【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。

27 これは堕ちたってことでいいですよね?

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 まるで噛み付くような激しさで、性急に舌が入り込む。
 舌の動きにも容赦がない。ものすごく奥にまで差し込まれてかき混ぜられて、息が上がる。
 意識に霞がかかり始めた頃、ようやく開放された。
 くったりとクリスに体を寄せていると、宥めるように背中を擦られる。

「やっと言ったな」
「……やっと?」
「俺のことを、『好きかも』って言ってたからな」
「いつ?」

 何それ。言った覚えがないんだけど。

「今朝」

 言い切られて首を傾げてしまった。全く記憶にない。
 でも、意識が朦朧としている間に口走っていたと言うなら、恥ずかしいことこの上ない。

「クリスは」
「ん?」
「俺が、クリスのこと選ぶ、って、なんで思ってたの…?」

 クリスは俺をじっと見て、苦笑した。

「前にも言っただろ?」

 そう言われてまた首を傾げてしまった。

「ほんとに忘れっぽいな…アキは。いや、本気と捉えてなかったのか」
「何が?」
「俺の口づけを、あんな蕩けそうな表情をして受け入れるアキが、俺のことを嫌いなわけないだろう?」

 …ああ、うん。なんか、聞いたことあるな、それ。

「……だって、気持ちがいいから……」

 正直に言ったら笑われた。
 なんだというのか。
 ちょっとムッとしてたら、立ち上がったクリスに抱えられた。
 そのまま器用に扉を開け、浴室から出た。
 眠る前に見た部屋だ。
 床に、適当に脱いだと思われる装備品が置かれている。なんだか、やたらと大きな紙袋もいくつか。
 ベッドのそばにあるテーブルの上には、タオルのかかった桶と、水差しが置かれていた。
 クリスは特に身体を拭くこともなく、部屋の中を進む。
 降ろされた先はベッドの上。…予想はしてたけど。極力見ないようにしていたのに、否が応でもクリスの身体を見てしまう。
 …本当にたくましい体だ。でも、あちこちに裂かれたような傷痕がある。どれも古傷のようで、新しい傷がないことにほっと息をついた。

「…触っていい?」

 クリスはベッドに上がってくると、俺の前髪をかきあげた。

「好きにしろ。…全て、お前のものだ」

 目を細めて言うクリスに、胸がやたらと締め付けられる。
 覆いかぶさるような位置で俺を見下ろすクリスの首筋に、そっと手で触れた。
 その手を少しずつおろしていく。
 見るのは初めてではないのに、すごくドキドキする。
 左胸の傷跡に触れてみた。
 塞がってるのはよくわかるけれど、また、胸の奥が締め付けられる。
 魔物と戦ったときの傷だろうか。それとも、別の。

 …気づいたら、その傷痕に口づけていた。

「……アキ」

 声が熱い。
 胸元から唇を離したら、クリスの中心部分が反り上がっているのが視界に入った。

「……」

 ゴクリ…と、喉を鳴らしてしまったのは無意識。
 告白した。好きだって言った。
 クリスはずっと、俺のことを抱きたいって言ってた。
 風呂上がりでお互い何も着てなくて。
 する、のかな。

「…くりす」

 心臓の音が大きすぎる。
 クリスの指が俺の頬に触れた。たったそれだけでも、体にぞわぞわっと快感が生まれてしまう。

「アキ」
「…なに?」
「……俺は、お前が嫌がることはしたくない。お前は…どうしたい?」

 それは、前に誓ってくれたこと。
 相変わらず心臓はばくばくうるさいけど、俺も、クリスの頬に指を触れさせた。

「触ってほしい。クリスに、抱かれたい」

 それから、どちらからともなく唇を重ねた。
 クリスに触れてほしい。俺もクリスに触れたい。
 ……昨日初めて会った人なのに、抱かれたいって思うのって、どうなのか。この人に会うまでは、俺、恋愛対象は女の子だったのに。そりゃ、誰でもいいってわけじゃなくて、……「クリスだから」ってことなんだけど。ありきたりだけど…。
 あー、これ、あれかな。
 クリスは「一目惚れ」って言ってたけど、俺も、なのかな?

「ん…んん」

 舌を絡めながら、全身にクリスの重みを感じる。…それがまた心地良い。
 素肌を合わせ、足を絡めて、濡れた髪を梳く。

「は……あ、ぅんっ」

 腰を揺らされ声が漏れてしまう。
 硬くなったクリスの男根に擦られて、俺のもまた硬くなっていく。
 そして、不意に思い出してしまった。今朝の夢のこと。

「あ、あぁっ、やぅ……っ」

 後ろの窄まりがひくひくうごめいてる気がした。
 俺、期待、してるのかな?あの、奥を突かれる、頭がおかしくなりそうな快感を。

「は……くり、す、くりす…っ」

 喘ぎが漏れっぱなしの俺の唇に、ピタッとクリスの指が当てられた。

「アキ、声は我慢して」
「なん……で…?」
「誰にも聞かせたくない。俺だけが聞いていい声だ。ここは壁も扉も薄い」
「……ん、ぅん」

 全く自信がないけどね!!
 だって、気持ちよすぎてどうしたって声が上がってしまうんだから…。

「それから」
「今度は何…?」
「今は抱かない」

 きっぱり言われて、嫌な汗が出てきた。
 どう言ったらいいかわからなくて唇を震わせていたら、クリスは困ったように眉尻を下げる。

「そんな顔するな」
「…っ、だ、って」
「今は、だ。無理をしすぎて熱を出して倒れて…まだ熱も下がりきっていない。だが明日は王都に向けて出なければならない。これ以上お前に負担をかけるわけに行かないんだ。それに」

 クリスがニヤリと笑った。

「抱くときは、城の俺の部屋で、好きなだけ喘げ。声が枯れるまで啼かせてやる」
「っ」
「明日の夜には絶対に抱く。それまでは我慢だ。…わかるな?」

 言われてる内容がアレすぎる。

「……わか、った」
「よし」

 クリスは満足そうに笑ってから、徐に俺の胸元に顔を近づけた。


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