13 / 560
第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
12 誰だって……ドキドキすると思う
しおりを挟む「……ん、ん」
本当に、どうしようもないくらいに気持ちがいい。
与えられる心地よさに身を任せていると、クリスの手がブレザーの合わせから入り込んできた。
「ちょ………たんま!!!」
「何故止める。というか、タンマって、なんだ?」
「まて、ってこと!!何故止める、って、そりゃ止めるよっ」
「何故」
クリスは心底わからない、って顔をする。
「愛しい者に触れることは当然のことだろ?」
「俺は好きじゃありませんっ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないしっ」
「口づけは受け入れるのにか?こんなに蕩けきった顔をして…俺のことが好きではない、と?」
うう、何も言い返せない…。
与えられる口づけが気持ちいいとか心地良いとか、うっかり思ってる段階で、そういうことなんだろうな、とは、俺も思う。けど、もしかしたら、このドキドキは吊橋効果の延長線上かもしれないし、第一、俺はクリスのこともこの世界のことも知らなさすぎる。
「そりゃ…クリスのことは嫌いじゃないよ。素直に格好いいとも思うし」
「なら」
「でも、俺、クリスのことほとんど何も知らないし、この国のこともわかんないし…、納得できるまでは受け入れるなんて出来ない」
「では、納得できたら俺のものになるんだな?」
「う……………、い、いいよ」
「わかった」
クリスは嬉しそうに俺から手を離した。
「それまではお前が嫌がることはしないと誓おう」
「………うん」
「それから、俺にもお前のことを教えてくれ、アキ」
「ん?」
「一目惚れだからな。お前の過去を気にすることはないが、やはり、俺もお前の事を知りたいと思うから」
「…ん、わかった」
知りたい、って言ってもらえるのは嬉しい。
焚き火の近くに置かれていたスープの器を改めて手に取り、口をつけたとき、お兄さんが俺たちのところまでやってきた。
「話は終わった?」
「ああ。これからどうやってアキを口説き落とすか考えていたところだ」
「うん、それなら、向こうにクリストフ用の天幕があるだろ?そこで話しておいで。……正直、正視できないから」
お兄さんは笑ってそう言ったけど、俺は、はっと周りを見てしまった。
輪から少し離れていたとは言っても、ここは外だ。仕切りも何もなく、村の人の視線も、兵士さんたちの視線も、全部俺たちに注がれている。
「~~~~!!!!」
穴、誰か穴掘って…!!俺を埋めて…!!!!
「わかった」
クリスはいつもの不敵な笑みをお兄さんに向けると、適当に果物とパンを手に取りながら、俺を抱き上げてきた。
「ちょ…!?」
「先に失礼する」
満面の笑顔で、堂々と、その場を後にするクリス。
俺は…恥ずかしさが沸点に達してしまい、クリスの胸元に顔をうずめて固まっていた。
「そんなに恥ずかしいか?」
俺たちが離れたあと、ほっとした雰囲気の朗らかな笑い声が聞こえてきた。
「恥ずかしいよ…」
「何度も見られてるだろう」
「クリスが節操なしだからねっ」
「いい顔をするお前が悪い」
「悪くないっ」
クリスが笑う。
俺は、笑うどころではない。
あの状況で、横抱きにされたことも想定外。
心臓…やばい。
俺ね、普通の男子高校生なわけね。それで、比較的平均的な身長はあるし、体重もある。けど、クリスは俺よりもかなり背は高いし、俺を軽々抱き上げちゃうくらい腕力があって。
……こんなこと普通にされたら、誰だってどきどきするよね…?
「……重くないわけ?」
「軽いな」
「…あ、そ」
何が楽しいのか、クリスはご機嫌だ。
そのまま、クリス用だという天幕に入る。
中は少し広め。ランタンが置かれていて松明よりも明るい。
それより気になったのは、簡易ベッドと思われるもの。それが、一台しかない。
「まだ腹が減ってるだろう」
「う…うん…、まあ…」
クリスは手に持っていた食料を、簡易ベッドの近くに用意されていた簡素なテーブルの上に置いた。そこには水差しとコップも用意されている。
「食べながら話そう。ここなら誰にも邪魔されない」
クリスはそう言うと、俺を抱えたまま簡易ベッドに腰掛けた。
…ギクリ、と、俺の体がこわばる。
その反応に気づいているだろうに、クリスは何も言わない。からかってくることもしない。
隣にでも座ろうかと思ったら、クリスの膝の上に横向きで座らされた。
421
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる