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本編
僕はずっと旦那様の抱きまくら
しおりを挟む頭の中が大変なことになってる。
旦那様は僕の手を握ると、甲に、指先に、手のひらに、キスを落としていく。
この部屋には僕と旦那様だけ。
この部屋には奥方様がいる。
奥方様は旦那様と夕食をお召し上がりになった。
奥方様は旦那様のお膝の上で、デザートまで召し上がった。
…………。
じわわわ…って顔が熱くなった。
旦那様はちらりと僕を見ると、口元に笑みを浮かべて手のひらから手首に唇を移した。
「だ……旦那様……っ」
ちゅ、ちゅ、って、音がする。
僕の心臓ははち切れそうなくらいドキドキしてる。
旦那様の手が、僕の胸元のリボンを解いて、プチプチとボタンも外していく。
……そういえば、いつもの侍従服と違う。柔らかくて肌触りが良くて、ボタンや刺繍に黒色や金糸が使われている。……旦那様の、色。
お風呂に入れられたとき、僕は大混乱中で、そういえば着替えもされるがままだった。
旦那様の手がシャツのボタンを外し終えて、僕の肩からするりとシャツを落とした。
シャツの下には、いつも夜に着ている夜着よりも、薄くてサラサラしてて、レースがたくさんついたものを着ていた。
「シュリ」
「は、いぃ」
手首を舐めながら旦那様が僕を呼ぶから、変な声が出た。
「……私の伴侶は誰だと思う?」
「…………」
また、聞かれた。
旦那様の金色の瞳が、まっすぐ僕を見てる。
……僕は、答えていいのかな。
多分間違いではないはずの、答えを、口にしてもいいのかな。
「あ、あの……」
でも怖い。
……だって、もし、僕の勘違いだったら。このお屋敷にも、旦那様のお傍にもいられなくなってしまう。
答えられない僕に、旦那様は怒らないし、答えを促しても来ない。
でも、何も言わない代わりに、僕のズボンに手をかけて、あっさりとするする脱がしてしまった。
上の部分は少し裾が長くてお尻の半分くらいまでを隠すくらいまである。
「シュリ」
「んっ」
下着の上から、僕のそこに触れられた。
下着が濡れて張り付いて、冷たく感じる。
「シュリがいつも着ていた夜着は、花嫁の夜着だ」
「……はな、よめ」
「毎夜、夫を閨に誘うための夜着だ」
「っ」
「それを毎夜私の目の前で着てくれたな。…自分から裸になって」
「そ、れは」
そう教えられたから。旦那様に。恥ずかしかったけど、僕は、旦那様の抱きまくらだから――――
「旦那様」
「うん?」
「僕は……旦那様の、抱きまくらですか…?」
僕に触れてる旦那様の手を握りしめた。
旦那様は少し困ったような驚いたようなお顔をされたけど、すぐに微笑んでコクリと頷いた。
「そうだ。シュリは私だけの抱きまくらだ。これから一生。私だけの。…シュリがいなければ私は夜も眠れない」
「旦那様」
「ファビ、だ。シュリ、私のことはファビと呼べ」
「ファ……ビ、様……?」
「ああ。『旦那様』は他の使用人たちも使うだろう?『ファビ』はシュリだけが呼ぶ名だ」
「ファビ様………」
お名前で呼ぶ。ファビラウス様じゃなくて、誰も呼ばない愛称で。
ファビ様。
僕だけの、ファビ様。
「ファビ様」
「そうだ。何度も呼んでくれ」
「ファビ様…」
呼ぶほど、胸の中が熱くなる。
「シュリ」
するりと僕の手を解いたファビ様が、僕の頬に触れた。
「もう食休みはいいだろ?」
「食休み……?」
「食べた直後に揺すられるのは体に悪いだろ?」
「え?」
ファビ様は微笑んだ顔を僕に寄せた。
僕は目を見開いたまま、ファビ様の柔らかくて熱い唇を、自分の唇に感じてた。
多分、今朝もたくさんされた。
さっきまで手にたくさんされた。
でも、今のこのキスが、一番、ドキドキして、嬉しい。
「……シュリ」
「ん」
「わかってるか?」
「……なに、を、ですか」
キス、気持ちいい。
「今シュリが着てるのは『初夜』のための夜着だ」
「しょ、や」
「ああ」
ファビ様の指が僕の胸に触れた。
「ひゃ……っ」
夜着を着てるのに、ファビ様の指は直接僕の乳首を捉えた。
なんで。
まさか、これも魔法…?
