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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。

37 両手で抱きつきたい

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 クリスにべったりくっついたまま、夕飯を食べた。
 美味しそうなものばかりだったけど、気持ちがいっぱいいっぱいになってて、食が進まない。お昼に結構たくさん食べてしまったから、っていうのはあるけど、作ってくれた方に申し訳ないと思ってしまうほど残してしまった。
 でも、クリスは怒ったり呆れたりしなかった。無理して食べなくていいって言ってくれた。
 テーブルの上に果実水と果物を残して、下げてもらった。
 クリスは食後のお茶も断って、あとはいいから、と、メリダさんを返した。

 …これで、二人きり。

 何口か、果実水を飲まされた。

「熱は……ないな」
「うん、大丈夫」

 部屋の中の移動は、全部クリスの腕の中。
 俺だけの場所。
 思わず変な笑い方をしてたら、クリスも笑った。

 抱かれたまま風呂場に行く。
 いつもどおり、俺はソファに座ってクリスを待つ。
 …クリスの身体は、いつも綺麗だ。ずっと俺の傍にいてくれてるのに、いつ鍛えてるんだろう。

 クリスの支度ができたら、俺の番。……とは言っても、現状クリス服だけだから、これを脱いだら全部終わる。
 自分の腕とか肋とか見下ろして、少しため息が出る。
 相変わらず細いままだし、まだ骨が浮き上がって見える。もうちょっと肉をつけないと、抱き心地悪そう。

 むむ…って唸っていたら、眉間をクリスにグリグリされた。

「また変なこと考えてるだろ。食べる量も増えてきてるんだから、そのうち前のように戻る。流石にこれ以上痩せてたら心配すぎて抱けないけどな」
「……また」
「わかりやすいんだよ」

 笑って、キスしてくれた。
 考えるだけ損な気がする。

 クリスは俺を抱き上げて、浴室に向かった。
 洗ってもらうのも慣れたし、気持ちがいいから、むしろ、してもらいたい。
 濡れたクリスの髪を撫でるのも好き。
 身体と髪を洗い終わったら、必ずキスをする。
 俺がすぐ逆上せて体調を悪くするから、お風呂での戯れは最小限。ほぼしてない。キスだけ。

「…なんか、緊張する」
「今更だな」
「ん…、わかってるんだけど、これから、する、って思ったら、……なんか」

 ちらりとクリスを見上げたら、盛大なため息をつかれた。
 俺、何かしでかした?

「煽るなよ」

 耳元で、耳朶を食まれながら言われた。

「ん……っ、煽ってんのはクリスの方…っ」

 心臓がバクバクし始めた。
 耳全体を食まれて、それだけの刺激で俺の身体は熱くなってしまう。

「今までで一番優しく抱くから」
「ん……っ」

 触れてないのに、お互いの昂りを感じた。
 クリスの足の上に対面で座ってる今のこの状況が、急に恥ずかしくなってしまって、右手を伸ばして抱きついた。

「湯に浸かったらあがろう」
「うん……」

 クリスはそのまま俺を抱っこ状態で運んで、湯船に浸かる。
 クリスの足の上に乗せられてるから、胸の少し下くらいまでが湯に入った。
 クリスは、手桶で少しずつ俺の肩や背中に湯をかけてくれる。それが、とても気持ちいい。気持ちよすぎて、クリスの肩口に顔を当てて、抱きついてしまう。

「可愛い」
「…クリスに可愛いって言われるの、好き」
「なら、たくさん言おうか」
「……恥ずかしいのでやめてください。ごめんなさい」

 身が持ちません。俺が悪かったのでやめてください…。
 クリスはくすっと笑って、俺の頭に何度もキスを落とした。

「アキが可愛すぎてどうにかなりそうだ」
「どうにもならないよ」

 はぁ…と息をついたら、俺を横抱きにしてクリスが立ち上がった。

「アキは自覚が足りない」
「自覚??」
「自分が可愛いって言うこと」
「……だって、可愛くないもん」
「俺にどれだけ愛されているかということ」
「……自覚、してるよ?」
「そう?」

 ベッドに直行かと思ったら、ゆっくり脱衣所に立たされた。
 俺がふらつくことなく立っていられるのを確認してから、クリスが優しく、髪と身体を拭いてくれる。

「…じゃあ、もっと自覚してほしい。本当に、アキは俺の全てなんだから」
「だったら」

 手の届くところにタオルがあってよかった。
 一枚手にとって、クリスの頭にふわっとかける。

「俺が、クリスのことをどれだけ好きかってことも、知ってほしい。…クリスがいなきゃ、俺、生きていけない。寂しくて死ぬ」

 …左手を動かせないのがもどかしい。右手だけじゃ、クリスの髪を拭けない。

「じゃあ、互いに大事にしないとな」

 俺の右手に、クリスの左手が重なった。
 そのままざっくりと髪と身体を拭いて、俺の右手を握ったまま、タオルを床に落とす。

 触れ合わせるだけのキスをする。
 両手でクリスに抱きつきたい。ぎゅって、力の限り抱きしめたい。
 もどかしい。
 どうして俺の左手は動かないんだろう。


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