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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
13 同じベッドで眠るしかないですね?
しおりを挟む何故、膝の上。
「クリスっ」
「嫌か?」
「っ」
『嫌がることはしない』
確かに、そう、言っていた。
ずるいなぁ。
厳密に言えば嫌ではないんだから。恥ずかしいだけで。
「……いいよ。誰も見てないし。でも、足、痛くなるよ?」
「心配いらない。鍛えているから」
そんなものかと頷いてしまった。
なので、この体勢で座り位置が決定してしまう。
妙に静かだ。
外からは時々、笑い声が聞こえてくる。
…なんか、ほっとした。昼間のクリスの話からしたら、村人さんたちとの関係はもっと線を引いたものになると思ってたから。
…きっと、あの祈りの時間が、村人さんたちの心も癒やしたんだ。
「アキ」
呼ばれてクリスを見たら、口になにか入れられた。
甘酸っぱくて、瑞々しい果実だ。
「美味しい」
味は…そうだな。ベリー系のそれに近い。
「…そういえば、昼も食べてなかった」
それどころではなかった。
やることが多すぎて、空腹感にも気づいてなかった。
「この村で栽培されてる物だ」
めちゃくちゃにされていたあの畑か。
「それじゃ」
「わずかに残ったものを出してくれたんだろう」
「………」
もう一つ、口の中に入れてくれた。
「王都から救援部隊が派遣されるだろう。兄上がすでに編成を始めている」
嬉しそうに、誇らしげに、クリスは言葉にする。
お兄さん、あの忙しさの中で、そんなこともしてたなんて。
「凄いね、お兄さん」
「惚れるなよ?」
大真面目な顔で言われて、飲み込みかけていた果実があらぬところに引っかかったものだから、盛大にむせた。
クリスは笑いながら背中をさすってくれる。
「ありえないから…」
お兄さんは尊敬できる人だと思う。頼れる大人だ。
だけど、それだけで、好きとか、恋愛感情はどうやったって生まれてこない。
クリス以外と…なんて、考えられない。
「っ」
「アキ?」
顔が。顔が熱い!
俺、今、何考えた!?
「どうした?体調が悪いか?」
頭を思い切り左右に振った。
落ち着け、俺。問題ない。問題はない。何を考えたか、なんて、クリスにはわかるはずもないんだから。
「だ、大丈夫…っ」
声が上ずってしまう。もう、ほんと、なんだって言うんだ。
クリスはなんだか楽しそうで。
「ほら」
口元にまた果実が運ばれる。
まだ顔が熱くなってることは自覚しつつも、口を開いて果実を頬張る。
クリスの親指が、閉じた唇をなでてきた。
「んっ」
思わず目を閉じた。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!!!
「俺にも分けてくれ」
そう言って、まだ咀嚼中だというのに唇を重ねてきた。
……強引な口づけに慣れてしまった自分が怖い。
舌が絡む。濃厚な、甘酸っぱい口づけ。
コクリ、と、喉がなる。クリスも飲み込む音がした。
それからゆっくり離れていく唇。
やだ。もっとしてほしい。……なんて、ちらりとでも思ってしまった自分が恥ずかしすぎる。
「…そんな目をするな」
目元に指が触れる。
「抱きたくなる」
「だ………っ!?」
言葉が詰まる。
言われたことに心臓がバクバクする。
俺は、本当にどうしたいんだろう?
クリスは終始ご機嫌で、果実やパンを俺の口に運んでくれる。少し喉が乾いたなって思う絶妙なタイミングで水も差し出してくれる。
食べ終わってからも、ずっとクリスの膝の上。
苦しくはない力で抱き込まれて、触れ合うだけのキスも、舌を絡めるキスも、何度も、何度も交わす。
「そろそろ休もう」
耳元で囁かれる声に、身体がぞわりとした。
クリスはタリカ村に戻ってから、胸当てとかを外して濃紺の服だけになっていた。
腰には常に帯刀していたけど。
その剣を、クリスは枕元に置いた。それから、躊躇いなく上の服を脱ぎ捨てて上半身裸になる。
…うん、わかってた。みなくても、いい筋肉がついているんだろうな、って、予測できていた。でも、現実に目にした衝撃は凄かった。
思わず見惚れてしまう。マッチョかといえばそんなことはない。けど、見事。腹筋は綺麗に割れてるし。均整の取れた体ってのは、こういう体のことを言うんだろうな。
「風呂は我慢してくれ。明日は宿場町による予定だから、そのときに、だな」
「あ、うん」
汗もかいたし埃っぽい。でも、気になるほどじゃない。
どうしようかと逡巡したけども、とりあえずブレザーは脱いだ。むしろ、もっと早く脱いでおけばよかった。結構あちこち汚れてたり焦げ目がついている。
ネクタイも外してブレザーの上に置いた。ワイシャツのボタンもいくつか外す。流石に、クリスのように上半身裸になるのは気が引けた。
クリスの膝の上から降りて、ベルトも外した。…脱がないけどね。
ベッドに腰掛けて靴も脱ぐ。クリスのブーツの隣に並べてみたけど、まるで大人と子供のようなサイズ感。
「アキ」
唇に、クリスのそれが触れる。
暖かくて、優しい口づけだった。
触れ合わせたまま、体をベッドに押し倒される。
その俺の横に、クリスも寝転んできた。
「おやすみ」
「…おやすみなさい」
簡易ベッドは少し狭い。
クリスの左腕は、当然のように俺の頭の下に差し出され、右手で抱き寄せられた。
「…」
鼓動が早くなる。
体が近くて、この鼓動は多分クリスに伝わっている。
「……嫌か?」
確かめるような声。
少し汗臭い。緊張もしてる。けど、嫌じゃない。
「……大丈夫」
クリスが微笑んだ気配がした。
背中を何度もさすってくれる。
ああ、すごく、落ち着く。
この体温も、俺に被さる右腕の重みも、少し早い鼓動も。
「………クリス」
「ん?」
「………………………………おやすみなさい」
「おやすみ」
2回目のおやすみの挨拶は、少しの笑みと額への口づけがついていた。
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