上 下
288 / 560
第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

49 宴会(パーティー)開始で、

しおりを挟む



「宴……ですか。突然ですね」
「アキが陛下に望んだ『褒美』だからな」

 なんかすみません。
 クリスの執務室についたら、オットーさんは忙しそうに書類整理をしてた。
 高さ10センチ…ってとこか。
 そのたまり具合を見て、苦笑するクリス。
 お兄さんは少し前に北に向けて出発したから、基本的には溜まるだけ溜まるのだけど、急ぎと判断されたものは陛下のところで処理されてるらしい。
 ……お父さん。働きすぎて倒れなければいいけど。

「では、遠征の片付けは速攻で終わらせますね」

 にこりと、オットーさん笑って言うけど、速攻……って。皆、無事に宴に来てよね……。

「終わらなければ明日の静養日は返上だな」

 便乗して、クリスまでそんなことを言う…。

「や、休ませてあげようよ…。俺も手伝うし……」
「アキラさんは体調だけ万全に整えてくださいね」
「あ、はい」

 オットーさんの笑顔、怖い。

「それじゃオットー、あとは頼んだ」
「はい。また後ほど」

 なんか、余計に忙しくさせた気がします。ごめんなさい。

 久しぶりの城内をクリスの腕に抱かれて移動する。
 宴会まではまだ時間がある。
 宴会前に風呂には入りたいなぁ。

「アキ、神殿に行くが部屋で休むか?」
「神殿?」
「ああ。念の為、オリバー神殿長に聖鳥の件を報告しておこうと思って」
「あ、そっか。一緒に行く」
「わかった」

 クリス、嬉しそう。
 そういえば、いつもの護衛コンビ、今日はついてないし、さっきオットーさんに会った時も何も言ってなかったなぁ。いいのかな。忙しすぎるのかな。クリスが居れば全然平気なんだけど。

 なんとなくクリスにしがみついた。
 前よりも歩けるはずだけど、クリスに抱かれて移動がいい。

「どうした?」
「なんでもない。なんかこうしてたかっただけ。駄目?」
「駄目と言うと思うか?」
「へへ……思わない」

 二人きりじゃなくて人の目があったんだけどね。
 なんだろう。この数日の遠征で変に慣れてしまった気がする。





 特に声をかけられることなく、城を出て神殿に向かった。
 前に来たのはお兄さんの結婚式のときだったっけ。
 特に約束とかしてなかったけど、神殿長さんにはすんなり取り次いでもらえて、前にも入った執務室にお邪魔した。

「お久しぶりです、殿下、アキラ様」
「こんにちは」

 クリスの腕の中でペコリと頭を下げたら、優しく微笑まれた。
 クリスがソファに腰掛けてから、俺を隣におろした。
 さり気なく左手で腰を抱かれる。

「それで、今日は何がありました?」

 神殿長さんは俺たちにお茶を出しながら、そう聞いてきた。

「聖鳥について、ご報告したいことが」

 簡潔にクリスが言葉にすると、神殿長さんは少し驚いたような顔をしてから頷いた。
 それから、経緯とか結果とか話し終えると、ふぅと息をついた神殿長さんがお茶で喉を潤した。

「なるほど……。そこに繋がってましたか」
「オリバー神殿長?」
「数日前にラルフィンが『鳥が帰ってきた』と言っていたので」
「ああ、なるほど」
「なんのことかわからなかったのですが、殿下のお話を聞いて漸くわかりましたよ」
「やはりラルフィンだな」
「ええ。ですが、アキラ様が同行されててよかったと思います」
「俺、ですか?」
「はい。アキラ様が同行されていなかったら、聖鳥は失われていたかもしれませんからね」

 ……だから、そんな大したことしてないんだってば……。
 ただちょっと卵の声…念話…テレパシー?みたいなものがわかっただけでさ。
 知らず知らず口元がむーっとなってたと思う。

「諦めろ」

 クリスはそんな俺の頬を、笑いながら撫でた。

「この件ではわかる者であれば、だれでもアキに対して同じ反応をするから」
「でも」
「特別なことはしてない、って言うんだろ?」
「だって」

 ほんとにそうだから。

「功績だとか、特別な力だとか、そんなのいらないんだよ。むしろ、全部クリスに押し付けたい」
「正しく認められることは必要なことだ」
「いらない。俺は、俺のことは、クリスがわかってくれてればそれでいい」

 面倒だから、とは絶対に口にしないけどねっ。
 クリスは俺をじっとみつめてから、ふと、笑った。



 含みをもたせながらそう言って、俺の額にキスをした。
 これ、ばれてーら。

 クリスも神殿長さんも笑ってた。
 神殿長さんにもバレたらしい。
 俺、そんなに、顔に出るのかなぁ。

「また何かあればいつでもいらっしゃってください、殿下。こちらからもご連絡いたしますので」
「ええ、ありがとうございます」

 それがお開きの言葉になった。
 クリスが俺に手を伸ばしてきたから、それに逆らうことなく、すっぽりと腕の中に収まる。
 そして神殿を出たら、日は結構傾いてきてる。

「戻って、風呂に入って、着替えたら移動だな」
「……帰ってきたばかりなのに、なんか凄く忙しいんだけど」
「違いない」

 宴会、どんな料理が出るのかな、とか、お酒ってすぐ用意できるものなのかなとか、そんな話をしながら部屋に戻って、待っていたメリダさんに、宴会になったことを伝えて、風呂に入った。
 久しぶりの風呂はやっぱり気持ちよくて、手足伸ばしてリラックス。
 イタズラされないから平和に上がって、着替えしつつ、果実水で水分補給。
 準備ができたって知らせが来て、部屋を出た。メリダさんも一緒に。

 案内された部屋は少し広い所。
 中央に料理が並べられてて、立食のビュッフェスタイルだった。
 宴会……宴というより、ちょっとしたパーティーみたい。

「アキラ様ぁ!!!」

 部屋に入った途端、有りえない声に呼ばれた。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

愛されすぎて困ってます!

BL / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:393

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:33

一般人な僕は、冒険者な親友について行く

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:5,398

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:901pt お気に入り:4,184

処理中です...