【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

36 噂、再び

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「『例の』ってなに??」
「昨日の魔法、俺達は誰が使ったのか理解してるんだが、駐屯兵士団の者は認識できてなくてな。エアハルトが土属性の魔法を使っているのは見ていたらしいが、氷塊はどうやってと聞かれたから、優秀な魔法師が同行していると言っただけだ」

 クリスが少しだけ表情を緩めて、俺の髪をいじりながら教えてくれた。
 ………優秀、って言われた。恥ずかしいけど、口元がにまにまする。……クリスに褒められるの、ほんと、好き。

「も、申し訳ありません。殿下のご婚約者様が軍属魔法師とは知らず……」
「軍属ではない」
「……え?いや、ですが、魔法師は」

 また、クリスのため息。
 どうしよう。
 機嫌がどんどん悪くなる。

「アキは私の物であって国の物ではない。履き違えるな。お前たちのためにアキが魔法を使うことはない」
「――――はい。申し訳ありませんでした」

 ……もしかして、昨日、俺が寝てる間になにかあったのかな。
 魔法絡みで。
 だとしたら、クリスのこの対応もうなずけるというか。

「えーと、ルデアックさん?」
「アキ」

 クリスが険しい顔したから、頬にキスしとく。
 そしたら、ほら、ちょっと険が取れた。

「クリス、顔怖いよ」
「アキ」
「大丈夫だから」

 どんな話をされていたのかは知らないけどさ。

「……あの」

 呼び止められたわりには俺がクリスにベタベタし始めたから、ルデアックさん困惑顔。ごめんなさい。

「俺、たしかに色々魔法使えるんですけど……多分。でも、体力ないのでたくさんは使えなくて。でも、クリスがいればほとんどのことできちゃうし、どうしても魔法が必要なときは、同行してる冒険者さんのエアハルトさんが使えるので、遠慮なく言ってくださいね」

 エアハルトさんに丸投げしとく。
 なんか、俺が言ってた!って言えば、大概のことしてくれそうだしな。使える人はこき使おう。

「あと、俺は軍属じゃなくてクリス隊所属なので、クリスの言う事しか聞かないので。生意気でごめんなさい」

 クリスの膝の上でぺこんと頭を下げたら、ルデアックさんが慌て始めた。
 あれか。殿下の婚約者に頭下げさせた!?的な?

「あ、あの、おれ、いや、私に、そんなこと、されなくていいのでっ」
「でも、俺、できないことばかりなのは事実だし」
「いえ。いいんです。はっきり言っていただいて、私の班の者たちも納得できると思うので。……これは、あくまでも噂として広がってきたことですが」

 ルデアックさん、諦めたように肩から力を抜いた。

「第二王子殿下のご婚約者殿は、殿下を誑かし、寵愛をいいことに我儘三昧していると、駐屯部隊に流れております」
「……へ?」

 おおう……。よくない噂とは思っていたけど、またそれは酷い…。

「………くだらない」
「そうそう。くだらない………じゃなくてさ、俺、身に覚えな………………くも、ない?」
「ん?」
「……だって、ここに来たのも、ほぼ、俺の我儘みたいなものだよ?」
「うん?俺も望んだことだろ?」
「そう?それに、俺、これから我儘全開であの巣に登りたいって、クリスにねだろうとしてるとこなんだけど」
「……それは初耳だ。まあ、寵愛ってところも間違ってないな。俺はアキに誑かされるなら本望だし。むしろ、もっとせまってくれ」
「恥ずかしいので却下します!」

 くすくす笑い始めたクリスが、俺の頬や額や頭にキスしまくる。人前でやられても嫌じゃないってところが怖いね。

「あ、まあ、そんなわけで、その噂、ホントっぽいので。でも、俺、こんななので、あまり肩肘張らなくていいというか、まあ、普通に接してもらえたら嬉しいなというか」

 噂の出どころはちょっとわかる気がするんだけど、許容範囲内というか想定内だからいい。
 ルデアックさんは少しぽかんとしてて、はっと気づいて表情を引き締めたと思ったら、クリスに真面目な顔で向き合った。

「……噂の人物と同一人物ですか?」

 ……ってさ。

「間違いなくアキのことだな」

 楽しそうにクリスが笑う。
 ん。よくわからない怒りのような苛つきは、少しはなくなったぽい。

「お前の班にも、任務が終わったら他の兵士たちにも周知しておけ。……お前が見たままのアキについて話せばそれでいい」
「………はい。殿下。改めて、不敬な態度、申し訳ありませんでした。この任務、しっかりと、務めさせていただきます」
「ああ、期待している」

 うんうん、よしよし。
 関係修復問題なし。
 そしてさ、ちょっとひらめいたさ。

「あのさ、クリス」
「ん?」
「やっぱり俺、巣に登らないとだめだと思うんだ」
「だがな、アキ」
「うん。だから、登る、って思うからだめなのであって」
「ん??」
「上がる、じゃだめかな。ほら、こう、階段でさ」
「階段?梯子ではなく?いや、梯子だとしてもお前にそれを上がるのは無理だと――――」
「うん。だから、階段」

 クリスも、傍にいるオットーさんも、離れるタイミングを逃したルデアックさんも、「何が言いたいんだ」って不思議そうな顔をしてる。

「土で。階段。作れば。ほら、今、クリス隊に同行してるじゃん。土魔法めちゃ得意で、クリス隊に入りたくてウズウズしてる人」
「「あ」」

 エアハルトさんに、階段作ってもらえば、俺だって巣にいける。




 よね!?






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