【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

78 手遊びは異世界をも越える

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 翌朝。
 朝食は部屋でクリスと二人で食べた。
 最後なので、しっかりと露天風呂にも入って。

「…少し赤みが取れたな」
「ほんと?」
「ああ。それに、以前より肌の手触りがいい」

 美肌効果ってやつですね!俺にはあまり関係ないけど!

「女の人のほうが喜ぶね」
「そういうものか?俺はアキの肌艶がいいと気分がいいが」
「肌艶って……」
「触れても口付けても吸い付いてくるようで心地がいい。以前にも増して、な」

 話しながら、濡れた背中にキスされて、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
 心臓はバクバクしてくるし。
 わざとらしく音を立てて背中を吸われて、ぞくぞくした甘いしびれが背筋を駆け上がってくる。

「ん……、クリス、だめ、だから…っ」
「これだけ」

 がっちり身体を掴まれてて、逃げることもできない。
 背中に触れてたクリスの唇は、肌に触れたまま上に移動してきて、項に強く吸い付かれた。

「んぅ…っ」
「……暫く触れ合えないからな」
「暫く……って、お昼休憩取るまでだけど」
「長すぎるくらいだ」

 ここに来るときは、クリスと一緒にずっと馬車の中だった。
 だから、いつでもキスできたし、抱きついてても恥ずかしくなかったし、膝枕で寝てたりもしてた。
 だけど、帰りはリアさんとミナちゃんが一緒だから、クリスはヴェルで移動予定なんだよね。俺は、二人と一緒に馬車。
 それはそれで楽しそうなんだけど、少し寂しく思うのは……仕方ないと思う。

 名残惜しそうに俺の背中や首にたくさんキスをしてくるクリスだったけれど、いい加減のぼせてしまいそうで、渋々、風呂から出た。
 脱衣所まで運ばれて、丁寧に拭かれて、着せられたのは久しぶりのような気がする濃紺の制服。
 ……クリスのウェストポーチ、もはや何が入っているのかわからないくらい色々出てくる。ほとんど俺絡みのものが。
 用途としてはあっている……よね?もう少し、クリスのためのものも入れてほしいんだけど。
 ポーションとかがあれば、どんどん突っ込むんだけどなぁ。ないんだよね。…や、もしかしたらあるかもだけど、少なくても俺はこれまで見たことがない。
 作れないのかな。作り方わからないけど。

「今度は二人だけで来ようか。大通りの宿屋でいい」
「二人……って、可能なのかな」

 クリス、強いのはわかるけど、王子様だからね?
 俺の疑問をぶつけたら、クリスは悩んだ素振りを見せてから、苦笑した。

「オットーとザイルは決まりだな」
「だよね」

 まぁ、その二人なら別にいいんだけど。むしろ、クリス隊の皆と一緒に来るのは、全然嫌じゃないんだけど。
 いつの間にか用意されてた水差しから、グラスに中身を注いだクリスは、何口か飲んでから、おもむろに俺にキスをしてくる。
 ぴたりと重なった唇の間から流れてくるのは、爽やかな柑橘系の香りのする冷たい果実水。…ほんのり甘い。蜂蜜、かな。

「ん」

 何回かそれを繰り返して、唇が潤ったあたりで、クリスに向かって手を伸ばす。そしたら、ちゃんと、抱き上げてくれる。

「クリス」
「ん?」
「好き」

 肩口に額をグリグリ押し付けて、言いたくなったから口にする。
 くすって笑うクリス。

「愛してるよ」
「うん。知ってる」

 へへへ……と笑って、部屋までクリスの匂いを堪能してた。





 昨日のお詫びのつもりなのか、伯爵さんは大量の食料を用意してくれた。
 どこからか昨日の話が伝わったのか、心做しか隊員さんたちの態度も冷たい。
 一番憤慨してたのはエアハルトさんだったけど。
 滅茶苦茶身を縮こまらせて恐縮しきって見送った伯爵さん。
 ストレスで脱毛とかしないよう祈ろう。

「王族の馬車……って、ほんと乗り心地抜群だわ」
「そうなの?俺、これしか乗ったことないから今一比較できないんだけど……」
「確実にお尻が痛くなるのよ。苦行ね」
「おぅ……」

 椅子には十分綿が入ってるし、手触りもいい。椅子も広めだから、俺が寝れるくらい。
 クリスから、「揺れは最小限に」って厳命が、御者してるエアハルトさんに下ってて、真剣な顔でエアハルトさんが頷いていた。
 そのためか、本当に揺れをほとんど感じない。どういう理屈なんだか。

「ミナ、はい、手を出して」
「て」
「そう。一緒にね」

 リアさんが、手遊びを始めたんだけど。
 うっわ。
 懐かしいな!?
 地域によって微妙に二番目以降の歌詞が違ってたり、明らかにガキンチョが「ぷぷぷ」って笑い始めるような替え歌になってたり、むしろ、誰もが一度は「仔ヤギの上で踊るなよ!」ってツッコミを入れるかもしれない、仔ヤギなのか小槍なのか俺は未だにどちらなのかわからない、あの歌だ。小槍だったとしても、そんな危なそうなものの上で踊りたくない…。

「懐かしっ」
「手遊びって道具がいらないから丁度いいのよ。ミナも楽しそうだし」

 あまり喋らないミナちゃんだけど、リアさんと笑いながら手を合わせていて、すごく楽しそうだ。
 その後も、よく耳にした童謡とか、ゲームとか二次元にしか興味がなかった俺でも聞いたことがある歌とか、思いつくのを歌った。

 笑い声とか、結構漏れてたみたいだ。

「楽しそうだったな」

 って、ちょっと拗ねた感じのクリスが可愛い……なんて、口が裂けても言えないよね。




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