盲目の作家の苦難

しぎょく

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三章「第二の人生」

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 授賞式は数社の出版社が集まって行う最大イベント。
 新人賞、読者賞、セラー賞などといった様々な賞がある。
その中で私は、セラー賞の一つ、『絶望の闇と希望の光』が一ヶ月の間に二百万部を売り上げた事で、ミリオンセラー賞が受賞される事になった。
 以前私はベストセラー賞を貰った事があるけれど、まだ上のセラー賞だった。
 選ばれるだけでも光栄な事だとは思うけれど、本当は授賞式などに出たくはなかった。
 大勢の人に見守られながら賞を授与されるのだけど、今の私はあまり人前には出たくはなかった。それなのに、半ば強制的に出席させられる事となった。
 敦美さんはあつしくんに、どうしても私を授賞式に連れてこなければ、これまでの事を全てなしにするといって脅してた。
 あつしくんは姉である敦美さんが怖いというよりも、私と一緒にいられなくされることに酷く怯え、私に頼みこんできた。
 私もあつしくんと離れたくはなかったので、お互い、離されない為にはどうしても受けるしかなかった。
 そして私たちは授賞式が行われる会場に行くために、彼が運転する車に乗ってその場所まで向った。
 気乗りはしなかったけれど、この日初めて彼の運転する車に乗ることが出来た。それだけはよかったと思う。
 滑らかな運転で安定感があって、快適だった。
 このまま会場には行かずに、ずっとこうしていたいと思ったけれど、出来るはずがなかった。
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