【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。

12 誰だって……ドキドキすると思う

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「……ん、ん」

 本当に、どうしようもないくらいに気持ちがいい。
 与えられる心地よさに身を任せていると、クリスの手がブレザーの合わせから入り込んできた。

「ちょ………たんま!!!」
「何故止める。というか、タンマって、なんだ?」
「まて、ってこと!!何故止める、って、そりゃ止めるよっ」
「何故」

 クリスは心底わからない、って顔をする。

「愛しい者に触れることは当然のことだろ?」
「俺は好きじゃありませんっ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないしっ」
「口づけは受け入れるのにか?こんなに蕩けきった顔をして…俺のことが好きではない、と?」

 うう、何も言い返せない…。
 与えられる口づけが気持ちいいとか心地良いとか、うっかり思ってる段階で、そういうことなんだろうな、とは、俺も思う。けど、もしかしたら、このドキドキは吊橋効果の延長線上かもしれないし、第一、俺はクリスのこともこの世界のことも知らなさすぎる。

「そりゃ…クリスのことは嫌いじゃないよ。素直に格好いいとも思うし」
「なら」
「でも、俺、クリスのことほとんど何も知らないし、この国のこともわかんないし…、納得できるまでは受け入れるなんて出来ない」
「では、納得できたら俺のものになるんだな?」
「う……………、い、いいよ」
「わかった」

 クリスは嬉しそうに俺から手を離した。

「それまではお前が嫌がることはしないと誓おう」
「………うん」
「それから、俺にもお前のことを教えてくれ、アキ」
「ん?」
「一目惚れだからな。お前の過去を気にすることはないが、やはり、俺もお前の事を知りたいと思うから」
「…ん、わかった」

 知りたい、って言ってもらえるのは嬉しい。
 焚き火の近くに置かれていたスープの器を改めて手に取り、口をつけたとき、お兄さんが俺たちのところまでやってきた。

「話は終わった?」
「ああ。これからどうやってアキを口説き落とすか考えていたところだ」
「うん、それなら、向こうにクリストフ用の天幕があるだろ?そこで話しておいで。……正直、正視できないから」

 お兄さんは笑ってそう言ったけど、俺は、はっと周りを見てしまった。
 輪から少し離れていたとは言っても、ここは外だ。仕切りも何もなく、村の人の視線も、兵士さんたちの視線も、全部俺たちに注がれている。

「~~~~!!!!」

 穴、誰か穴掘って…!!俺を埋めて…!!!!

「わかった」

 クリスはいつもの不敵な笑みをお兄さんに向けると、適当に果物とパンを手に取りながら、俺を抱き上げてきた。

「ちょ…!?」
「先に失礼する」

 満面の笑顔で、堂々と、その場を後にするクリス。
 俺は…恥ずかしさが沸点に達してしまい、クリスの胸元に顔をうずめて固まっていた。

「そんなに恥ずかしいか?」

 俺たちが離れたあと、ほっとした雰囲気の朗らかな笑い声が聞こえてきた。

「恥ずかしいよ…」
「何度も見られてるだろう」
「クリスが節操なしだからねっ」
「いい顔をするお前が悪い」
「悪くないっ」

 クリスが笑う。
 俺は、笑うどころではない。
 あの状況で、横抱きにされたことも想定外。
 心臓…やばい。
 俺ね、普通の男子高校生なわけね。それで、比較的平均的な身長はあるし、体重もある。けど、クリスは俺よりもかなり背は高いし、俺を軽々抱き上げちゃうくらい腕力があって。
 ……こんなこと普通にされたら、誰だってどきどきするよね…?

「……重くないわけ?」
「軽いな」
「…あ、そ」

 何が楽しいのか、クリスはご機嫌だ。
 そのまま、クリス用だという天幕に入る。
 中は少し広め。ランタンが置かれていて松明よりも明るい。
 それより気になったのは、簡易ベッドと思われるもの。それが、一台しかない。

「まだ腹が減ってるだろう」
「う…うん…、まあ…」

 クリスは手に持っていた食料を、簡易ベッドの近くに用意されていた簡素なテーブルの上に置いた。そこには水差しとコップも用意されている。

「食べながら話そう。ここなら誰にも邪魔されない」

 クリスはそう言うと、俺を抱えたまま簡易ベッドに腰掛けた。

 …ギクリ、と、俺の体がこわばる。

 その反応に気づいているだろうに、クリスは何も言わない。からかってくることもしない。
 隣にでも座ろうかと思ったら、クリスの膝の上に横向きで座らされた。


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