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「…すごく綺麗ですね。今日のフローレンス副団長…」
男は呟きながらつま先を伸ばし、前に立つ人々の頭を超えるように前方を見据える。
「元、な。お前の目ん玉、腐ってるんじゃないのか?イヴリンは怒らせると怖いが、美人で度胸もあって頭も良い。今日だけじゃなくて昔からいい女だ。」
筋肉ではちきれそうな骨太の身体を礼装に通し、苦しそうに襟元のネクタイを緩めながら、彼の右隣に立つ大柄な男が言った。
「あーあ、今日で僕を含めてどれだけの奴らが失恋したことか。団長さえいなければ、騎士団の女神は今頃、僕の隣にいたかもしれないのに…」
大柄な男の更に右に立つ、やや細身の男はふてくされたように腕を組みながらぼやいた。
「だっはっは、それだけはないな。
お前のツラ、前に稽古で調子こいて逆にイヴリンに叩きのめされた青二才…あいつ、名前なんだったっけ?…まぁ、あの野郎に似てるから無理だわ。
その点、俺は何度か飲みに行ったりして結構いい感じだったんだぜ?」
「…でもエヴァンズさん、元副団長は結構前から団長の部屋へ通っていたらしいですよね。」
「それそれ!僕も部下から、早朝に団長の部屋から出てくるイヴリンを見掛けたことがあるって聞いたよ。
朝帰りなんて…
っくーっ!…なんて破廉恥なっ!!」
「…早朝に部屋へ入ってすぐ出てきたのを見たって奴もいるから、結局のところあれは何だったのかよく分からねぇが。
アーサーの野郎が俺達を牽制してたってのだけは間違いないな。」
「まぁ獣人の番に手を出したら、いくら部下でも生かしてもらえないですからね。私は皆さん無事に今日を迎えられてホッとしていますよ。」
「なにを生意気なことを…」
口の減らない後輩騎士を睨みつけ、ネクタイもカフスも緩めたエヴァンズが軽く握った拳を上げると
パサッ
爽やかな草と花の香りの束がぶつかってきた。
「どぅわっ…っとっと!!」
訳も分からず慌ててもう片方の手で受け止める。
手の中に落ちたのは、可憐な白い花々が碧と金色の豊かなリボンで束ねられたブーケだった。
「うわー!すごい!今日で一生分の運を使い切っちゃったんじゃないですか!?」
「ちょっとぉっ!なんで僕よりこの野獣が先に結婚なんだ!」
左右に並ぶ二人がそれぞれに騒いでいる。
男の手の中に収まった花束は、更にその場にいた大勢の人達の視線を一心に集めて、歓声があがる。
左右に分かれた人垣の向こうで、一組の男女が笑顔でこちらを見ていた。
「おっと!一番似合わない奴が掴んだな。」
一人は引き締まった長身に白い正装をまとったアーサーだ。
穏やかで幸せそうな笑みを湛えている。
そしてその隣には
「エヴァンズ!!もっと遠くに投げたつもりだったのに、さすが!」
編み込まれた白金に煌めく髪には白い花の冠を戴き、今日の空よりも碧く透き通る瞳を輝かせながら、嬉しそうに手を振るイヴリンが寄り添っている。
いつも見ていた武骨な騎士の装いではなく、胸元に真珠とダイヤがあしらわれた純白のマーメイドドレスを着た姿は、とても仲間だったとは思えないくらいに眩い。
「っち、本当に女神かよ。…
おうよ!次は俺が結婚する番だからな!!」
大きな声は青空の下でよく響き、堰を切ったように団員たちから口々に祝福とヤジが飛ぶ。
「団長!イヴリンさん、おめでとうございます!」
「イヴリン、アーサーに飽きたらいつでも俺に声をかけてくれ!」
「くそーっ、俺も結婚したいーっ!」
「「「2人とも絶対、幸せになれよーっ!!」」」
幸福な日をにぎわす喧噪の中、声を合わせた副団長たちのエールがひときわ大きく響き渡る。
アーサーは照れくさそうに、イヴリンははにかむように顔を赤らめてありがとうと答えた。
そんな彼らを包み込むように、無数の白い花びらは陽光に照らされて眩く輝き、風にのって天高く舞い上がっていった。
