【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

文字の大きさ
197 / 560
第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。

37 両手で抱きつきたい

しおりを挟む



 クリスにべったりくっついたまま、夕飯を食べた。
 美味しそうなものばかりだったけど、気持ちがいっぱいいっぱいになってて、食が進まない。お昼に結構たくさん食べてしまったから、っていうのはあるけど、作ってくれた方に申し訳ないと思ってしまうほど残してしまった。
 でも、クリスは怒ったり呆れたりしなかった。無理して食べなくていいって言ってくれた。
 テーブルの上に果実水と果物を残して、下げてもらった。
 クリスは食後のお茶も断って、あとはいいから、と、メリダさんを返した。

 …これで、二人きり。

 何口か、果実水を飲まされた。

「熱は……ないな」
「うん、大丈夫」

 部屋の中の移動は、全部クリスの腕の中。
 俺だけの場所。
 思わず変な笑い方をしてたら、クリスも笑った。

 抱かれたまま風呂場に行く。
 いつもどおり、俺はソファに座ってクリスを待つ。
 …クリスの身体は、いつも綺麗だ。ずっと俺の傍にいてくれてるのに、いつ鍛えてるんだろう。

 クリスの支度ができたら、俺の番。……とは言っても、現状クリス服だけだから、これを脱いだら全部終わる。
 自分の腕とか肋とか見下ろして、少しため息が出る。
 相変わらず細いままだし、まだ骨が浮き上がって見える。もうちょっと肉をつけないと、抱き心地悪そう。

 むむ…って唸っていたら、眉間をクリスにグリグリされた。

「また変なこと考えてるだろ。食べる量も増えてきてるんだから、そのうち前のように戻る。流石にこれ以上痩せてたら心配すぎて抱けないけどな」
「……また」
「わかりやすいんだよ」

 笑って、キスしてくれた。
 考えるだけ損な気がする。

 クリスは俺を抱き上げて、浴室に向かった。
 洗ってもらうのも慣れたし、気持ちがいいから、むしろ、してもらいたい。
 濡れたクリスの髪を撫でるのも好き。
 身体と髪を洗い終わったら、必ずキスをする。
 俺がすぐ逆上せて体調を悪くするから、お風呂での戯れは最小限。ほぼしてない。キスだけ。

「…なんか、緊張する」
「今更だな」
「ん…、わかってるんだけど、これから、する、って思ったら、……なんか」

 ちらりとクリスを見上げたら、盛大なため息をつかれた。
 俺、何かしでかした?

「煽るなよ」

 耳元で、耳朶を食まれながら言われた。

「ん……っ、煽ってんのはクリスの方…っ」

 心臓がバクバクし始めた。
 耳全体を食まれて、それだけの刺激で俺の身体は熱くなってしまう。

「今までで一番優しく抱くから」
「ん……っ」

 触れてないのに、お互いの昂りを感じた。
 クリスの足の上に対面で座ってる今のこの状況が、急に恥ずかしくなってしまって、右手を伸ばして抱きついた。

「湯に浸かったらあがろう」
「うん……」

 クリスはそのまま俺を抱っこ状態で運んで、湯船に浸かる。
 クリスの足の上に乗せられてるから、胸の少し下くらいまでが湯に入った。
 クリスは、手桶で少しずつ俺の肩や背中に湯をかけてくれる。それが、とても気持ちいい。気持ちよすぎて、クリスの肩口に顔を当てて、抱きついてしまう。

「可愛い」
「…クリスに可愛いって言われるの、好き」
「なら、たくさん言おうか」
「……恥ずかしいのでやめてください。ごめんなさい」

 身が持ちません。俺が悪かったのでやめてください…。
 クリスはくすっと笑って、俺の頭に何度もキスを落とした。

「アキが可愛すぎてどうにかなりそうだ」
「どうにもならないよ」

 はぁ…と息をついたら、俺を横抱きにしてクリスが立ち上がった。

「アキは自覚が足りない」
「自覚??」
「自分が可愛いって言うこと」
「……だって、可愛くないもん」
「俺にどれだけ愛されているかということ」
「……自覚、してるよ?」
「そう?」

 ベッドに直行かと思ったら、ゆっくり脱衣所に立たされた。
 俺がふらつくことなく立っていられるのを確認してから、クリスが優しく、髪と身体を拭いてくれる。

「…じゃあ、もっと自覚してほしい。本当に、アキは俺の全てなんだから」
「だったら」

 手の届くところにタオルがあってよかった。
 一枚手にとって、クリスの頭にふわっとかける。

「俺が、クリスのことをどれだけ好きかってことも、知ってほしい。…クリスがいなきゃ、俺、生きていけない。寂しくて死ぬ」

 …左手を動かせないのがもどかしい。右手だけじゃ、クリスの髪を拭けない。

「じゃあ、互いに大事にしないとな」

 俺の右手に、クリスの左手が重なった。
 そのままざっくりと髪と身体を拭いて、俺の右手を握ったまま、タオルを床に落とす。

 触れ合わせるだけのキスをする。
 両手でクリスに抱きつきたい。ぎゅって、力の限り抱きしめたい。
 もどかしい。
 どうして俺の左手は動かないんだろう。


しおりを挟む
感想 543

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...