴は魔法の存在を消そうとしている。自分の目論見に邪魔な存在だからだ。その目論見が世界を支配することだということは師匠達から聞いた。ただ、何の為に、どのようにして世界を支配するのかまでは分からない」
狷はそこまで話すと、手を組んで膝に肘をついた。
「俺の憶測だが……三珠を消し、俺達を消し、魔法の存在を消す。そして鈴の力を手にして世界を牽制する。奴らはそうして世界を支配するつもりかもしれない」
「……」
世界を支配して、何をしたいのだろう。何の為に。日和は考えを巡らせてみたが、どうしても理解できなかった。そこで話を終えた狷は、ポケットからあの巾着袋を取り出して中身を確認する為か紐を解いていく。その動作をなんとなく見ていた正影は、腕に違和感を感じて視線を落とした。それと同時、狷がベッドの縁から立ち上がった。
「……どうしたの?」
「……三珠が一つしかない」
「え……っ」
その言葉に日和と鳳凰は目を丸くして狷に近寄った。彼の手元の袋を覗くと、やはり珠は一つしかない。
「何で? 狷ちゃん、ちゃんとしまってたし紐も結んでたよね……?」
「……三珠の痕跡は全てここにある。どこかに落としたのか」
「…………待ってくれ、みんな」
そこでひとりソファに座ったままの正影が声を漏らした。日和はそちらを振り返って、また目を見開いた。正影が持ち上げた右腕の手首には——日和の腕輪と同じ、あの腕輪が嵌っていた。
「ふう……やっと一息つけた感じがする」
「そうだな」
「肉食って割とすぐあいつら来たもんな。うまかったーって余韻に浸る時間もなかったや」
鳳凰は布団に埋もれたまま軽い口調でそう呟いた。先に正影が手を洗っているのでそれを待っていると、狷はベッドの縁に座ってじっと黙り込んだ。彼もまた手を洗うのを待っているのだろう。日和を見た狷は、すぐに視線を逸らした。正影の後に洗面所へ入ると、目の前に鏡があった。鏡の中の自分は少し疲れているように見えた。表情がどことなく暗い。ここで休めば少しはこの顔もどうにかなるだろうと考えて、日和は蛇口を手で捻った。冷たい水が心地いい。早々に手を洗って洗面所から出ると、やはり狷が順番を待っていたようで、すぐそばに立っていた。
「お待たせ」
狷は日和の言葉に返事を返すことはなかった。それにも慣れてしまった日和は気にすることなく部屋へ戻る。相変わらず鳳凰はベッドに寝転がっていて、正影はカバンを机に置いてソファに座っていた。日和も正影の向かいのソファに腰を下ろして、ほう、と小さく息をついた。そこで獣達のことを思い出して、日和はまた胸のざわつきを覚える。やはり、どうしたって許せない。ウルペスコーポレーション。生き物の命をなんだと思っているのだろう。
「……ねぇ、ウルペスコーポレーションのこと、詳しく教えてほしいな」
「奴らのこと? んー……オレらもそんなに詳しいことは知らないんだよな。何せ相手は秘密結社だし」
「知ってることだけでいいから、オレも知りたい」
日和と正影にそう言われ、鳳凰はうーんと唸る。そこへ手を洗い終えた狷が戻ってきた。話を聞いていたのか、狷がベッドの縁に座って話を切り出した。
「ウルペスコーポレーションを束ねているのはアレキサンダーという男だ。奴はウルペスコーポレーションを立ち上げる前からオレ達をずっと追ってきた。……いや、オレ達の師匠を追っていた」
「どうして?」
「奴は魔法の存在を消そうとしている。自分の目論見に邪魔な存在だからだ。その目論見が世界を支配することだということは師匠達から聞いた。ただ、何の為に、どのようにして世界を支配するのかまでは分からない」
狷はそこまで話すと、手を組んで膝に肘をついた。
「俺の憶測だが……三珠を消し、俺達を消し、魔法の存在を消す。そして鈴の力を手にして世界を牽制する。奴らはそうして世界を支配するつもりかもしれない」
「……」
世界を支配して、何をしたいのだろう。何の為に。日和は考えを巡らせてみたが、どうしても理解できなかった。そこで話を終えた狷は、ポケットからあの巾着袋を取り出して中身を確認する為か紐を解いていく。その動作をなんとなく見ていた正影は、腕に違和感を感じて視線を落とした。それと同時、狷がベッドの縁から立ち上がった。
「……どうしたの?」
「……三珠が一つしかない」
「え……っ」
その言葉に日和と鳳凰は目を丸くして狷に近寄った。彼の手元の袋を覗くと、やはり珠は一つしかない。
「何で? 狷ちゃん、ちゃんとしまってたし紐も結んでたよね……?」
「……三珠の痕跡は全てここにある。どこかに落としたのか」
「…………待ってくれ、みんな」
そこでひとりソファに座ったままの正影が声を漏らした。日和はそちらを振り返って、また目を見開いた。正影が持ち上げた右腕の手首には——日和の腕輪と同じ、あの腕輪が嵌っていた。
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