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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
26 間もなく堕ちる予感がします
しおりを挟むなんだか温かい。
ゆらりゆらり。
名前を呼ぶ耳元の声は心地よくて。
この声、知ってる。
俺の、大好きな声。
ゆらり、ゆらり。
優しい手に抱きしめられている。
全身包む温かいもの。
とくんとくん。
この鼓動。
安心、する。
「アキ」
名前を呼ばれて意識が浮上してきた。
気持ちがいい。
目を閉じたままでいいかな?
「アキ」
もう一度呼ばれた。
「……くりす?」
手を動かしたらぱしゃんて音がした。
……水の音?
「目が覚めたか?」
状況がよくわからない。
どうやら俺はクリスに支えられて座っているようだ。
…………浴槽の中に。
「!?」
驚きすぎて立ち上がろうとしたら、クリスに引き戻された。
「な、な、なんで」
「汗をかいていたから。昨日は風呂に入れなかったしな。髪も体も洗った」
「だ、だからって……っ!!」
俺たちは風呂にいた。
正確に言うなら浴槽の中に。
もっと正確に言うなら、お互い裸で!!
いや、そりゃ、風呂に入るなら裸は当然なんだけど、なんでクリスと一緒!?
動揺しまくる俺を見ながら、クリスは喉の奥で笑う。
「そんなに慌てることか?」
「慌てるよ!!」
だって、風呂だよ!?
クリスと一緒に風呂なんて……恥ずかしくてどうにかなるっ!
「俺、もう、あがるからっ」
「駄目」
立ち上がろうとしたらまた阻まれた。
向き合うような形で抱きしめられて、俺の手はクリスの胸元にかかってしまう。
「…っ、はずかしいっ」
「これからはずっと一緒なんだから。慣れるしかないよな?」
笑いながら、クリスは俺の顎をとった。
指先だけで上向かされ、抗議する余裕もないくらいに性急に唇を重ねられる。
「ん…っ」
口の中を舌が這う。
…やばい。
このキスは、やばい。
「は……んぅ、く、りす……っ」
コクリと喉が鳴る。
狭すぎず広すぎない浴槽の中で、クリスの足をまたぐように座らされてる。
背中はしっかりとクリスに抑えられていた。
「ま……っ、ん、んんっ」
逃げても舌が追いかけてくる。
「くりすぅ……」
あ、涙声になってしまった。
「気持ちいいだろう?」
ようやく唇を開放されたと思ったら、そんなことを聞いてくる。この声が反則過ぎる。何を言われてもうなずいてしまいそうになるから。
「………きもちいい……」
わかっていても、従ってしまうんだけど。
ほんとに気持ちいいから。
「…アキが可愛いすぎる」
クリスの声が掠れてた。
…また、唇が重なった。
頭がぼぅっとする。
あんなに恥ずかしくて焦っていたのに、今はこれが気持ちよくて拒絶できない。
お湯は熱すぎない。寒くないくらいの温度。
自分の鼓動の早さばかり気になっていたけど、クリスの胸に置いた手から伝わる鼓動が早い。…俺だけじゃないんだ。
「…クリス」
首に腕を回して抱きついた。
濡れた髪を指に絡めてみた。…クリスの髪に触るの、初めてかもしれない。…メッシュのところって、染めてるわけじゃなさそう。…改めて見てみると不思議な髪色。
「アキ、愛してる」
目を覗き込まれた。
碧い瞳が真っ直ぐに俺を見てる。すごく、真剣な眼差しで。
昨日から何度も聞いた言葉。
その度に否定したけど。
俺は、普通の高校生だし(魔法が使えるらしいけど)、クリスのこと何も知らないけど(そういえば、年も知らない)、…そもそも女の子が好きだし(お付き合い経験ないけどね!)。
自分の中で自分にツッコミながら、結局、言い訳にしかなってないことに呆れた。
自分の気持ちなんて、もう、わかりきってるのに。ただ、認めるだけの勇気も余裕もなかっただけ。
よくわからない世界に来て、なんで自分が、って思うところもあって。悲しいとか寂しいとか辛いとか、多分、そういう思いはずっとあって。
だけど、すぐにクリスに会った。
クリスと一緒にいると、そんな思いは感じなかった。自分でも処理できない感情に振り回されて、でも、嫌ではなくて。
クリスが傍にいてくれたら、大丈夫って思えるくらいで。
「クリス……」
目元に触れる手が優しい。
「アキ」
額に唇が触れる。
「アキ、聞かせてくれないか」
クリスの懇願が何を言っているのかわかる。
「……っ」
触れてくれるのが好き。
熱くて蕩けそうになる口づけが好き。
俺を見る優しい目が好き。
俺のことを大事にしてくれるところが好き。
悪戯を考えてるようなニヤリとした笑みも好き。
大きな手で頭を撫でてくれるのも好き。
……結局、全部、全部、大好きで。
「…………」
涙が溢れてきた。
どんなに否定しても、好きなものは好きで。
そもそも、好きじゃなかったら、キスも体に触れるのも許してない。
吊橋効果かとも思った。けど、これは違う。絶対、これは、本物で。
自分が男の人を好きになるなんて、否定したい気持ちもあって。
最後の最後まで、認めたくなかったから。
……こんなにも、好きになってたのに。
願望のような、夢だった。
クリスに触れてほしくて、クリスの思いを俺に向けてほしくて。
ただ、先延ばしにしてただけ。
認めてしまうのは、怖い。
この先どうなるのかがわからない。
……でも、もういいや、って。
もやもやしてるよりも、言ってしまおう、って。
クリスが、傍にいてくれるなら。
俺が、クリスの傍にいてもいいなら。
クリスの指が涙を掬っていった。
「クリス……」
顔が熱い。
「………好き、です」
「アキ」
「好き………っ」
泣き声のまま言葉にしたら、荒々しく唇が塞がれた。
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