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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。
16 歩行リハビリ開始です!
しおりを挟む『病は気から』
そんな言葉を、俺は痛感していた。
左肩のリハビリが順調です。
初日の盛大な叫び声は、ギルマスが遮音の魔導具を起動させるまで、隣の部屋ばかりじゃなくて、廊下の方にも響いていたらしい。
恥ずかしい。
その日から一日置きに続けられてるリハビリは、初日ほどの痛みはなくて、しっかり上まであがってる。
どうも、俺の心持ちも問題だったようで。色々吹っ切れた俺は、みんなが驚くくらい回復が早くなった。
ただ、リハビリのあとは少し熱が出る。
なので、クリスの甘やかしモードが発動する。それ自体は俺自身めちゃくちゃ嬉しいので、受け入れてます。
そして、左手の指がね。動くようになってきたんだよ。
夏の一の月が終わる頃。
みんなのおかげで、俺はここまで頑張ってこれたんだよ。
「肩、結構いいですね。食事はどうですか?」
「んー、結構食べれてる……よね?」
ラルフィン君に質問されて、首を傾げながらクリスを見た。
「前と同じ量ではないがな」
「動くようになればもう少し食べれるだろ」
ぐりぐりとギルマスが頭をなでていくのはいつものこと。
「それじゃ、そろそろ歩いてみます?」
ラルフィン君の提案に、すぐ頷いた。
今すぐでも大丈夫。ちゃんと服(怪我人仕様の甚平さんみたいなものだけど)着てる!
「歩きたい」
心配顔のクリスに、真正面から言った。
クリスは諦めたように息をつくと、俺の背中に手を当ててくる。
「無理はだめですよ?」
提案したラルフィン君も、結構心配顔。
「張り切りすぎて暴走しそうだからな、坊主」
ギルマスは安定の「くくく」笑い。
しかし。
張り切りすぎて暴走とは。俺をなんだと思っているんだろう。
「暴走なんてしませんよ…」
そんなむちゃしないし!
クリスに背中を支えられたまま、足を動かしてベッドからおろした。右手と腰でずってベッドの端まで進んで、足をしっかりと床につける。
そこまでやって、ギルマスが俺の左肩を三角巾で吊った。
右手側にはクリスが立って、俺の手をとった。
ちょっと、緊張する。
「ゆっくりな?」
「うん」
クリスの手を握って、足に力を入れてベッドから立ち上がる。
気をつけたつもりでも勢いがついたせいか、ほんの少し、目眩がした。
「座るか?」
「大丈夫!」
ほんとに久しぶりに、自分の足で立った。
……頭の中で某有名アニメのフレーズが鳴り響いたけど、わかってくれる人がいないので言葉にはしない。
――――足腰の筋肉が衰えたら歩けなくなるからねぇ
っていう、ばあちゃんの笑った顔が浮かんだ。
うん。ほんと、そうだね。約二ヶ月、ほとんどベッドの上の住人で、そのうち一ヶ月位はほぼ寝たきりだった。いくら、足とかリハビリしてたからって、前のような筋力が戻ってるわけもない。
軽くなった自分の体重すら、満足に支えていられない。
足から意識をそらしたら、すぐに崩れ落ちそうなくらい、足ががくがくする。
「アキ」
「…もうちょっと」
クリスの手に力が入る。
歩きたい。少しでも。
力の入りにくい足だけど、なんとか左足に力を入れて踏ん張って、右足を少し前に出す。
…うん、一歩、でた。
それで少し気が緩んだと思う。
もう一歩もいけるよね…って、ちょっと欲を出した。
左足も出そうとしたところで、さぁぁっと血の気が引いていって、一気に下半身から力が抜けてしまった。
「あっ」
「アキっ」
「アキラ」
あ、やばい、倒れる。
そう思ったときには、もう左右から伸びていた手に支えられてて、すぐにクリスに抱きかかえられた。
「アキ………っ」
「う、ごめん」
「だから暴走するなって言っただろう…」
「すみません……」
「無茶は駄目です。駄目ですよ!?」
「ご、ごめんなさい……」
三人から怒られました。
むすっと怒ってるクリスは、俺をそのままベッドにねかせた。強制的に。
額にはすごい汗をかいていたようで、ラルフィン君が拭ってくれる。
横になると血の気が引く感覚は薄れた。あれは多分貧血症状なんだろうな。
でも立てたし一歩だけでも歩けたーって満足してたら、いきなりクリスにキスされた。
「ん……んっ」
すぐに唾液がながれこんでくる。
それから、俺の左手を包むラルフィン君の手。
身体のだるさとか、脱力感とか、そういうのが少なくなっていく。
二人から癒やしの力が与えられてるってことか。
「これから歩く方も取り入れましょう。でも、一人で勝手に動いちゃだめですよ?」
「はい……」
歩行リハビリ自体は、頑張ろう。一人で勝手に…ってところは、守ろう…。みんなに心配かけたくないしね…。
反省反省…って思ってたら、クリスが肌掛けを俺の口元までかけてきた。
「少し休め」
「ん……わかった。……クリス、ここにいる?」
「いる」
額に…キス。
なんだかすぐに眠気に襲われる。
「おやすみ」
右手にクリスの体温を感じながら、眠気に身を委ねた。
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