「…すごく綺麗ですね。今日のフローレンス副団長…」
男は呟きながらつま先を伸ばし、前に立つ人々の頭を超えるように前方を見据える。
「元、な。お前の目ん玉、腐ってるんじゃないのか?イヴリンは怒らせると怖いが、美人で度胸もあって頭も良い。今日だけじゃなくて昔からいい女だ。」
筋肉ではちきれそうな骨太の身体を礼装に通し、苦しそうに襟元のネクタイを緩めながら、彼の右隣に立つ大柄な男が言った。
「あーあ、今日で僕を含めてどれだけの奴らが失恋したことか。団長さえいなければ、騎士団の女神は今頃、僕の隣にいたかもしれないのに…」
大柄な男の更に右に立つ、やや細身の男はふてくされたように腕を組みながらぼやいた。
「だっはっは、それだけはないな。
お前のツラ、前に稽古で調子こいて逆にイヴリンに叩きのめされた青二才…あいつ、名前なんだったっけ?…まぁ、あの野郎に似てるから無理だわ。
その点、俺は何度か飲みに行ったりして結構いい感じだったんだぜ?」
「…でもエヴァンズさん、元副団長は結構前から団長の部屋へ通っていたらしいですよね。」
「それそれ!僕も部下から、早朝に団長の部屋から出てくるイヴリンを見掛けたことがあるって聞いたよ。
朝帰りなんて…
っくーっ!…なんて破廉恥なっ!!」
「…早朝に部屋へ入ってすぐ出てきたのを見たって奴もいるから、結局のところあれは何だったのかよく分からねぇが。
アーサーの野郎が俺達を牽制してたってのだけは間違いないな。」
「まぁ獣人の番に手を出したら、いくら部下でも生かしてもらえないですからね。私は皆さん無事に今日を迎えられてホッとしていますよ。」
「なにを生意気なことを…」
口の減らない後輩騎士を睨みつけ、ネクタイもカフスも緩めたエヴァンズが軽く握った拳を上げると
パサッ
爽やかな草と花の香りの束がぶつかってきた。
「どぅわっ…っとっと!!」
訳も分からず慌ててもう片方の手で受け止める。
手の中に落ちたのは、可憐な白い花々が碧と金色の豊かなリボンで束ねられたブーケだった。
「うわー!すごい!今日で一生分の運を使い切っちゃったんじゃないですか!?」
「ちょっとぉっ!なんで僕よりこの野獣が先に結婚なんだ!」
左右に並ぶ二人がそれぞれに騒いでいる。
男の手の中に収まった花束は、更にその場にいた大勢の人達の視線を一心に集めて、歓声があがる。
左右に分かれた人垣の向こうで、一組の男女が笑顔でこちらを見ていた。
「おっと!一番似合わない奴が掴んだな。」
一人は引き締まった長身に白い正装をまとったアーサーだ。
穏やかで幸せそうな笑みを湛えている。
そしてその隣には
「エヴァンズ!!もっと遠くに投げたつもりだったのに、さすが!」
編み込まれた白金に煌めく髪には白い花の冠を戴き、今日の空よりも碧く透き通る瞳を輝かせながら、嬉しそうに手を振るイヴリンが寄り添っている。
いつも見ていた武骨な騎士の装いではなく、胸元に真珠とダイヤがあしらわれた純白のマーメイドドレスを着た姿は、とても仲間だったとは思えないくらいに眩い。
「っち、本当に女神かよ。…
おうよ!次は俺が結婚する番だからな!!」
大きな声は青空の下でよく響き、堰を切ったように団員たちから口々に祝福とヤジが飛ぶ。
「団長!イヴリンさん、おめでとうございます!」
「イヴリン、アーサーに飽きたらいつでも俺に声をかけてくれ!」
「くそーっ、俺も結婚したいーっ!」
「「「2人とも絶対、幸せになれよーっ!!」」」
幸福な日をにぎわす喧噪の中、声を合わせた副団長たちのエールがひときわ大きく響き渡る。
アーサーは照れくさそうに、イヴリンははにかむように顔を赤らめてありがとうと答えた。
そんな彼らを包み込むように、無数の白い花びらは陽光に照らされて眩く輝き、風にのって天高く舞い上がっていった。
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