「魔法じゃない」
「ファビ、様」
僕、声に出してしまったんだろうか。
ファビ様はキスをやめて、乳首からも指を離した。
魔法じゃないなら……って胸元を見たら、たくさんついたレースをかき分けるようにして、ファビ様の指が僕の乳首を露わにしてた。
「え」
「可愛い。私だけのシュリ」
ツンとかたくなった僕の乳首を、ファビ様の唇が吸った。
初夜用の夜着には、大事なところに穴が空いていた。丸見えのようなものじゃなくて、何重にもレースを使って、簡単には開かないように穴を塞いでいる。
そういう夜着だから、ファビ様は僕の夜着を脱がせることなく、レースをかき分けるだけであちこちを舐めた。
何度も何度も「シュリ」「可愛い」って言われながら、ファビ様の熱くて硬い杭のような雄々しい物で奥深くまで貫かれた。
気持ちよくて気持ちよくて。
ファビ様の熱い子種がたくさん僕のお腹の奥に注がれたとき、僕のそれからも、ぴゅるぴゅると漏らしてしまった。
ファビ様が、大好き。
僕はずっと、ファビ様の奥様。
ファビ様の力強い腕に抱きしめられるのは、僕にとっても心地良いことで。
ファビ様の物を体の奥で感じながら、包まれる心地よさに、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
瞼が朝日に刺激されて目が覚めた。
僕は眠る前と同じようにファビ様の腕の中だったけど、初夜用って言われた夜着は着てなくて、僕もファビ様も裸だった。
「ひゃん…っ」
少し体を動かしたら、お尻の中でぐりぐりって硬いものが擦れた。
お尻の方に手を伸ばしたら、ファビ様の太い物が、まだ僕の中に入ってた。
「ひゃ…ひゃ…」
起きなきゃ駄目なのに。
お尻をひこうとしたら、引いた分だけファビ様のものが押し込まれて……。
「シュリ」
「ひゃ…っ」
「おはよう、早いな」
「あ、あ、ふぁび、さまぁ」
「まだ起きなくていい」
「でも…っ、あ、あっ、ふぁび、さま…っ」
ずちゅんずちゅんってお尻をこすられて、すごく深いところにファビ様の雄々しいものが入り込んで、何度も注がれた子種をまた注がれた。
「ひゃぅん……っ」
そして僕も……、また、漏らしちゃった……。
「私のシュリ……なんて可愛いんだ」
「ファビ様ぁ……」
「いつまでもこうしていたいものだな…」
「は……、はぁ、あ、あん」
「だが朝食にしないと、だな。昨日は食べなかったから――――」
「朝食……!!」
ファビ様の腕の中ではっと気づいた。
そうだ。
朝食…!きっと、昨日はファビ様も食べてないんだ…!
あ……、お仕事は…!?ファビ様、昨日もお仕事に行ってない…!
「ファビ様…!」
「…っ!?」
「ひゃぁっ」
思い切り体を離したら、ぎゅぎゅぎゅってファビ様の雄々しいものを締め付けながら外に出す結果になってしまった。
僕はぶるぶるって震えてまた漏らしちゃったし、ファビ様の子種が僕のお尻にかかった。
でも、それで躊躇ってる場合じゃない。
「ファビ様…ちょっと待っててくださいね…!」
「…は?」
ちょっとくしゃってなったシーツを体に巻きつけて、僕はベッドを飛び降りた。
「シュリ」
抱きまくらには抱きまくらを全うするための役目がある。
ファビ様は安眠のために僕を一生抱きまくらにするって言ってくれた。ファビ様にとっての奥方様は、抱きまくらの役割をできる人のこと。僕はその役割をもらったのだから、ファビ様のために全部完璧にこなさなきゃ…!
まずはお食事、それから湯浴みの手伝いをして、魔法師団の軍服を着るお手伝いをして、お見送りをするんだ。
それから、乱れてしまったベッドをきれいにして、香草を焚いて安眠できるように寝室を整えなきゃ…!
*****
シュリはどこまでいってもシュリだった。
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